朝日新聞珊瑚記事捏造事件
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朝日新聞珊瑚記事捏造事件
大アザミサンゴのある西表島崎山湾
場所 日本沖縄県八重山郡竹富町
座標.mw-parser-output .geo-default,.mw-parser-output .geo-dms,.mw-parser-output .geo-dec{display:inline}.mw-parser-output .geo-nondefault,.mw-parser-output .geo-multi-punct{display:none}.mw-parser-output .longitude,.mw-parser-output .latitude{white-space:nowrap}北緯24度18分58.9秒 東経123度40分38.9秒 / 北緯24.316361度 東経123.677472度 / 24.316361; 123.677472座標: 北緯24度18分58.9秒 東経123度40分38.9秒 / 北緯24.316361度 東経123.677472度 / 24.316361; 123.677472
日付1989年(平成元年)4月20日(記事掲載)
概要朝日新聞東京本社カメラマン本田嘉郎が珊瑚に「K・Y」の文字を入れて傷をつけた
容疑本田嘉郎朝日新聞社
刑事訴訟不起訴処分
管轄海上保安庁石垣海上保安部
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朝日新聞珊瑚記事捏造事件(あさひしんぶんさんごきじねつぞうじけん)は、1989年平成元年)に沖縄県西表島に於いて、朝日新聞社カメラマン本田嘉郎が、自作自演珊瑚に落書きによる傷をつけ、その写真をもとに新聞記事を捏造した虚報事件である[1]
事件の経過
記事掲載

朝日新聞東京本社[注釈 1])は、1989年(平成元年)4月20日夕刊1面の連載企画「写'89『地球は何色?』」で、高さ4メートル、周囲20メートルという世界最大級のアザミサンゴに「落書きがあることを発見した」として、6段抜きのカラー写真と共に、以下の記事を掲載した[2]

「サンゴ汚したK・Yってだれだ」


これは一体なんのつもりだろう。沖縄・八重山群島西表島の西端、崎山湾へ、長径八メートルという巨大なアザミサンゴを撮影に行った私たちの同僚は、この「K・Y」のイニシャルを見つけたとき、しばし言葉を失った。

巨大サンゴの発見は、七年前。水深一五メートルのなだらかな斜面に、おわんを伏せたような形。高さ四メートル、周囲は二十メートルもあって、世界最大とギネスブックも認め、環境庁はその翌年、周辺を、人の手を加えてはならない海洋初の「自然環境保全区域」と「海中特別地区」に指定した。

たちまち有名になったことが、巨大サンゴを無残な姿にした。島を訪れるダイバーは年間三千人にも膨れあがって、よく見るとサンゴは、水中ナイフの傷やら、空気ボンベがぶつかった跡やらで、もはや満身傷だらけ。それもたやすく消えない傷なのだ。

日本人は、落書きにかけては今や世界に冠たる民族かもしれない。だけどこれは、将来の人たちが見たら、八〇年代日本人の記念碑になるに違いない。百年単位で育ってきたものを、瞬時に傷つけて恥じない、精神の貧しさの、すさんだ心の……。

にしても、一体「K・Y」ってだれだ。

? 「写'89 『地球は何色?』」『朝日新聞』、1989年4月20日、東京夕刊、1面。
ダイビング組合が調査に乗り出す

記事掲載後、地元の沖縄県竹富町ダイビング[要曖昧さ回避]組合のダイバーたちも海に潜ってサンゴに書かれた落書きを確認した。しかし、誰も記事掲載前に落書きを見たことが無かった[3]

ダイビング組合は、サンゴに傷をつけたのは朝日の記者以外に考えられないとして、4月27日、本田に電話をして直接問い質したが、「そんなことするはずはない」と否定された。その後、東京本社の代表番号に電話したが、応対した男性は「朝日に限ってそんなことはない」「文書にして出してくれ」と、まともに取り合わなかった[3]
「古傷をなぞったものだ」と主張

4月28日、当該記事が西表島で問題になっていることが東京本社の写真部長やデスクも知る所となり、二人は本田に事情を尋ねた。本田は「サンゴにあった古い「K・Y」の落書きのほこりを払い、手袋をはめた手でなぞった」と説明した[3]

写真部長はデスクに対し、本当に古い落書きがあったかどうか、現地に行って確認するように指示した。しかしデスクは、ゴールデンウイーク中を理由に、5月7日に赴くこととした[3]

5月7日、ダイビング組合は訪れたデスクに対し、「傷は前からあったものではなく、本田の行為によるものと考えられる」と主張し、紙面で明らかにするよう求めた。だが朝日はダイビング組合などに対して本田の説明通りに「古傷をなぞったものだ」として検証を行わなかった[4]

これら一連の情報を得たテレビ局などのマスコミ数社が取材を開始。環境庁なども問題視し始めた。すると編集局長は13日、事実関係の再調査を命じた[4]

5月15日、改めて本田に対して聴取が行われた。本田は当初「指でなぞっただけ」との説明を翻し、「初めはゴム手袋でこすったが、後でストロボの柄の根っこで落書きの跡をこすり、写真のような状態にした」と、認め始めた[4]
TBS、NHKが報道、捏造を否定した最初の謝罪

同じく5月15日、竹富町ダイビング組合が「経過報告書」を公表。夕方6時30分からのTBSJNNニュースコープ」、夜7時からの「NHKニュース」でダイビング組合の主張を報道、朝日に取材陣が殺到する事態となった[5][6]

放送後、朝日新聞東京本社で記者会見が開かれ、広報担当の青山昌史は「二人のカメラマンがサンゴにつけられた“K”と、ぼんやりした“Y”を見つけた。4月12日、撮影効果を出すために一人がゴム手袋でなぞり、さらにその後ストロボで削り、“K”と“Y”をより鮮明にして写した。全くの自作自演ではないが、自然のままに写さなければ意味がなく、手を加えるのはルール違反といわれても仕方がない。自然環境保全法に抵触する恐れもある重大な行為と考えている」と述べた[7]

「落書きはもともとあったものではなく、カメラマンが書いたものではないか」との記者からの質問に対し、青山はこれを否定、それを裏付ける証拠として「(サンゴを)加工する前に撮った写真」を示した[7][8]

青山の説明に対し「その写真はサンゴへの工作中の写真では?」と記者が追及すると、青山は「その挙証責任は君たちにある」と強弁した[9]

5月16日、朝日は朝刊一面で、「本社取材に行き過ぎ」の見出しで記事を掲載。カメラマンの一人が「落書きについて、撮影効果を上げるため、うっすらと残っていた部分を水中ストロボの柄でこすり、白い石灰質をさらに露出させたものです」と弁明し、「朝日新聞社として深くおわび致します」と謝罪した[7][10][11][12][13][14]

朝日はこの時点では落書きは元からあったものとして捏造を認めなかった[4]
竹富町ダイビング組合の経過報告書

1989年(平成元年)5月15日に公表された、竹富町ダイビング組合による事件の経過報告書は以下の通りである[15]


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