最高裁判所_(アイルランド)
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最高裁判所があるダブリンのフォー・コーツ

最高裁判所(さいこうさいばんしょ、アイルランド語: Cuirt Uachtarach、英語: Supreme Court)は、アイルランドの最上級司法機関である。最高裁判所は最終審の裁判所であり、高等法院と共に、議会の制定する法律に対する違憲審査権を行使する。また、政府や私人にアイルランド憲法を遵守させることも管轄する。庁舎はダブリンフォー・コーツにある。
構成

最高裁判所は、主席裁判官とよばれる最高裁判所長官と高等法院長、その他少なくとも7人の通常裁判官で構成される[1]。高等法院長は、普段は高等法院の裁判官であり、職務上、最高裁判所裁判官となる。法廷は、3、5又は7名の部で開かれる。複数の部が同時に開かれる。大統領が憲法12条に基づき恒久的に職務を遂行できなくなったかどうかを判断するとき、憲法26条に基づき大統領から最高裁判所に付託された法案の合憲性について審査するとき、その他あらゆる法律の合憲性について審判するときは、最低5人の裁判官で法廷を構成しなければならない[2]

最高裁判所裁判官は、政府(内閣)の拘束力のある助言に基づいて大統領によって任命される。1995年以来、政府は司法諮問委員会(Bhoird Chomhairligh um Cheapachain Bhreithiunacha)の拘束力のない助言に従っている[3]
現在の裁判官

氏名[4]任命出身大学前歴備考
ドナル・オコンネル2010年3月ユニバーシティ・カレッジ・ダブリン(法学士)
バージニア大学(法学修士)
キングス法曹院2021年10月から首席裁判官[5][6]
エリザベス・ダン2013年7月ユニバーシティ・カレッジ・ダブリン(法学士)
キングス法曹院巡回裁判所裁判官(1996年 - 2004年)
高等法院裁判官(2004年 - 2013年)
ピーター・チャールトン2014年6月トリニティ・カレッジ・ダブリン(法学士)
キングス法曹院高等法院裁判官(2006年 - 2014年)
イズールト・オマリー2015年10月トリニティ・カレッジ・ダブリン(法学士)
キングス法曹院高等法院裁判官(2012年 - 2015年)
マリー・ベイカー2019年12月ユニバーシティ・カレッジ・コーク
キングス法曹院高等法院裁判官(2014年 - 2018年)
控訴院裁判官(2018年 - 2019年)
シェイマス・ウルフ2020年7月[7]トリニティ・カレッジ・ダブリン(法学士)
ダルハウジー大学(法学修士)
キングス法曹院検事総長(2017年 - 2020年)
ジェラード・ホーガン2021年10月ユニバーシティ・カレッジ・ダブリン(法学士、法学修士、法学博士)
ペンシルベニア大学ロースクール(法学修士)
トリニティ・カレッジ・ダブリン(博士)
キングス法曹院高等法院裁判官(2010年 - 2014年)
控訴院裁判官(2014年 - 2018年)
裁判所法務総監(2018年 - 2021年)
ブライアン・マレー2022年2月トリニティ・カレッジ・ダブリン
ケンブリッジ大学(法学修士)
キングス法曹院控訴院裁判官(2019年 - 2022年)
モーリス・コリンズ2022年11月[8]ユニバーシティ・カレッジ・ダブリン(法学士)
キングス法曹院控訴院裁判官(2019年 - 2022年)
アイリーン・ドネリー2023年6月[9]ユニバーシティ・カレッジ・ダブリン(法学士)
キングス法曹院高等法院裁判官(2014年 - 2019年)
控訴院裁判官(2019年 - 2023年)

裁判官の任期

1995年裁判所及び裁判所職員法(the Courts and Court Officers Act, 1995)では、最高裁判所の普通裁判官の定年が72歳から70歳に引き下げられた。この法律が施行される前に任命されていた裁判官は、72歳まで任期が続く。1997年裁判所法(the Courts (No. 2) Act, 1997)では、法律施行後の首席裁判官の任期を7年に制限した。以前からの首席裁判官は、法令上の定年に達するまで裁判官として在職し続ける。
管轄

最高裁判所は、高等法院(the High Court)、刑事控訴院(Court of Criminal Appeal)及び軍法会議上訴裁判所(Courts-Martial Appeal Court)からの上訴を管轄する。合憲性に関する上訴の場合を除き、最高裁判所の上訴の受理に関する権限は厳しく制限(刑事控訴院及び軍法会議上訴裁判所からの上訴の場合)または完全に排斥することができる。最高裁判所は、巡回裁判所(Circuit Court)からの法的な争点に関する照会も受け付ける。

最高裁判所は、2つの事案に関してのみ、第一審管轄権を有している。ひとつは、憲法26条に基づき、大統領から付託された法案に関し、公布前に合憲性を審査する場合であり、もうひとつは、憲法12条に基づき、大統領が職務遂行能力を欠くかを判断する場合である。

上訴を提起する前に、第一審裁判所または最高裁判所自身の許可が要求されることはあまりなく[10]、最高裁判所は、どの事件に判決を出すかについての決定権をほとんど有していない。
違憲審査権

最高裁判所は、高等法院と共に、憲法に違反する法律を無効化する権限を行使する。また、公共団体や民間団体、市民に対し、憲法を順守させるために差止命令を出すこともできる。アイルランド憲法は、明文で立法に対する違憲審査制を規定している。憲法施行後に成立した法律は、合憲性の推定が働き、憲法と矛盾する(repugnant)場合に無効となる(15条4-2項)。他方、憲法施行以前の法律は、憲法と調和しない(inconsistent)場合に無効となる(50条1項)。

憲法は、26条において、法律として成立する前(あるいは成立するはずだったときよりも前)の法案についての違憲審査も規定している。法案審査の権限は、国家評議会(Council of State)と協議の後、大統領から直接付託される。


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