月世界旅行_(映画)
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月世界旅行
Le Voyage dans la Lune
タイトルカード
監督ジョルジュ・メリエス
脚本ジョルジュ・メリエス
原作ジュール・ヴェルヌ
月世界旅行』『月世界へ行く』(その他、#着想を参照)
製作ジョルジュ・メリエス
出演者.mw-parser-output .plainlist--only-child>ol,.mw-parser-output .plainlist--only-child>ul{line-height:inherit;list-style:none none;margin:0;padding-left:0}.mw-parser-output .plainlist--only-child>ol li,.mw-parser-output .plainlist--only-child>ul li{margin-bottom:0}

ジョルジュ・メリエス

ブルエット・ベルノン

フランソワ・ラルマン

アンリ・ドラノワ

撮影

テオフィル・ミショー

ルシアン・タングイ

製作会社スター・フィルム
公開 1902年9月1日[1]
上映時間

フィルム長260メートル(845フィート)[2]

18分(12 フレーム/秒[3]

16分(14 フレーム/秒)[3]

9分(24 フレーム/秒)[3]

製作国 フランス
言語サイレント
製作費10,000フラン
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『月世界旅行』(げっせかいりょこう、原題:Le Voyage dans la Lune)[注釈 1]は、1902年に公開されたジョルジュ・メリエス監督・脚本・主演によるフランスサイレント映画である。天文学者たちが大砲で撃ち出されるカプセル型宇宙船でに向かい、月面探索中に出会った月の住人セレナイトから逃れ、地球に帰還するという物語で、ジュール・ヴェルヌの小説『月世界旅行』(1865年)とその続編『月世界へ行く』(1870年)など、様々な作品から着想を得ている。メリエス自身が主人公で仲間を率いるバルベンフィリ教授を演じ、その他にフランスの演劇俳優たちが出演している。本作はメリエスを有名にした演劇的な映像スタイルが特徴である。

映画研究者たちはパタフィジックかつ反帝国主義的な風刺を多用していること、後の映画作家たちに幅広い影響を与えたこと、伝統的なフランス演劇の夢幻劇(フェリー)的要素の芸術的意義などについて言及している。公開当時は世界的な人気を博し、特にアメリカでは多くの海賊版が複製されたほどだった。メリエスが映画界から去った後は忘れられていたが、映画史におけるメリエスの功績が再評価され始めた1930年頃に再び日の目を見るようになった。また、通常のモノクロ版とは別に存在した手彩色のカラー版プリントは失われた映画と考えられていたが、1993年に損傷の激しい状態で発見され、2011年に完全に復元された。

当時の映画では異例の長さ、豪華な製作費、革新的な特殊効果、ストーリーテリングの重要性は他の映画製作者たちに大きな影響を与え、物語映画全体の発展に大きく貢献した。この作品はメリエスの代表作であり、人間の顔が描かれた月面の目に宇宙船が着陸する瞬間は、映画史上で最も象徴的でよく参照されるショットの一つである。本作はSF映画というジャンルの最初の例として、また映画史上最も影響力のある映画の一つとして広く認知されている。
プロット人間の顔をした月が登場する本作の象徴的なイメージ。

下記のプロットに挙げられる固有名詞は、公式の英語版カタログに基づく[6]

天文学会の会議において会長のバルベンフィリ教授は[注釈 2]、月への探検旅行を提案する。いくつか反対意見が出た後、5人の勇敢な天文学者が計画に賛同する。そして弾丸の形をした宇宙カプセル(宇宙船)と、それを発射するための巨大な大砲が作られる。こうして6人の天文学者たちがカプセルに乗り込むと、大勢の水兵服を来た若い女性たちが発射準備を行い、月に向けて発射される。そして狙い通りカプセルは月に到着する(このシーンは人の顔が描写された月面(The Man in the Moon)の右目に銃弾型のカプセルが撃ち込まれるという形で描写される[注釈 3])。

無事にカプセルが月面に着陸すると天文学者たちは宇宙服などは装着せず、そのまま月面に降り立つ。遠くから地平線上に昇る地球を眺めた後、彼らは毛布を広げて眠る。この間に様々な天文事象がユーモラスに描写され、最後に月の女神フィービー(ポイべ)が三日月のブランコに座って現れる。フィービーが雪を降らせたことで天文学者たちは目を覚まし、洞窟の中へと避難する。そこで巨大なキノコを発見し、1人が傘を開くと巨大キノコに変わってしまい、一同は驚く。

ここで月の住民である地球外生命体(正式にはセレナイト(Selenite)と呼び、ギリシャ神話の月の女神セレーネにちなむ名前)が現れて襲ってくるが、強い力が加わると簡単に爆発してしまうため、天文学者たちは容易くこれを殺す。しかし、続けて多くの住民が現れたために抵抗できず、そのまま彼らの王宮に連れて行かれる。そこで玉座に座る月の王の前に引き立てられるが、天文学者の1人が王を玉座から引き離すと地面に叩きつけ殺してしまう。

王の死による混乱の隙を突いて天文学者たちは逃げ出し、追いかけてくる住民らに抵抗しながら崖上近くにあったカプセルに到着する。5人がカプセル内に入ると残る1人はカプセルに繋がったロープを引っ張り、これを崖から落とす。この時、月の住民の1人がカプセルにしがみつく。そのまま宇宙船は落下し続けて宇宙空間を通過し、地球の海へと落ちる。その後、天文学者たちはカプセルごと船舶に回収され、帰還を果たす。

最終シーンではLabor omnia vincit(ラテン語で「仕事はすべてを勝ち取る」の意[10])の標語が刻まれた記念像が除幕され、街をあげて天文学者たちの偉業を祝福するパレードが開かれる。そこではカプセルにしがみついて地球にやってきた月の住民が見世物にされている。
キャストジョルジュ・メリエス

本作の製作当時は、まだクレジットタイトルを付ける慣行がなかったため、出演者は匿名となっている[11]。以下の詳細なキャスト情報は入手可能な資料から作成している。
バルベンフィリ教授 - ジョルジュ・メリエス[1][12]
メリエスはマジシャンかつフランスの映画製作の先駆者であり、一般には物語映画の可能性を最初に見出した人物とされているが[13]、本作時点においてすでに『シンデレラ』(1899年)や『ジャンヌ・ダルク(英語版)』(1900年)などの物語映画で成功を収めていた[14]。監督、プロデューサー、脚本、デザイナー、技術、広報、編集、さらにしばしば俳優としてすべての作品に幅広く関わったことから、最初の映画作家の一人とも評される[15]
ポイベ(三日月に乗った女性) - ブルエット・ベルノン(フランス語版)
メリエスは1890年代にキャバレー「ランフェール」で歌手として活躍していたベルノンを見出し、自身の映画に出演させた。1899年の『シンデレラ』にも出演している[16]
海兵隊の将校 - フランソワ・ラルマン(Francois Lallement)
ラルマンは、スター・フィルムの従業員であるカメラ技師の一人である[16]
ロケット発射の大尉 - アンリ・ドラノワ(Henri Delannoy)[16]

パレードの隊長 - ジュール=ウジェーヌ・ルグリ(Jules-Eugene Legris)
ルグリは、メリエスが経営していたロベール=ウーダン劇場(英語版)のマジシャンである[17]
天文学者たち - ヴィクトル・アンドレ(Victor Andre)、デルピエール(Delpierre)、ファルジョー(Farjaux)、ケルム(Kelm)、ブルネ(Brunnet)
演じた者たちのうち、アンドレはクリュニー劇場(フランス語版)で働いていた人物で、それ以外の4人はフランスのミュージックホールの歌手である[18][19]

そのほか、シャトレ座のバレエ団員たちが星[18][19]や大砲の係員[8]として、またフォリー・ベルジェールの曲芸師がセレナイト役として出演している[18][19]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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