有機半導体(ゆうきはんどうたい, Organic Semiconductor, OSC)は、半導体としての性質を示す有機物のことである。
半導体特性は、ペンタセンやアントラセン、ルブレンなどの多環芳香族炭化水素や、テトラシアノキノジメタン (TCNQ) などの低分子化合物をはじめ、ポリアセチレンやポリ-3-ヘキシルチオフェン (P3HT)、ポリパラフェニレンビニレン (PPV) などのポリマーでも発現する。 有機半導体には有機電荷移動錯体と、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリンのような様々な直鎖状ポリマーがある。電荷移動錯体は無機半導体と似た伝導メカニズムで起こる。そのようなメカニズムはバンドギャップによって分離された電子やホールの伝導層の存在により生じる。ポリアセリレン系の有機半導体も、無機のアモルファス半導体のようにトンネル効果や局在化状態、移動度ギャップ、フォノン支援ホッピングが伝導に関わっている。無機半導体のように、有機半導体もドーピングが可能である。ドーピングしたポリアニリン (Ormecon)やPEDOT:PSS
解説
有機半導体の一般的なキャリアは電子でのホールや電子である。ほぼ全ての有機化合物は絶縁体であるが、広い共役系を持つ分子の場合、電子が電子雲を経由して移動することが可能である。多環芳香族炭化水素やフタロシアニンの結晶がこの有機半導体の例である。電荷移動錯体では、不対電子が長時間安定状態にあり、それがキャリアとなる。このタイプの有機半導体は電子供与性分子と電子受容性
分子がペアになることで得られる。1950年代に半導体物理、電子工学が勃興した時にシリコンと同属の炭素を化学合成の方法で扱い、物性的・実用的に有用な導体を作る事が赤松秀雄、井口洋夫、松永義夫によって発想され[1]、1954年にペリレン臭素錯体の非常に高い導電度 (8 Ω・cm) の発見[2]によって電荷移動錯体の研究が始まった。1959年にはポリアクリロニトリルに放射線を照射することによって半導体の性質を備えることがニコライ・セミョーノフ達によって報告され、真偽を巡り議論された[3][4][5][6]。1972年にTTF-TCNQ錯体の電荷移動錯体が金属並みの導電度を示すことが報告され、1980年にはTMTSFPF6錯体で超伝導が観測された。
1963年にWeissらにより、ヨウ素をドープしたポリピロールが高温状態下で電気抵抗率が測定され[7]、1977年に白川英樹らによってヨウ素をドープしたポリアセチレンのフィルムが高い伝導度を示したことが報告された[8]。この業績により、白川英樹は2000年に「導電性高分子の発見と発展」を理由にノーベル化学賞を受賞した[9]。
有機半導体材料
低分子系
テトラセンやペンタセンなどのアセン類
オリゴチオフェン誘導体
フタロシアニン類
ペリレン誘導体
ルブレン
Alq3
TTF-TCNQ
など
高分子系
ポリチオフェン(ポリ-3-ヘキシルチオフェンなど)
ポリアセチレン
ポリフルオレン
ポリフェニレンビニレン
ポリピロール
ポリアニリン
などが挙げられる。
有機半導体を用いたデバイス
有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)(OLED)
有機電界効果トランジスタ (OFET)