最後の弁護人
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『最後の弁護人』(さいごのべんごにん)は、2003年1月15日から同年3月19日にかけて日本テレビ系列の「水曜ドラマ」枠で放送されたテレビドラマ。副題は「The Last Lawyer」。初回のみ15分拡大。全10話。平均視聴率11.6%。

阿部寛は本作が7年ぶりの連続ドラマ単独主演となった[注 1]
あらすじ

不良債権取立てを行う銀行員の石田良子は、事務所開設資金を返済していない有働弁護士事務所の有働和明を訪ねる。しかし有働弁護士事務所は依頼人も事務員を雇う余裕さえもなく、さらに有働の義理の姉である日本弁護士会の神崎美智子からは報酬の少ない国選弁護人ばかりを依頼され、財政的にかなり厳しい状態であった。それでも有働は、助手となった良子や自身が弁護した赤倉俊哉らとともに数々の難事件に挑んでいく。
登場人物
レギュラー出演
有働和明:
阿部寛(弁護士)
有働弁護士事務所の弁護士。事務所には依頼人がまったくと言っていいほど現れず、義姉である神崎美智子からの国選弁護の依頼ばかりを請け負っている。報酬が少ないため極貧状態[注 2]で、事務所開設資金の融資の返済と家賃を滞納している。助手の良子や赤倉にまともに給料を払えていないばかりか、冬場の灯油代を立て替えてもらっている。弁護人としてはとても優秀。「人を裁くことが許されるものは事実だけ」「被告人がどんな人間であろうと、どんなに醜い事実が待っていようと徹底的に捜査を行い、無罪を目指し弁護する」という信念を持つ。勘が冴えているが、事件と関係ない場面では当てにならない[注 3]。「納得がいかないことがあると[注 4]頑固な便秘になる質だ」とよく語っており、裁判で追い込まれた際のストレス解消法は「太鼓の達人[注 5]。「思った通りだ」が口癖。同じ弁護士でもあった妻・百合(旧姓:神崎)は10年前に他界し、現在は高校生の娘と暮らしている。年頃の娘の行動が気になって仕方がないようで、門限を夕方6時に設定し、娘が読んでいるギャル雑誌を勝手に事務所に持ってきたり[1]、メールのやり取りを盗み見るために携帯のロックを解除しようとする[2]など親バカ気味。娘からはよく『最低』と言われているらしい[3]。愛用のスーツは妻と娘が2人で見立ててくれたもの[4]。性格はかなりのひねくれ者。良子と赤倉に対しては特に口が悪く、『ロバ』や『サル』などと呼んでは事あるごとに悪態をついて呆れさせ、良子からも度々『最低』と言われている。その様子を楽しんでいるようにも見えるが、実際は自身の過去(後述)について気付かせないために、あえてそのように振る舞っている節がある。「僕なんか死んだ方がいい」と言う10歳の少年・佐倉悟に「なら死ね」と言い放ち、それに激怒する良子に「『死ぬ』と言いながら死なない人間が一番迷惑、ルール違反だ。その理由は『死ぬのは簡単だが、死なれるのはとても難しいから』だ」と語る。その際、妻を亡くしていることを明かした[2]。日本中から恨みを買う被告人・熊川麻美の弁護を引き受けた際には、事務所がバッシング電話や投石で窓ガラスを割られるなどの嫌がらせに遭う。その巻き添えのような形で良子が暴漢から襲われ、搬送先の病院で柴田から過去について触れられて感傷し、良子と赤倉を突き放して事務所を辞めさせようとした[5]。自身が申請した証人が裁判所内で殺害された際には「なんとか言ったらどうですか」と言う柴田に「なんとか」と返し怒らせるが、その夜事務所で1人涙していた[6]。10年前、自身が弁護した母娘強盗殺人事件の被告人を、警察の不適切な捜査[注 6]を指摘し無罪放免にしている。その際に被害者遺族の吉野一臣の恨みを買い、復讐として妻の百合を殺害され、娘を傷つけられた経験がある。その過去と前述の信念が、最終話で「妻を殺し、娘を傷つけた男の弁護」という複雑な事態を招くことになる。
石田良子:須藤理彩(事務員)
有働弁護士事務所の1人目[注 7]の助手。物語当初はよつば銀行調査課の不良債権回収担当。26歳[7]茨城県牛久市出身で高校時代にミス牛久に選ばれた経験があり[8]、普段は標準語だが不意に訛りが出ることがある。幼い頃から弁護士に憧れて勉強したが学力に結び付かず、弁護士の彼氏を作ることも弁護士事務所に事務員として就職することも失敗。そこそこの幸せを目指して銀行に就職したが、調査課に配属されて以降不良債権を全く回収できずうだつが上がらなかった。そこで取り立てリストの中にあった有働弁護士事務所に目を付け訪問するが、有働から依頼人と間違われ、事務所のドアをノックする力の弱さから「自分に自信がなく、現状を大きく打破する勇気がない」と評される。債権回収に来た銀行員だとわかった途端に追い出されそうになるが、その最中に鳴った赤倉の国選弁護依頼の電話を勝手に取り、成り行きで有働の捜査に付き添うことになる。捜査する中で赤倉の無実を信じるようになり、また先述の有働の言葉を思い出し、現状を変える決意をする。有働の頼みで真犯人の財務状況を知るために銀行の上司のパソコンのパスワードを盗み、社内秘資料をプリントアウトして持ち出し捜査に貢献する。しかし後にそれが発覚して銀行を解雇され、第2話からは強引に有働の助手となる。捜査を手伝い車を出したりと助手としての役目を果たしているが、赤倉共々給料はほとんど支払われていない模様。有働には初対面の出会い頭から『ロバ』呼ばわりされ、以降も『下膨れのロバ面』『(体型が)ムーミン』など枚挙に暇がないほど罵られており、1度も名前で呼ばれたことがない。良子は有働の電話番号を『ウド』の名前で携帯に登録している[9]。銀行員時代は上司に自ら土下座をするなど少々卑屈だったが、本来はポジティブかつ人当たりが良い性格。ただし有働に対しては、散々罵られていることもあって勝ち気になることが多い。熊川麻美のために事務所が連鎖的に嫌がらせに遭った際には、義憤に駆られた2人組の暴漢に襲われ、転倒した時に頭を打って怪我をした。治療後の病室で柴田が有働の過去について触れているのを寝たふりをして聞いており、「有働が悪態をつくのは過去に起きた何かを気付かせないためではないか」と考えるようになる[5]。神崎にそのことを尋ねたが、それとなく事実を伝えられつつも冗談だと言われてはぐらかされた[10]。事件の証人が殺害された際に、神崎が「また人を死なせた」と言ったことで有働を問い詰めるが答えてはもらえず[6]、真相を知ったのは最終話になってからであった。「弁護士は弱きを助け正義を守る仕事であり、金銭面では困らない」と思っていた。基本的に弁護士としての有働のことは尊敬している[注 8]が、彼が貧乏であり「弁護士は正義を守る存在ではない」と教えられ理想とのギャップを感じる。物語終盤では無実ではない被告人や、百合を殺害し娘を傷つけた吉野ですら全力で弁護しようとする有働の姿勢にショックを受ける。そんな折に地元での若手弁護士との見合い話が出たこともあって、事務所を辞めるか思い悩み1度は見合いをするが、最終的には縁談を断って事務所に残ることを選んだ[11]
赤倉俊哉:今井翼(事務員)
有働弁護士事務所の2人目[注 9]の助手であり、物語の最初の被告人。20歳で生年月日は昭和57年10月21日[12]。元暴走族不良で傷害の前科が2犯あり、少年院に2年間入った後に山村鉄工所に勤務。自分の人生を諦めながら生きていたが、所長の山村から拳まじりに叱咤されて立ち直る。山村に「何かの役に立つから」と言われ必死に勉強し[注 10]、持っていたバイクを売って大検の予備校の費用に充てていた。しかし同僚との些細ないざこざから暴言を吐いたことを『おやっさん』と呼び慕っていた山村に利用され、殺人の濡れ衣を着せられてしまう。弁護人となった有働によって無実が証明され無罪となり、彼を尊敬(?)し助手となる[注 11]。有働からは『サル(手長ザル)』や髪型から『鬼太郎』と呼ばれている。自身の少々ズレた言動[注 12]などから度々頭をはたかれているが、意見が一致して微笑み合うこともある。元不良だが現在は好漢であり、良子とともに有働の役に立とうと努力する。被告人だった時は有働や良子にタメ口で話していたが、事務所に入ってからは敬語と敬称を使っている。しかし罪を全く反省せず良子を『ババア』呼ばわりした被告人・佐藤祐樹に対してはヤンキー口調で激昂している[9]。汐留女子学園高校陸上部の名前も知らず話したこともない女子(水川留美)に片想いし、度々学校の外から練習を見ていたが、彼女が死亡し有働がその事件の被告人の教師・矢崎時雄の弁護を引き受けた時には激しく葛藤していた[13]。週末のみだがガソリンスタンドでバイトもしており、熱心な働きぶりと客からの評判の良さが評価され、店長から正社員登用の話を持ちかけられる[9]。良子と同様に有働の姿勢に疑問を持っていたため思い悩み、有働からは厄介払いをするような口振りで話を受けるよう言われたが、最終的にはみんなで事務所を続けるために断った[11]
沢登圭一郎:松重豊(検事)
有働と毎回裁判で対決する高圧的な態度の検事。有働のことは必ず名前ではなく『国選弁護人』と呼ぶ[注 13]。裁判では有働が「無罪を主張します」と言うと、沢登が「国選弁護人!」と呆れた顔で物申し、有働が「有働です」と返すのがお約束[注 14]である。被告人を敵視しており、殺人事件の起訴状の朗読の際には、殺害方法について必ず「残虐かつ非道な方法で」[注 15]と強調する。裁判では「弁護人に買収や隠蔽される恐れがある」などとして、有働に渡した資料からは意図的に証人についての記載を伏せる嫌がらせをする[1]。だが事件の証拠品が「刑事(柴田)の違法捜査[注 16]により不正に得られたものである」という目撃証言によって不採用になりかけた際には、「被害者の魂が浮かばれない」からと証人を丸め込み証言を覆すよう柴田に指示し[9]法の下の平等よりも自身の正義感を貫こうとする。行方不明の証人を捜す有働の代理で神崎が法廷に立った際には、取り乱した佐野に代わって証人尋問を行うも、自身も時間稼ぎのための「異議あり」攻めに遭い辟易、憤慨していた[6]。佐野とともに有働と対決するライバルのような関係だが、劇中の検察側の起訴状の内容における係争では全敗している。
佐野悠美:梅宮万紗子(検事)
沢登の助手の検事。沢登とともに毎回有働と裁判で対決する。彼女も弁護側に渡す裁判資料から情報を意図的に抜いておく嫌がらせをする[14]。有働の代理として神崎が法廷に立った際には証人尋問を任されたが、自身の軽率な発言[注 17]から神崎の「異議あり」攻めに遭ってしどろもどろになり、「そんなお粗末なことでは夜中までかかっても終わらない」という挑発に乗ってさらに取り乱してしまい、沢登から交代を命じられた[6]
柴田隆介:金田明夫(刑事)
汐留警察署の刑事。階級は巡査部長[15]。沢登同様、有働が弁護人になる事件を毎回担当している。有働とは基本的に相反する立場であるため、彼と話す時には嫌味な言い回しをするが、有働が刺殺体とはいえ事件の容疑者を見つけた際には「捜査が大進展したので2週間ぶりに家に帰れる」と笹本共々感謝している[16]。有働の事務所が嫌がらせに遭った際には「敵だから形だけは見回りや警護をする」と言っていたが、暴力的な被害は有働のような大柄な男性ではなく女性である良子に向くと察し彼女を警護していた。実際に良子が襲われたところに現れ暴漢を制し、病院に駆けつけた有働に「昔、同じ失敗をしているそうじゃないか」と指摘する[5]。有働が申請した証人が裁判所内で殺害された際には、ショックを受けた有働の責任感の無さげな発言に対し瞬間的に怒りを露にした[6]。しかし内心では有働の手腕や信念を認めているのか、最終話では「自分が取り調べた被告人の供述に嘘があるならばそれを知りたい」と言い、事件に関する鑑識の報告書を有働に渡している。
笹本弘:加藤厚生(現・加藤厚成)(刑事)
柴田と行動する若手刑事。良子が暴漢に襲われた際には柴田とともに現場に現れ、拳銃を向けて暴漢を制した[5]。前述の最終話での柴田の行動に対しては「敵に塩を送りすぎるのではないか」と言いつつもどこか納得しているような表情をしていた。
岡田智弘:白国秀樹(弁護士会職員)
日本弁護士会の職員。神崎の部下もしくは後輩らしき立場の人物。有働が裁判に不在の際、法廷で代理の国選弁護人として神崎を紹介した[6]
花岡清十郎:大滝秀治(前科132犯の大泥棒
第3話より登場。元泥棒で、有働百合が最後に弁護した人物。通称『博士』。懲役10年の刑期を終え現在は真っ当に生きているが、「することがない」と言って突如として有働弁護士事務所に出入りし、捜査に協力するようになる。神出鬼没であり、甘党である。普段は好好爺然としているが、話を聞かない良子に急に激怒したり[17]、赤倉に酒を強引に勧める一面もある[11]パチンコが得意で、度々大勝しては換金したり景品のお菓子と交換している。泥棒仲間に関する知識を有働たちに提供したり[16]、事件現場のドアチェーンを外から掛け外しができるかを確認した[注 18][17]他、事件解決のヒントになる発言をすることが多い。百合や美智子とは親しくしており、特に自身の弁護を担当し泥棒を辞めるよう約束させてくれた百合には深く感謝している。百合を殺害した吉野一臣を恨んでおり、実は有働の事務所に出入りしていたのは、吉野が刑務所から出所する旨の連絡を待って彼に復讐するためであった。
神崎美智子:浅野ゆう子(弁護士会職員・弁護士)
日本弁護士会でそれなりに高い地位につく職員。有働百合の姉である。毎回有働に報酬の少ない国選弁護の仕事を依頼するが、妹を亡くす原因を作った有働をあまり良く思っておらず、半ば強制的に引き受けさせている。しかし有働のやり方に無理解というわけではなく、自身が顧問弁護士を務めていた滝田食品工業の滝田氏に関する資料を提供したり[17]、代理として法廷に立ち時間稼ぎをしたり[注 19][6]、真相にたどり着けるようそれとなく助言をしている[9]。有働からは『お義姉(ねえ)さん』、花岡からは『みっちゃん』と呼ばれている。有働の事務所が嫌がらせに遭った際に柴田たちが良子を警護していたのは、柴田と同様に暴力的被害が良子に向くことを懸念した神崎が、有働の過去を明かした上で警護を依頼したためでもあった[5]。良子から有働の過去について尋ねられた際には、「自分の裁判のとばっちりで人を死なせた」と語るも、すぐに冗談だと言ってはぐらかしている[10]。有働が担当する事件の巻き添えで誰かが傷付くごとに彼を責めるが、「弁護士として間違ったことはしていない」と一貫した返答をされている。10年前と同じく警察の不当捜査で無罪を主張する有働に「百合にも(間違っていないと)胸を張って言えるのか、自分の決断に胸を張れるのか」と問うと「自分に胸を張れたことはただの一度もないが、ここでひよったらそれこそ顔向けが出来ない」と言われた[9]。最終話では、10年前に妹を殺害した吉野一臣が再び起こした事件の証人として証言台に立ち、互いに憎い相手であるはずの吉野を弁護する有働と対峙する。一度は事実を述べずに退廷しようとするが、有働から「10年前、殺人を犯したことが明白な被告人を無罪放免にしても良いものか悩み、初めて百合に自身の裁判の相談した際、『人を裁くことが許されるのは事実だけ』と助言された」ということ、そして「10年経った今でも、吉野を死刑台に叩き込むかこの手で八つ裂きにしたいほど憎んでいるが、それをしないのは世界中から憎まれても恨まれても、百合からだけは軽蔑されたくないからだ」という告白を受け、涙を浮かべながら事実を述べようと思い直した。


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