月の植民(つきのしょくみん)とは人類が月へ移住し、月の環境の中で生活基盤を形成すること。宇宙移民の構想の一つ。 地球以外の天体上の恒久的な人間の居住地(コロニー)はSF作品の主要なテーマの一つである。技術の向上と地球上での人類の将来についての関心が高まるにつれ、幾人かの人々によって、宇宙移民は達成でき、遂行する価値のある目標だと主張されるようになった。地球からの近さと、早くからの望遠鏡による山や平地などの観察で、月は長い間、宇宙の中で人間の植民が可能な候補として見られてきた。しかしながら、アポロ計画により月への旅が(たとえ高コストだとしても)可能であると実証されたものの、宇宙飛行士が持って帰ってきた石と土のサンプルにより、生命に必要ないくつかの元素が極めて少ないことも証明されたせいで、月の植民に対する熱狂は削がれることになった。 月面探査などの歴史については、月#人間との関係史、ルナ計画、アポロ計画、ソ連の有人月旅行計画の項目を参照 地球を出て人間の植民が可能か、または望ましいかどうかの一般的な問題を脇に置いたとしても(この問題に関する議論は宇宙移民を参照)、宇宙移民の提唱者達は月は植民の場所として利点と欠点の両方を有していると指摘する。 天然の天体上のコロニーは、建築やその他放射線対策用も含めた、十分な資源の供給源を確保できるだろう。物を月から宇宙に送るために必要なエネルギーは、月の脱出速度の小ささのため、地球から宇宙へ物を送る場合と比べてはるかに少ない。このため、月は宇宙船の建造工場や燃料基地として機能することもできる[1]。いくつかの計画では、月から物を発射するのにロケットではなく電気的な加速装置(マスドライバー)を使うことを考えている。また、地球よりも宇宙に近いとはいえ月にはいくらかの重力があり、経験上これは長期間の人間の健康に重要なことではないかと思われる[2][3]。とはいえ、月の重力(おおよそ地球の1/6)がこのために満足いくものなのかはまだ不明である。 加えて、月は太陽系で最も地球に近い巨大天体でもある。ときおり、いくつかの地球に交差する小惑星がより近くを通過することはあるものの、月は一貫して38万4,400kmという短い距離である。この近さにはいくつかの利益がある。 月には植民の場所として幾つかの欠点がある。
概説
歴史
利点と欠点
利点
物を地球から月に送るために必要なエネルギーは、その他ほとんどの天体と比べて少なく済む。地球に交差する小惑星は、相対速度は幾分少なく済むものの、数ヶ月の旅のため人間用に安全な住居が必要とされるだろう。その余分な重量が、相対速度のメリットを打ち消すというのは十分ありそうなことである。
所要時間の短さ。アポロの宇宙飛行士たちは3日間の旅で月旅行を実現した。さらに、技術の進歩によりニュー・ホライズンズのようにはるかに速い飛行ができるようになった。ニュー・ホライズンズでは月を9時間ほどで通過している。
短い所要時間により、緊急時に物品を地球から月のコロニーに素早く到達させることもできる。これは最初に人間のコロニーを設立するときには考慮すべき重要なポイントである。
地球との通信の遅延は数秒だけであり、普通の音声と映像による会話を許容する。他の太陽系の天体との遅延は分や時間のレベルである。これも初期のコロニー(地球の援助が必要となるような生命を脅かす問題が起こることは十分予想される)では特別な意味を持つだろう(例:アポロ13号)。
月の地球側では地球は大きくかつほとんどいつでも見えるが、火星では地球は全て見えるものの、地球から見た他の惑星と同じように、単なる星のようなものとしか見えないだろう。その結果、月コロニーに住んでいる人々はあまり離れたところではないと感じられるかもしれない。
欠点
長い月の夜は、太陽エネルギーに依存することを妨げ、極端な温度差に耐えうる設計のコロニーを要求する。この例外は「永遠の陽射し」 (PEL
月は、北極・南極付近には水素の存在を示すいくつかの証拠はあるものの、全体として生命のために必要な軽い元素(揮発性の)に欠けている。そのため、これらについては、初めは地球から運ぶ必要があるだろう。これはコロニーの成長率の制限となり、地球への依存が続くことにも繋がるだろう。この費用は、補給船の上段を揮発性物質を多く含む材料、カーボンファイバーやプラスティックなど、を使って建造することで減らすことができる。2006年、ケック天文台は、トロヤ群の二重小惑星パトロクロス(おそらく木星軌道のその他多くのトロヤ群の物体も)は水や氷、それに塵の層から成り立っていると思われると発表した[4]。この領域から惑星間輸送網