最高平均方式
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最高平均方式(さいこうへいきんほうしき、Highest averages method)とは、比例配分方式の一つで、名簿式投票制度における議席の各党への割り当てや選挙区への定数の配分に用いられる。計算方法は異なるが同じ結果を与える除数方式(Divisor method)についても本項で扱う。最高平均方式は主に比例代表選挙の文脈で用いられ、除数方式は地域への議席配分の文脈で用いられることが多い。最大剰余方式(Largest remainder method)と対照される。
配分方法

h {\displaystyle h} 議席を各政党へ得票数に応じて分配することを考える。都道府県などへの議席配分を考える場合は政党を都道府県、得票数を人口と置き換えればよい。各政党には  1 , … , s {\displaystyle 1,\dots ,s}  と番号をつけ、政党  i {\displaystyle i}  の得票数は  p i {\displaystyle p_{i}} であるとする。

丸め関数 r ( n ) {\displaystyle r(n)} を1つ固定する(丸め関数が異なると配分結果は変化する)。丸め関数は次のような性質を満たすように選ぶ。

r ( 0 ) < r ( 1 ) < r ( 2 ) < … {\displaystyle r(0)<r(1)<r(2)<\dots }

すべての n {\displaystyle n} に対して n ≤ r ( n ) ≤ n + 1 {\displaystyle n\leq r(n)\leq n+1}

r ( n ∗ ) = n ∗ + 1 {\displaystyle r(n^{*})=n^{*}+1} となるような n ∗ {\displaystyle n^{*}} があるならば、すべての正の整数 n {\displaystyle n} に対して r ( n ) > n {\displaystyle r(n)>n}

r ( n ) {\displaystyle r(n)} の選び方によっては、以下のように特別な名前がつくことがある。

アダムズ方式: r ( n ) = n {\displaystyle r(n)=n}

サン=ラグ方式、ウェブスター方式: r ( n ) = n + 0.5 {\displaystyle r(n)=n+0.5}

ドント方式、ジェファーソン方式: r ( n ) = n + 1 {\displaystyle r(n)=n+1}

ヒル方式: r ( n ) = n ( n + 1 ) {\displaystyle r(n)={\sqrt {n(n+1)}}}

ディーン方式: r ( n ) = 2 n ( n + 1 ) 2 n + 1 {\displaystyle r(n)={\frac {2n(n+1)}{2n+1}}}

各政党への議席配分 h 1 , … , h s {\displaystyle h_{1},\dots ,h_{s}} を

h 1 + ⋯ + h s = h {\displaystyle h_{1}+\dots +h_{s}=h}

max i ∈ S + r ( h i − 1 ) p i ≤ min i ∈ S r ( h i ) p i ( S = { 1 , … , s } , S + = { i ∈ S : h i ≥ 1 } ) {\displaystyle \max _{i\in S_{+}}{\frac {r(h_{i}-1)}{p_{i}}}\leq \min _{i\in S}{\frac {r(h_{i})}{p_{i}}}\quad (S=\{1,\dots ,s\},S_{+}=\{i\in S:h_{i}\geq 1\})}

が満たされるように定める。得票数が完全に一致する政党があるなど、まれな場合を除いて議席配分は1通りに定まる。

2番目の条件式は、「丸め関数 r ( n ) {\displaystyle r(n)} によって補正した投票者1人あたりの獲得議席」が平等になるように議席を配分するという意味で、配分の比例性を表すものである。たとえば r ( n ) = n {\displaystyle r(n)=n} の場合、 r ( h i ) p i = h i p i {\displaystyle {\frac {r(h_{i})}{p_{i}}}={\frac {h_{i}}{p_{i}}}} は各政党における投票者1人あたりの獲得議席そのものであり、仮にいずれかの政党の獲得議席が1つ減ったとするとき、その政党への投票者1人あたりの獲得議席は実際の選挙結果において投票者1人あたりの獲得議席が最小である政党よりもさらに小さくなる、ということを意味する。

最高平均方式、除数方式は h 1 , … , h s {\displaystyle h_{1},\dots ,h_{s}} を具体的に計算する手順につけられる名称である。
最高平均方式

1議席ずつどの政党に議席を与えるかを決める。政党 i {\displaystyle i} の獲得議席を h i {\displaystyle h_{i}} とし、これを反復計算によって次のように更新してゆく。

最初はどの政党も議席を得ていないので h 1 = h 2 = ⋯ = h s = 0 {\displaystyle h_{1}=h_{2}=\dots =h_{s}=0} とする。

各政党 i {\displaystyle i} について p i r ( h i ) {\displaystyle {\frac {p_{i}}{r(h_{i})}}} の値を計算し(関数の選び方によっては分母が0となる場合があるがこの場合は計算結果を無限大として扱う)、値が最も大きい政党 j {\displaystyle j} に次の1議席を与える、すなわち h j {\displaystyle h_{j}} の値に 1 {\displaystyle 1} を加える。

上を h {\displaystyle h} 回繰り返す。最終的な h i {\displaystyle h_{i}} の値が政党 i {\displaystyle i} の獲得議席となる。

除数方式

最高平均方式とは異なり、一度にすべての配分を計算する。

実数 x {\displaystyle x} に対して、集合 [ x ] {\displaystyle \left[x\right]} を x < r ( ⌊ x ⌋ ) {\displaystyle x<r(\lfloor x\rfloor )} のとき { ⌊ x ⌋ } {\displaystyle \{\lfloor x\rfloor \}} 、 x > r ( ⌊ x ⌋ ) {\displaystyle x>r(\lfloor x\rfloor )} のとき { ⌈ x ⌉ } {\displaystyle \{\lceil x\rceil \}} 、 x = r ( ⌊ x ⌋ ) {\displaystyle x=r(\lfloor x\rfloor )} のとき { ⌊ x ⌋ , ⌈ x ⌉ } {\displaystyle \{\lfloor x\rfloor ,\lceil x\rceil \}} と定める。

( ⌊ x ⌋ , ⌈ x ⌉ {\displaystyle \lfloor x\rfloor ,\lceil x\rceil } はそれぞれ x {\displaystyle x} の小数点以下切り捨て、切り上げによって得られる整数)

上の記法を用いて、次の手順によって議席を計算する。

ある数 D {\displaystyle D} を固定する

政党 i {\displaystyle i} の獲得議席を h i ∈ [ p i D ] {\displaystyle h_{i}\in \left[{\frac {p_{i}}{D}}\right]} となるように定める。

h 1 + ⋯ + h s = h {\displaystyle h_{1}+\dots +h_{s}=h} となるように獲得議席を定めることができない場合、 D {\displaystyle D} の値を調整する。

D {\displaystyle D} のことを除数という。
性質

最大剰余方式で見られた、配分パラドックスの問題が生じない。

一方で、純粋な取り分から乖離した配分を受ける政党が生じる可能性がある。 h {\displaystyle h} 議席を比例配分するとき、総投票数 p {\displaystyle p} 中の p i {\displaystyle p_{i}} 票を獲得した政党 i {\displaystyle i} の純粋な「取り分」は p i p ⋅ h {\displaystyle {\frac {p_{i}}{p}}\cdot h} 議席となるから、実際の配分議席数はこの端数の切り上げか切り捨てによって得られる数であることが望ましいと考えられる。しかし、以下の表に示すサン=ラグ方式の配分の例ではA党への配分が純粋な「取り分」よりも過小になっている。

政党得票数総議席数:10得票/(n+0.5)
「取り分」配分議席n=0n=1n=2n=3n=4n=5n=6
A70247.0246140484682.66...2809.62006.85...1560.88...1277.09...1080.61...
B16511.651233021100.66...660.4
C6650.66511230443.33...
D6600.6611220440※上位10個を赤字で表示

名前のついた各方式

最高平均方式と除数方式で名称が違うものは、「最高平均方式での名称 = 除数方式での名称」として表示する。名称が一つしか表示されていないものは全て除数方式である。これら名称が一つしかない制度ではゼロ割当が発生しないため、支持票数と同数の名簿を提出してそれぞれの名簿に1票ずつ票を割り振ることで、その支持票を持つ政党は支持票数と同数の議席を得られる。このため、複数の支持票を一つの名簿に纏める政党はほぼ現れず、有権者数とほぼ同数の名簿が選挙管理委員会に提出され、選挙が破綻する。


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