末梢性免疫寛容(まっしょうせいめんえきかんよう、英: peripheral tolerance)は、中枢性免疫寛容の後に行われる2つ目の免疫寛容機構であり、末梢免疫系で(T細胞やB細胞や一次リンパ器官を出た後に)生じる。主な目的は、中枢性寛容を逃れた自己反応性T細胞やB細胞が自己免疫疾患を引き起こすことがないよう保証することである[1]。また、末梢性寛容は無害な食物抗原やアレルゲンに対する免疫応答も防いでいる[2]。
胸腺における自己反応性T細胞の除去効率は60%から70%であり、ナイーブT細胞のレパートリーには多くの低アビディティー
(英語版)自己反応性T細胞が含まれている。こうした細胞は自己免疫応答の引き金となる場合があるため、これらの活性化を防ぐいくつかの末梢性寛容機構が存在する[3]。抗原特異的な末梢寛容機構には、T細胞の静止期の持続や抗原の無視(イグノランス)のほか、クローン除去(デリーション)、制御性T細胞(Treg)への変換、アネルギーの誘導のいずれかによるエフェクターT細胞の直接的不活性化などがある[3][4]。胸腺でのT細胞の発生過程でも生み出されるTregは、末梢における従来型リンパ球のエフェクター機能をさらに抑制する[5]。樹状細胞は胸腺内での自己反応性T細胞のネガティブセレクションに関与するが、いくつかの機構で末梢免疫寛容も媒介している[6]。特定の抗原が中枢性と末梢性のどちらの免疫寛容に依存するかは、個体内での存在量によって決定される[7]。B細胞に対する末梢性寛容はあまり研究されていないが、B細胞のT細胞に対する依存性によって主に媒介されている。
また、免疫の多くの経路は相互依存的であるため、免疫寛容の誘導のために関与するすべての細胞を寛容化する必要はない。一例として、寛容化されたT細胞は自己反応性B細胞を活性化することはない。CD4+T細胞の助けがなければ、B細胞は活性化されない[1]。 制御性T細胞(Treg)は免疫抑制を媒介する中心的因子であり、末梢性寛容の維持に重要な役割を果たしている。Tregの表現型と機能のマスターレギュレーターはFOXP3である。内在性Treg(nTreg)は胸腺でのネガティブセレクション時に生み出される。nTregのTCRは自己ペプチドに対する高い親和性を示す。誘導性Treg(iTreg)は従来型のナイーブヘルパーT細胞に由来し、TGF-βとIL-2の存在下での抗原認識後に発生する。iTregは消化管に多く存在し、常在微生物叢や無害な食物抗原に対する寛容を確立している[8]。その起源とは無関係に、Tregは環境中からのIL-2の除去、抗炎症サイトカインであるIL-10、TGF-β、IL-35 樹状細胞は、獲得免疫応答の開始を担う主要な細胞集団である。これらはMHCクラスII分子(MHCII)に短いペプチドを提示し、特異的TCRによって認識される。抗原と遭遇しダメージ関連分子パターンや病原体関連分子パターンを認識すると、樹状細胞は炎症性サイトカインの分泌を開始するとともに共刺激分子であるCD80
末梢性免疫寛容を媒介する細胞
制御性T細胞
免疫寛容誘導性樹状細胞
リンパ節ストローマ細胞