月経前症候群(げっけいぜんしょうこうぐん、英: premenstrual syndrome、PMS)は、数か月にわたって月経の周期に伴って、黄体期[1]である月経の3日から10日位前からおこり、月経開始とともに消失する、一連の身体的、および精神的症状を示す症候群(いろいろな症状の集まり)[2]。月経前緊張症(げっけいぜんきんちょうしょう)とも呼ばれる。月経前症候群を経験した女性はより重篤な更年期障害になりうる可能性が有るとの報告がある[3]。
診断基準に合致するものは、社会的または経済的な能力に明確に障害がある場合である[4]。正確な原因は不明である[5]。月経前症候群が5.4%、精神障害としての月経前不快気分障害(PMDD)が 1.2%の有病率であり、欧米では2?4%とされる[4]。
治療には、栄養改善と定期的な運動が推奨される[5][4]。イギリスのガイドラインでは、薬物療法の前に、チェストツリー、大豆イソフラボンやセント・ジョーンズ・ワートによる補完療法や、ビタミンB6・マグネシウム・カルシウムの補充が推奨されている[5]。より症状が重い場合には、SSRI系抗うつ薬や認知行動療法、経口避妊薬やホルモンが推奨されている[5][4]。婦人科(産婦人科)での診察・治療が一般的となっている[6]。詳しい治療法については、「月経前症候群#治療」を参照。 キャサリーナ・ダルトン
小史:医学と精神医学
1987年にアメリカ精神医学会(APA)の診断分類である『精神障害の診断と統計マニュアル』(DSM)に、後期黄体期不快気分障害(LLPDD)の案が掲載され、1994年にそれが現在の月経前不快気分障害に変わった[8]。PMSの認識が公となるという大きな利点があった一方で、精神の専門家は身体を実際に診察する医学に長けていないという問題も生じた[8]。医学的にはPMSはプロゲステロンの投与が有効なホルモンの異常であり、精神科医や心理学者は、そうとはみなさず抗うつ薬や心理療法で治療する傾向がある[8]。 身体的症状と精神的症状に分けられ、症状の程度と出現する症状には個人差がある。下記に代表的な症状を挙げる[9]。 月経前症候群代表的症状身体的症状精神的症状 上記症状は単独で出る事は少なく複合で現れる。その為月経前症候群と呼ばれる。また症状の現れ方は月によって変化する事がある。また個人によっても症状が異なる。 月経前症候群の正確な原因は不明である[5]。女性ホルモンのバランスが急激に変化することにより、脳内のホルモンや神経伝達物質の異常を引き起こすことが関係しているのではないかと言われている[10]。 身体診察および臨床検査は有用では無い[9]。 研究者であるキャサリーナ・ダルトン 日本の婦人科外来のガイドラインでは、診断は発症時期、身体症状、精神症状から行うことを推奨度Aで推奨し、推奨度Cでアメリカ産婦人科学会の診断基準を用いることを推奨している[4]。 アメリカ産婦人科学会の診断基準は、症状が過去3カ月以上連続しており、また診療開始からも3カ月にわたっており、社会的または経済的な能力に明確に障害があり、月経前5日間に症状があり、月経開始後4日以内に症状が消失するものである[4]。また症状は、薬物療法やアルコールが原因ではない[4]。また重症の場合、月経前不快気分障害の診断基準を用いることも推奨度Cで推奨している[4]。月経前不快気分障害は1年間のほぼ毎月の症状の診断基準を持つ。 対症療法が行われる[9]。 有効性の証拠を精査したイギリス月経前症候群協会(NAPS)のガイドラインは段階的な治療を推奨している[5]。 最初に栄養改善と定期的な運動が勧められる[5]。
症状
下腹部膨満感下腹痛頭痛乳房痛、乳房が張る腰痛関節痛むくみ、体重増加、脚が重いにきびめまい食欲亢進便秘あるいは下痢悪心、動悸過剰な睡眠欲不眠怒りやすい、反感、闘争的憂鬱緊張判断力低下、不決断無気力孤独感疲れやすい不眠パニック妄想症集中力低下、気力が続かない涙もろい悪夢を見る異性に対してのみ攻撃的になり暴力をふるう
原因
卵胞刺激ホルモン、エストロゲン、黄体化ホルモン、プロゲステロン関連しているホルモンの影響。
卵巣ステロイドホルモンに対するホルモンの影響を受ける器官の感受性の差
セロトニンなどの神経伝達物質の異常。
レニン・アンジオテンシン系の異常(水分貯留症状や低血糖類似症状から)
診断
治療
イギリス月経前症候群協会(NAPS)のガイドライン
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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