この項目では、奈良県の月ヶ瀬梅林について説明しています。
静岡県伊豆市の梅林については「伊豆月ヶ瀬梅林
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月ヶ瀬梅林
月ヶ瀬梅林[1](つきがせばいりん)は奈良県奈良市月ヶ瀬尾山とその周辺に位置する梅林である。五月川の渓谷沿いに梅の木が広がる様から月ヶ瀬梅渓とも呼ばれる。古くから有名な梅林で、日本政府が最初に指定した名勝の一つである。2007年現在、約1万3千本の梅が栽培されている。
目次
1 現況
1.1 地勢
1.2 梅林の用途
1.3 梅林の規模・栽培種
1.4 政府・自治体の保護
1.5 表記
2 みどころ
3 歴史
3.1 起源
3.2 烏梅伝来
3.3 最盛期
3.4 衰退と保護
3.5 高山ダム建設と新生月ヶ瀬梅林
4 交通
5 脚注
6 参考文献
7 外部リンク
現況
地勢 月ヶ瀬周辺地図 月ヶ瀬周辺衛星画像
月ヶ瀬梅林は奈良盆地と伊賀盆地の境に広がる大和高原の北側、京都・三重・奈良府県境付近に位置する。奈良市中心部からは東に約30キロメートル、三重県伊賀市中心部からは南西に約12キロメートルの距離にある。大和高原北側の府県境付近は木津川水系名張川の渓谷が続いており、特に月ヶ瀬梅林のある名張川下流域は五月川と呼ばれ、深いV字谷を形成している。
月ヶ瀬梅林はこのV字谷の斜面に広がる梅林である。「月ヶ瀬梅渓」と呼ばれる所以となった雄大な渓流は高山ダムの完成(1969年)によりダム湖の底に沈んだが、近年はその月ヶ瀬湖の湖水と梅林が調和し、新たな景観を形成している[2]。
月ヶ瀬梅林は海抜200メートルから300メートルの高原である。高原の影響を受けるため、月ヶ瀬梅林に生育する梅の開花期は奈良市中心部よりも半月ほど遅れ、3月の中旬から下旬に満開となることが多い[2]。
梅林の用途月ヶ瀬梅林の歴史については「#歴史」を参照
明治時代に入る頃まで月ヶ瀬は烏梅(若い梅の実の燻製。紅花染めに必要な材料。)の一大生産地であり、月ヶ瀬梅林は烏梅の原料となる梅の実を収穫する用途で規模を拡大していった。最盛期の江戸時代には約10万本の梅の木が成育していたとされる[2]。
20世紀に入ると合成染料の発達により、烏梅はほとんど生産されなくなったため、月ヶ瀬梅林は観光資源として利用や食用の青梅の栽培に軸足を移した。 1950年の名勝再指定時に月瀬梅林として指定された梅林の規模は旧月ヶ瀬村全体で 畑573筆、約10町3反8畝(約104km2)、梅樹3108本である[3]。2007年現在、この指定上の規模が変更されていないとの報道がある[4]。1988年の月ヶ瀬梅渓保勝会概要によると、月ヶ瀬梅林保勝会管理対象の梅樹は約1万本とあり、名勝に指定されていない梅樹が相当数栽培されている[3]。月ヶ瀬村を合併した奈良市は2007年までに梅林の規模や衰退状況等を正確に調査した上「保存管理計画」を取りまとめる予定である[4]。 また「指定統計第26号『農林業センサス』」によると2000年の時点で旧月ヶ瀬村には約5.6ヘクタール(56 km2)の農業用梅林が存在し、21戸の農家がウメを栽培しているとされる[5]。ただし、農林業センサスの記録からは月ヶ瀬梅渓保勝会の管理対象に農業用梅林が含まれるか否かは読み取れない。 月ヶ瀬梅林で栽培されるウメの種類に関しては1957年に発表された「名勝月瀬学術調査」において「月ヶ瀬梅林では、梅の実の収穫量の多い遅咲きのウメばかりを栽培したために『春に先駆けて咲く梅の花』の魅力を感じられなくなった(大意)」との考察がなされている[6][7]。
梅林の規模・栽培種