書道
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この項目では、芸術としての書道一般について説明しています。律令制の大学寮にて教えられた書道については「書道 (大学寮)」をご覧ください。
風信帖空海京都東寺蘭亭序』(部分)王羲之

書道(しょどう)または書(しょ)とは、書くことで文字の美しさを表そうとする東洋の造形芸術である。カリグラフィーの一種。中国が起源であり従来より漢字作品があるが、日本語圏においては漢字から派生した仮名、朝鮮語圏(朝鮮の書芸)ではハングル、ベトナム語圏(ベトナムの書法(英語版))では同じく漢字から派生したチュノムローマンアルファベットを使用するクォック・グーなどでも創作活動が行われている[1]。2009年に中国の書道が、ユネスコ無形文化遺産に登録された。

本項では主に中国語圏及び日本語圏の書道について述べる。それ以外の文字・地域については書 (造形芸術)を参照。
概説玉泉帖』(部分)
小野道風

文字ははじめ実用として生まれたが、文化の進展につれ美的に表現する方法が生まれた。この美化された文字を書という。書道とはこの文字の美的表現法を規格あるしつけのもとに学習しながら実用として生活を美化し、また趣味として心を豊かにし個性美を表現していくことである。そしてその学習過程において人格を練磨し情操を醇化していく。よって書道は人間修養の一方法であり、古来中国では六芸の一つとして尊崇されてきた。[2]

書道は主に毛筆を使いその特徴を生かして紙の上に文字を書く。その技法(書法)には、筆法間架結構法布置章法があり、それぞれに様々な方法が編み出され、書体書風などによって使い分けられている。技法の習得には色々な教育機関を通じて書家に師事し古典を中心に学習し、書道展などに出品しながら技量を高めていくのが一般的である。

大作などの特殊な場合を除いて文化圏により書字動作に違いがみられ中国では高机に向かって立ったまま書くことが慣習であるが、日本では正座してしたためることが通例となっている。
歴史中秋帖王献之『本能寺切』(部分)藤原行成書詳細は「中国の書道史」、「日本の書道史」、および「日本の書流」を参照

書道史は美術に関する史学の一部門であり、本源である中国の書道史と傍系である日本の書道史の2つに大別することができる。その書道史において現存する筆跡がもっとも重要な資料として活用され、その筆跡のもっとも重要な点はいつの時代に誰が何の目的で書いたかということである[2][3]
書人
中国詳細は「中国の書家一覧」を参照

称号書家
書聖王羲之
草聖張芝(草書)・張旭(狂草)
二王王羲之(大王)・王献之(小王)
二大宗師王羲之・顔真卿
古今の三筆王羲之・鍾?・張芝
初唐の三大家欧陽詢虞世南?遂良
初唐の四大家欧陽詢・虞世南・?遂良・薛稷
唐の四大家欧陽詢・虞世南・?遂良・顔真卿
宋の四大家蘇軾米?黄庭堅蔡襄
楷書の四大家欧陽詢(欧体)・顔真卿(顔体)・柳公権(柳体)・趙孟?(趙体)
四賢張芝・鍾?・王羲之・王献之

日本詳細は「日本の書家一覧」、「日本の漢字書家一覧」、および「日本のかな書家一覧」を参照

称号書家
三筆空海嵯峨天皇橘逸勢
三跡小野道風(野跡)・藤原佐理(佐跡)・藤原行成(権跡)
書の三聖空海・菅原道真・小野道風
世尊寺流の三筆藤原行成・世尊寺行能世尊寺行尹
寛永の三筆本阿弥光悦近衛信尹松花堂昭乗
黄檗の三筆隠元隆g木庵性?即非如一
幕末の三筆巻菱湖市河米庵貫名菘翁
明治の三筆中林梧竹日下部鳴鶴巖谷一六
昭和の三筆@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}日比野五鳳手島右卿西川寧[要出典]
近代書道の父日下部鳴鶴
現代書道の父比田井天来

筆跡

中国の筆跡は中国の筆跡一覧を、日本の筆跡は日本の書道史の各時代を、墨跡は禅林墨跡をそれぞれ参照のこと。
書論

書論とは書道に関する理論のことで、一般にはその著作物を指し書論書ともいう。

芸術はまず物作りから始まり、あとから理論が体系付けられてくる。長い書の歴史の中で文字を書くという行為が造形芸術となり、中国・日本で書道に関する理論が展開された。中国の場合、文字や書体の起源から始まり、書法、書品などを述べることが多く、初期の書論においてすでに書の本質的な価値が論じられている。これに対して日本の書論では書式や故実が語られ、中世・近世は特に家の格式や書風を伝えることの価値が重視された[4][5][6]。詳細は「日本の書論」および「中国の書論」を参照

現存する中国最古の書論は、後漢時代に著された趙壱の『非草書』である。日本最古の書論は、唐様では空海の『遍照発揮性霊集』(空海の弟子・真済が空海生存中に編集)、和様では平安時代後期(1177年以前)に著された藤原伊行の『夜鶴庭訓抄』とされる。また藤原教長の口伝を藤原伊経が記録した書道秘伝書『才葉抄』も1177年頃のものである[7]
基本用具古典(九成宮醴泉銘古典の学習(臨書)
用具

毛筆による書道の場合、が最低限必要な用具であり、これらは文房四宝と呼ばれる。墨が固形の場合、も必要となる。このほか、毛氈と呼ばれる下敷きも多用される。

文房四宝硯絵画におけるパレットと用途は同じである。墨を磨る、或いは墨汁をためておく役割を果たす。通常、石材が用いられるが、中には陶器や漆器などで出来たものもある。近年の学童用としては、セラミックやプラスチックで出来たものも使われている。
などの動物の毛をまとめての柄の先に取り付けたものが一般的である。ほかに、マングース孔雀などもある。楷書用の大筆は八分目までおろし、行草用は根本までおろして使うのが良いとされる。小筆は半分以上おろさない方がよい。
紙大量生産された書道用紙が多く用いられるが、高級なものでは画仙紙和紙なども使用される。
墨インクである。植物油石油などので固め、保存性を高めたものが市販されている。煤を植物油や石油から採ったものを「油煙墨」、松から採ったものを「松煙墨」という。また、液体として墨汁も多用される。


文鎮 - 紙を固定するための重りである。大きさや重さに特に制限はない。

古典

書の古典とは、先人たちの努力と創意の積み重ねにより生まれた美しい筆跡であり、この古典を学ぶことが最も正統な書の学習とされる。書を究めることは容易ではないが、古典を学び先人たちの書とその変遷を知ることにより学書者に指針を与え、さらに作品の深さや心の高さなど独りでは到底到達できない境地まで引き上げる効果が期待できる[8]。古典は数多くあるが、最初に学習すべき各書体の基本的な古典は通常以下のものとされる。

楷書九成宮醴泉銘孔子廟堂碑[9]
行書集王聖教序蘭亭序[9]
草書書譜[9][10]
隷書乙瑛碑曹全碑[9]
篆書泰山刻石石鼓文[9]
かな高野切第一種高野切第三種[9]

臨書

手本を見ながら書くことを臨書(りんしょ)といい、古典などの学習手段とされている。臨書には、形臨(けいりん)、意臨(いりん)、背臨(はいりん、暗書(あんしょ)とも)の方法があり、それを用いて技術・書作の原理を習得し、創作活動への自己の成長を図る。対象となる手本の全部を臨書することを全臨といい、その一部の臨書を節臨という[11][12]。臨書は古来から行われており、奈良時代光明皇后による王羲之の『楽毅論』の臨書が正倉院に現存する。臨書に対し、他人の書を参考にしないで、自分で創意工夫して書くことを自運(じうん)という[13]

形臨字形を真似することに重点を置いて書く。手本にできるだけ忠実に字形や用筆法だけを模倣し、もっぱら技術面の習得を図る。
意臨筆意を汲みとることに重点を置いて書く。作品が生まれた時代背景や作者の生き方、精神性まで模倣する。
背臨手本を記憶した後、手本を見ないで記憶を頼りに書く。その書風を自分のものとして他の作品にも応用していく。

技法詳細は「書法」を参照
学校教育
中国

中国では書法(sh?f?)と呼ばれ、初等教育で指導される。簡体字移行後も繁体字での書道教育も模索された時期があるものの、政策としての簡体字推進に矛盾することから現在は簡体字の指導で統一される。硬筆ボールペンなどの書道教育も試みられている。また、中国各地に書法協会が存在し、公教育から離れた立場で書道の発展に貢献している。
日本教室
小学校・中学校

日本では国語科の書写として、小学校3学年 - 6学年と中学校全学年の授業での毛筆による指導が定められている。

GHQ時代には1951年まで禁止命令が出ていた。1971年に小学校での必修化が復活した[14]。戦後は基本的に新字体で行われる。
高等学校

高等学校では音楽・美術などと並び、書道が芸術科の選択科目として配置されている。

書道科(専攻・コース等)を設置している高等学校(選択科目としてのコースを除く)には、以下のものがある。

埼玉県立大宮光陵高等学校 書道科

埼玉県立伊奈学園総合高等学校 芸術系 書道

埼玉県私立本庄第一高等学校体育・芸術専攻 書道

静岡県立沼津西高等学校 芸術科 書道専攻

静岡県私立浜松学芸高等学校 芸術科 書道課程

静岡県私立浜松学院高等学校 普通科 書道コース


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