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曲技飛行(きょくぎひこう、英: aerobatics エアロバティックス)とは、航空機によって普段は行わない特別な飛び方をすることを広く指す用語である。曲芸飛行、アクロバット飛行などとも称される。
英語の「aerobatics」という表現は、「aero=空中の」という語と「acrobatics=アクロバット」という語からつくられた表現である。
観客を楽しませるための航空ショー型と、技能を競う競技型の2種類に分かれる。航空ショー型は編隊飛行、スモークで空中に模様を描く、模擬空中戦などを行う。競技型は国際航空連盟が管轄する選手権や民間主催の大会が行われており、タイムを競うエアレース型と技の難易度や完成度を競うエアロバティックス型にさらに分かれる。
曲技飛行を分解し、個々の曲技や動き方(マニューバ)に着目する時には、エアロバティック・マニューバと呼称される。
歴史イギリスのUtterly Butterly(英語版)によるボーイング・ステアマン モデル75を使用した演目。ウィングウォークも同時に行われている。
第一次世界大戦終結後の複葉機の時代から存在しており、長い歴史を持つ。
第一次世界大戦で職業パイロットとして空中戦を経験しながら高い飛行技術を習得したものの、戦争終結後の平和と戦間期の軍縮志向から職にあぶれてしまった元軍人パイロットたちが、その技術を生かして航空機による曲芸を披露しつつ各地を巡業したことから、発展してきた。こういった経緯から、比較的早い段階から航空機に馴染んできたヨーロッパやアメリカなどの欧米圏では広く知られるものとなっており、軍民を問わず曲技飛行隊も多数存在している。
かつては飛行中に複葉機の翼の間を歩いたり隣の機体に飛び移る「ウィングウォーク」が行われていたが、現代では翼に体を固定し演技するスタイルが主流である[1]。
日本の航空法では第91条で規定されている。 操縦士には必須の技能ではないため、試験では曲技の技術の訓練は行われない。 多くの軍隊では危険回避や姿勢が崩れた状態から立て直す技術を学ぶため、基本的な曲技を訓練している。曲技飛行隊でなくても、航空祭などでは飛行教官が練習機で技を披露することも多い。 アメリカでは操縦資格を取得済みの者に曲技飛行の訓練を施す専門の学校が多数存在しており、室屋義秀のように技術を学ぶために留学する者も多い。実家の航空学校内に曲技専門の学校を設立したマイケル・グーリアンなど、曲技飛行士の多くは曲技飛行の教官としても活動している。
訓練
曲技の種類
ハンマーヘッド (Hammer Head) / ストールターン (Stall Turn)
垂直に立てた金づちの頭(ハンマーヘッド)が横向きに回転し、真下を向く様子に似ていることから名付けられた。垂直上昇から空中に静止し、そのまま真横に失速反転する。
テールスライド (Tail Slide)
垂直上昇姿勢から空中に静止し、そのまま元の経路を上向き姿勢のままバックして後ろ向きにU字を描いた後、垂直降下する。
キューバンエイト (Cuban Eight)
8の字の軌道を描く曲技。垂直方向ではバーティカルキューバンエイトと呼ぶ。
ナイフエッジ (Knife Edge)
90度バンクした姿勢での水平直進飛行。水平飛行を維持するため、機首はやや上に向ける。
ハートループ (Heart Loop)
縦宙返りの頂点部分で背面状態から360度ロールし、再びループを継続することで軌跡がハート型を描く。複数機の場合はもう1機がハートを貫くようにスモークを描く。本来は宙返り中にロールすることで周囲を確認するための空戦機動。