本項では、木星の衛星(もくせいのえいせい)について述べる。2023年2月26日現在知られている木星の衛星の総数は95個[1]で、そのうち57個が命名されている[2][3][4]。太陽系の惑星の中では土星に次いで2番目に報告された衛星の総数が多い。また、未発見の小さな衛星が存在する可能性もある。
1999年以降に発見された衛星の多くは長楕円軌道だったり、逆行していたりする。これらは直径が平均 3 km 、最大のものでも 9 km 足らずで、木星に捕獲された太陽系小天体だと思われるが、これらについてはごくわずかなことしか知られていない。 1610年に、木星の最初の衛星4個(ガリレオ衛星)が発見された。それから4世紀の間に、地上からの観測でさらに衛星9個が発見された。 1975年にテミストが発見されたが、軌道を確定する十分な観測がないまま見失われた。 1979年にボイジャー1号が3つの衛星を発見し、衛星の総数は16個となった(テミストを除く)。 1999年10月6日に小惑星探査プロジェクトのスペースウォッチにより小惑星「1999 UX18」が発見されたが、やがて実は木星の新衛星だったことが判明した。この衛星はカリロエと命名された。 2000年の11月23日から12月5日にかけ、スコット・S・シェパードとデヴィッド・C・ジューウィットに率いられたハワイ大学のチームが木星の小さな衛星の組織的な捜索を始めた。同チームはマウナケア天文台群にある13基の望遠鏡のうち2つ(1つは日本のすばる望遠鏡)に世界最大級のCCDカメラを取り付け、2000年だけでテミストの再発見を含む衛星11個を発見した。ディアについては存在を疑問視する意見もあったが、2010年から2011年にかけての観測で存在が確定された[5]。 2001年12月9日から11日の捜索では11個、2002年にはわずか1個だったが、2003年2月5日から9日の捜索でさらに衛星23個が発見された。 2010年9月7日にS/2010 J 1、翌9月8日にはS/2010 J 2という新衛星2個が発見された。公転周期はJ1が約2年、J2が約1.6年とされる[6]。 2011年9月27日、チリ・ラスカンパナス天文台のマゼラン望遠鏡で、木星に新たな2つの衛星が周回していることが撮影された。それぞれS/2011 J 1とS/2011 J 2と仮符号が付けられた。この2つの新衛星は不規則衛星に分類される逆行衛星群の一部で、木星からの距離が遠く、公転軌道も傾斜した楕円状という。衛星直径はいずれも1キロほどで、公転周期はそれぞれJ1が約580日、J2が約726日[7]。 2017年、スコット・S・シェパードらの率いるカーネギー研究所のチームは、チリのセロ・トロロ汎米天文台で冥王星以遠の惑星を探索したが、偶然木星も観測範囲内にあったために合わせて衛星を探索することとし、この結果12個の衛星が確認された[8]。これらの発見は、2017年7月2日に2個、2018年7月17日に10個が小惑星センターを通して公表された。この中には、3つの逆行衛星群を横切って順行するバレトゥードーも含まれる。これによって木星の衛星は79個となった[8]。 2021年6月初旬、アマチュア天文家の Kai Ly がカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡によって撮影されていた画像の中にまだ未発見の衛星が写っているかもしれないと思い分析を行っていたところ、2003年2月に撮影された画像の中に木星の80番目の衛星が写っていたことを発見した[9]。その後、同年11月15日に公表された小惑星電子回報 (Minor Planet Electronic Circular) にて正式にS/2003 J 24と命名された[10]。 1979年のボイジャーによる発見からしばらくの間、知られていた16の衛星は4個ずつ4つのグループ(内部群、ガリレオ衛星、ヒマリア群、外部逆行群)に整然と分けられていた。しかし1999年以降、新しい小さな衛星が多数発見されたことで分類は複雑になった。現在発見されている衛星は、7つの主なグループと、いくつかの孤立した衛星に分けられている。
発見
1999年以降
分類木星の不規則衛星。横軸は軌道長半径 / 100万 km、縦軸は黄道面に対する軌道傾斜角 / °。