木構造(もくこうぞう)は、木造ともいい、建築の構造の一つで、構造耐力上主要な部分に木材を用いる構造である。また、近年は木質材料を用いる建築が増えたので、これを木質構造と呼ぶことがある。
目次
1 木構造の構造形式による分類
1.1 伝統的な構法
1.2 木造軸組構法
1.3 木造枠組壁構法
1.4 丸太組構法
1.5 木質ラーメン構法
2 部材の性質
3 接合部の性質
4 火災への対処
4.1 木造住宅密集地域
5 シロアリ・腐朽への対処
6 木構造の環境への負荷
7 脚注
8 参考文献
9 関連項目
10 外部リンク
木構造の構造形式による分類
伝統的な構法 彦根城の梁と貫
太めの柱と梁、及び貫(ぬき)を用いて、互いの部材を貫通させる構造形式で、車知(しゃち)や込み栓(こみせん)を用いて固定する。(在来工法のような釘や補強金物に頼った固定法は用いない。)
外力や変形に対しては主に木材のめり込みによって抵抗する。そのため、大変形に対しても粘り強い構造であり、地震や台風の被害が多い日本の風土に適した工法である。
仕口の狂いや、仕上げのひずみに対する考慮や、耐久性に対する考慮が十分になされている[1]。
高価である。
主に古くからの寺社建築
木構造は、構造耐力上主要な部分に可燃材料を使っているため、他構造に比べ火災に弱い性質をもつ。そのため、原則として、外壁・屋根・軒裏は不燃材料で仕上げなければならない。また、以下のような防火措置を講じる。
木部を石膏ボードなど防火性能のある材料で覆い、木部が直接火炎にさらされるのを防ぐ。
部屋ごとに室内壁・天井を石膏ボードなど防火性のある材料で覆い、隣室や上階への延焼を遅らせる。また、内装は極力不燃材料で仕上げる。
木材は、燃焼すると表面に炭化層を形成し、内部まで燃え尽きるのには時間がかかる。そのため、燃えしろを除いた部分だけでも構造が持つように構造計算を行い、太い断面の木材を使う(燃えしろ設計)。
燃えしろ
30分耐火 25mm
45分耐火 35mm
1時間耐火 45mm
壁内中空部および壁と天井などの取り合い部には、ファイヤーストップ材を設ける。
地震時に防火材料が脱落するのを防ぐため、各階の剛性を高くする(層間変形角1/150以下)。
その他、火災保険や地震保険において、耐火性の低い(耐火建築物・準耐火建築物・省令準耐火構造建物でない)木造住宅は保険料が高額となる。 大都市圏で古い木造住宅が密集し、大規模地震時などに火災や倒壊で深刻な被害が予想される地域を、地方自治体は「木造住宅密集(木密)地域」と呼んでいる[2](国土交通省の表現は「地震時等に著しく危険な密集市街地」[3])。東京都や都内特別区が首都直下地震に備えて「不燃化特区」で建て替えを促す[4]など、各自治体と国が解消を目指した対策を進めている。 木構造は、構造耐力上主要な部分にシロアリ、腐朽に弱い材料を使っているため、他構造に比べ耐久性が低くなりがちである。そのため、原則として地面から1m以内の木部には防腐・防蟻の措置をしなければならない。また、以下のような対策を講じる。 心材の耐腐朽性・耐蟻性 耐腐朽性
木造住宅密集地域
シロアリ・腐朽への対処
建物下部の地面を全面的に鉄筋コンクリートで覆い、地面からの湿気やシロアリの進入を防ぐ。べた基礎の採用が望ましいが、布基礎の場合でも防湿・防蟻のための鉄筋コンクリートを敷く。
構造耐力上主要な部分の木材は、乾燥したものを用いる(含水率25%以下が望ましい)。
構造耐力上主要な部分の木材は、辺材より心材の方が望ましい。
構造耐力上主要な部分の木材の樹種は、使用箇所に応じて、耐腐朽性・耐蟻性の大きいものを採用する。
大 中 小
耐蟻性 大 ひば・こうやまき・べいひば