木構造(もくこうぞう)は、木造ともいい、建築の構造の一つで、構造耐力上主要な部分に木材を用いる構造である。また、近年は木質材料を用いる建築が増えたので、これを木質構造と呼ぶことがある。かつて京都に存在し、木造建築として日本最大規模を誇っていた方広寺大仏殿(京の大仏)。 寛政10年 (1798年) に落雷による火災のため焼失した[1]。(「花洛一覧図」京都府立京都学・歴彩館デジタルアーカイブ 一部改変)
木構造の構造形式による分類
伝統的な構法彦根城の梁と貫
太めの柱と梁、及び貫(ぬき)を用いて、互いの部材を貫通させる構造形式で、車知(しゃち)や込み栓(こみせん)を用いて固定する。(在来工法のような釘や補強金物に頼った固定法は用いない。)
外力や変形に対しては主に木材のめり込みによって抵抗する。そのため、大変形に対しても粘り強い構造であり、地震や台風の被害が多い日本の風土に適した工法である。
仕口の狂いや、仕上げのひずみに対する考慮や、耐久性に対する考慮が十分になされている[2]。
高価である。
主に古くからの寺社建築
木構造は、構造耐力上主要な部分に可燃材料を使っているため、他構造に比べ火災に弱い性質をもつ。そのため、原則として、外壁・屋根・軒裏は不燃材料で仕上げなければならない。また、以下のような防火措置を講じる。防火性能を組み合わせることで、基準の厳しいガソリンスタンドの事務棟や屋根を建設した例も見られる[3][4]。
木部を石膏ボードなど防火性能のある材料で覆い、木部が直接火炎にさらされるのを防ぐ。
部屋ごとに室内壁・天井を石膏ボードなど防火性のある材料で覆い、隣室や上階への延焼を遅らせる。また、内装は極力不燃材料で仕上げる。
木材は、燃焼すると表面に炭化層を形成し、内部まで燃え尽きるのには時間がかかる。そのため、燃えしろを除いた部分だけでも構造が持つように構造計算を行い、太い断面の木材を使う(燃えしろ設計)。
燃えしろ
30分耐火25mm
45分耐火35mm
1時間耐火45mm
壁内中空部および壁と天井などの取り合い部には、ファイヤーストップ材を設ける。
地震時に防火材料が脱落するのを防ぐため、各階の剛性を高くする(層間変形角1/150以下)。
その他、火災保険や地震保険において、耐火性の低い(耐火建築物・準耐火建築物・省令準耐火構造建物でない)木造住宅は保険料が高額となる。 大都市圏で古い木造住宅が密集し、大規模地震時などに火災や倒壊で深刻な被害が予想される地域を、地方自治体は「木造住宅密集地域(木密)」と呼んでいる[5](国土交通省の表現は「地震時等に著しく危険な密集市街地」[6])。東京都や都内特別区が首都直下地震に備えて「不燃化特区」で建て替えを促す[7]など、各自治体と国が解消を目指した対策を進めている。 木構造は、構造耐力上主要な部分にシロアリ、腐朽に弱い材料を使っているため、他構造に比べ耐久性が低くなりがちである。そのため、原則として地面から1m以内の木部には防腐・防蟻の措置をしなければならない。また、以下のような対策を講じる。 心材の耐腐朽性・耐蟻性耐腐朽性
木造住宅密集地域
シロアリ・腐朽への対処
建物下部の地面を全面的に鉄筋コンクリートで覆い、地面からの湿気やシロアリの進入を防ぐ。べた基礎の採用が望ましいが、布基礎の場合でも防湿・防蟻のための鉄筋コンクリートを敷く。
構造耐力上主要な部分の木材は、乾燥したものを用いる(含水率25%以下が望ましい)。
構造耐力上主要な部分の木材は、辺材より心材の方が望ましい。
構造耐力上主要な部分の木材の樹種は、使用箇所に応じて、耐腐朽性・耐蟻性の大きいものを採用する。
大中小
耐蟻性大ひば・こうやまき・べいひば
中ひのき・けやき・べいひすぎ・からまつ
小くり・べいすぎべいまつ・ダフリカからまつあかまつ・くろまつ・べいつが
屋根の形状は単純なものとし、ひさしの出はできるだけ大きくすることが望ましい。
外壁の室内側には防湿層を正しく施工し、壁内に室内で発生した湿気が入り込むのを防ぐ(外壁のすべてが通気性のある材料で構成されている場合は除く)。