月の地質(つきのちしつ)は、地球の地質とはかなり異なる。月の地質を研究する学問を月質学(Selenology)と言う。月には、気候による侵食を起こす大気がなく、またプレートテクトニクスも持たない。重力は小さく、大きさも小さいため、冷えるのが早い。月面の複雑な地形は、主に衝突盆地と火山活動によるものである。最近の分析で、月の水は表面に存在するだけではなく、内部には月の表面全体を1mも覆うほどの水を持つことが明らかとなった[1]。月は分化が進んだ天体で、地殻、マントル、核を持つ。
月の地質の研究は、地球からの望遠鏡による観測と月探査や月の石の分析、地球物理学のデータ等を用いて行われる。1960年代末から1970年代初めに行われたアポロ計画とルナ計画で、いくつかの場所から直接サンプルが採取され、合計約385kgの月の石や土壌が地球に持ち帰られた。月は、地質学的背景が既知の地点からサンプルが持ち帰られた唯一の地球外の天体である。また、いくつかの月起源隕石が地球上で見つかっているが、それらが生じたクレーターの場所は分かっていない。月面のかなりの場所は未探査であり、多くの地質学的問題が未解決のまま残っている。
元素構成月の高地、低地、地球での各種元素の相対存在比
月面上に存在することが確認されている元素には、酸素(O)、ケイ素(Si)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)等がある。その中でも、酸素、鉄、ケイ素の割合が多く、酸素の割合は45%と推定されている。炭素(C)と窒素(N)は、太陽風の堆積が痕跡量存在するだけである。
ルナ・プロスペクターの中性子分光データでは、極地方に水素(H)の存在量が多いことが示された[2]。
形成月の表
長年の間、月の歴史に関する根本的な問題は、その起源についてであった。初期の仮説には、地球からの分裂、地球による捕獲、共降着等があった。今日では、ジャイアント・インパクト説が広く受け入れられている[3]。 自転が加速しつつある初期の地球がその質量の一部を追い出したという説が、チャールズ・ダーウィンの息子のジョージ・ハワード・ダーウィンから提唱された。一般的には、太平洋が月の痕跡だと考えられた。しかし、今日では、海洋の底を形成する地殻は月の年齢よりも遙かに若く、2億歳にも達しないことが明らかとなっている。また、この仮説では、地球-月系の角モーメント この仮説では、月が形成後に地球の重力場に捕獲されたものであるとする。しかし、地球の近くまで接近すると、地球と衝突するか軌道が変わってしまうため、もしこのような状況が起こっても、月は逃げてしまって、二度と地球と出会うことはない。この仮説が成り立つためには、月が逃げる前にその速度を落とすために、原始の地球が濃い大気を持っていなければならない。この仮説は、木星や土星の不規則衛星の軌道を説明できるが[4]、地球と月の酸素の同位体の存在比の一致を説明できないと考えられている[5]。
分裂仮説
捕獲仮説
共降着仮説