月の石
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芸能事務所ムーンストーンを運営していた会社については「月の石 (芸能事務所)」をご覧ください。
月の石:カルシウムに富んだ斜長岩。アポロ16号がデカルト(クレーター)付近の月面高原にて採集。この岩石サンプルは現在ワシントンD.C.スミソニアン自然史博物館に展示されている。

月の石(つきのいし、: lunar rock)はで生成された。「月の石」という呼称は厳密なものではなく、月面探索中に収集された他の物質についても用いられる。
採集経緯

現在地球上には以下4種類のソースから採集された月の石が存在する。
アメリカ合衆国の月探索計画であるアポロ計画により持ち帰られたもの

ソビエト連邦ルナ計画により持ち帰られたサンプル

月面のクレーター形成過程に生まれ、隕石として地球上に落下したもの

中華人民共和国嫦娥5号により持ち帰られたサンプル

月面探索
計画採集
サンプル
アポロ11号22 kg
アポロ12号34 kg
アポロ14号43 kg
アポロ15号77 kg
アポロ16号95 kg
アポロ17号111 kg
ルナ16号101 g
ルナ20号55 g
ルナ24号170 g
嫦娥5号1731 g[1]

2415サンプル(総重量382キログラム)が主にアポロ15号16号17号によって、6度のアポロ計画による月面探索中に採集された。3機のルナ計画宇宙探査機はさらに326グラムのサンプルを持ち帰った。2006年後期において月から飛来した隕石は90以上(総重量30キログラム以上)確認されている。2020年の嫦娥5号は旧ソ連の合計を上回る1731グラムを持ち帰っている。

アポロ計画において、月の石はハンマーレーキスコップトング、コアチューブといった様々な道具を使って採集された。石のほとんどは採集前に発見された時点の状態を写真に記録された。石は採集時にサンプル袋にいったん入れられ、それから汚染を防ぐための特別環境試料容器に格納され、地球へ持ち帰られた。
成分月の高地の石(斜長岩)。
アポロ16号で採取。月の海の石(ピジョン輝石玄武岩)。
アポロ15号で採取。

放射年代測定によると、一般に月の石は地球上の石に比べはるかに古く、最も新しいものでも地球上に見られる最古の石より古い。その年代は月の海から採集された玄武岩サンプルの32億年から高地で採集されたものの44.4億年と幅広く、太陽系の歴史の初期に遡るサンプル資料となる。月の石は超塩基性岩や塩基性岩であり、地球表面上で一般的に見られる地殻の岩石と比べると、月の石は地球の岩石と比較して、マグネシウムに対するの含有量が少なく、カリウムナトリウムといった揮発性元素が地球の地殻岩石と比べて乏しく、また、水分をほとんど含まない。他方、酸素同位体の分別線は地球のそれとよく重なる。かつては水分子を全く含まないと思われていたが、2008年になって微量な分子も検知できる二次イオン質量分析法を使用することでごくごく微量の水が含まれていることが判明し、月の地中深くには地球のマグマと同様の水分が含まれている可能性が出てきた[2]。2011年の北海道大学のグループのSIMSを用いた研究成果では、月の水は地球のそれとは水素同位対比が異なり、彗星の水素同位対比に似ている。

月面はレゴリス)によって覆われている。レゴリスは隕石などによって細かく破砕された岩石片が堆積したものであり、月面のほぼ全体を数十センチメートルから数十メートルの厚さで覆っている。新しいクレーターなどの若い地形ほどレゴリス層は浅い。レゴリス粒子は非常に細かく、宇宙服精密機械などに入り込みやすく問題を起こす。しかしその一方でレゴリスの約半分は酸素で構成されており、酸素の供給源や建築材料としても期待されている。また太陽風によって運ばれた水素ヘリウム3が吸着されており、その密度は低いもののそれらの供給源としても考えられている。ヘリウム3は核融合の原料となる。

月面で発見された新鉱物には、アポロ11号に搭乗していた3名の宇宙飛行士の、アームストロングオルドリン、そしてコリンズにちなんで名づけられたアーマルコライト、パイロクス鉄石(英語版)、トランキリティアイト嫦娥石がある。ただし、嫦娥石以外は後に地球上でも発見されたため、月に固有の鉱物というわけではなくなっている。また、パイロクロアスーパーグループの「酸化灰ベタフォ石(Oxycalciobetafite)[3]」、「酸化ウラノベタフォ石(Oxyuranobetafite)[4]」が報告されているが、結晶構造が不明なため2022年現在は認定されていない。アポロ15号によって持ち帰られたジェネシス・ロック
保管地

アポロ計画によって持ち帰られた月の石の主な貯蔵庫はテキサス州ヒューストンリンドン・B・ジョンソン宇宙センター内、月試料実験室施設(英語版)にある。安全のために、ニューメキシコ州ラスクルーセス近郊のホワイトサンズ試験施設(英語版)にも少量の資料が保管してある。ほとんどの石は湿度を遮断するために窒素の中に保存してあり、取り扱いは特殊なツールを介して行われる。

月面探索の際に採集された月の石は、当初、安全性が確認されていなかったため危険物扱いもされていた。1969年12月1日アポロ12号が持ち帰った石を研究していた11人の科学者らが、取り扱い中に石の粉で汚染されたとして隔離される出来事もあった[5]。また、石は非常に貴重なものとされており、1993年ルナ16号から採取されたおよそ0.2グラムの小断片が44万2500米ドルで売却され、2002年には月試料実験室施設から極めて微小な月と火星の岩石資料が入った保管庫が盗まれた。これらの資料は後に回収されたが、2003年アメリカ航空宇宙局 (NASA) が訴訟のためにこれらの価値を算出したところ、285グラムに対しておよそ100万ドルの査定額がつけられた。月から飛来した隕石については高額ではあるが、個人収集家の間で広く取引されている。国立科学博物館で展示されている月の石

日本では、1970年大阪万博においてアメリカ館で実物が展示され人気を博した。あまりにも反響が大きすぎたため、入館待ち行列・時間が長くなり体調を崩す来場客が相次ぎ、事態を重く見た日本政府が、万博開催前に政府間レベルの友好の証しとしてアメリカ政府から寄贈されていた月の石(ただし、体積はアメリカ館で展示されていた物よりはるかに小さい)の日本館展示を会期途中から始め、アメリカ館関係者から不満・苦情を寄せられたという話もある。

その後、2005年愛知万博でもグローバルハウスのオレンジホール内のグローバルショーケースに大阪万博のものとは別の物が展示され、大阪万博で断念した来場客を喜ばせることとなった。常設の展示品としては、国立科学博物館で見ることができる。

また、2022年4月28日から、北九州市科学館(スペースLABO)で常設展示[6]されている。これは、1969年にアポロ12号が持ち帰った実物で、重さは176.4グラムと国内で常設展示されている中で最大、1990年から2017年まで博物館の隣接地にあったテーマパークスペースワールドに展示され、その後2018年12月22日から北九州市立いのちのたび博物館で常設展示されていたものである[7]


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