暫定2車線
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暫定2車線で供用されている自動車専用道路の一例(帯広広尾自動車道

暫定2車線(ざんていにしゃせん)は、4車線以上で計画された道路のうちの2車線のみを暫定的に供用すること、およびその区間の道路の形態。車線を4車線とする場合に比べて、限られた期間や費用で建設できるため、供用時に交通量があまり見込まれない道路において採用されることが多い。

なお、暫定2車線の「2車線」は、往復合計の車線数を表す。これは法令[1]における車線の数え方と同じである。以下、当記事で車線数は往復合計の車線数で表記する。
日本
概要

4車線以上で計画された道路について、当面の交通量が少ない場合に、2車線のみを暫定的に供用させたものが暫定2車線道路である[2]。道路は早期に開通させた方が沿線および周辺地域にとっての道路交通に好影響を及ぼすことの方が多いため、将来の交通量増大を見越して4車線以上に計画された道路を、とりあえず現在の交通量の実情に合わせて開通時に2車線道路で建設して早期開通させるものである[3]

大抵は、交通量増大時に4車線に改築できるように、道路用地をあらかじめ確保しておくが、地権者からの用地買収がスムーズに進まなかった場合に、やむを得ず暫定2車線で開通させるというケースもある[4]上信越自動車道の碓氷軽井沢IC - 更埴JCT間のように交通量が見込めながらも(1998年長野オリンピック開催に間に合わせるため)早期開通を優先させるために採用された例もある。

日本の高速道路のほか、一般道路においてもしばしば採用されている。計画が4車線であるバイパス道路道路構造令第3条第2項の、第3種1級や第3種2級の道路など)では、街路事業や大都市内の道路でない限り、暫定2車線で供用されることがむしろ普通である[注釈 1]

暫定2車線で供用された道路には、片側1車線ずつ完成させた道路である両側暫定方式中央暫定方式と、片側の2車線だけを完成させて反対側の2車線の建設を後回しにさせた片側暫定方式がある[4]。片側だけ2車線で先行して開通させた片側暫定方式の道路は、トンネルや橋梁でよく採用される手法である[4]

最高速度ガイドポストによる簡易分離区間で70 km/h以下、両側暫定区間やワイヤロープによる分離区間で80 km/h以下に制限される[5]。将来的には4車線への拡幅を前提とした設計のため用地費は縮減できず、通常の2車線の道路と比べるとコストが割高となるが、初期投資額が抑えられるメリットがあるので、交通量がさほど見込めない地方の高速道路では暫定2車線はよく採用される建設方式となっている[4]。また、トラックなどの低速車を追い越しするため、付加追越車線が設置されることがある[注釈 2]。交通量が少ないなどの理由で4車線化されていない区間が、有料道路の無料開放などによる交通量の急激な増加によって、渋滞や事故が頻発してしまう問題が見られる。

このように、高速道路で追い越しが常時できない2車線で運用されることは世界的にも珍しく[注釈 3]、制限速度も欧米の国道および地方道の郊外区間(約80 - 110 km/h)よりも低く、このような道路形態が「高速道路」と呼ばれるのは日本など一部の国家のみで、暫定2車線道路が高速道路全体の3割もあり、合計2,537キロメートル (km) を占めるのは、日本の高速道路のみである[6]。2015年(平成27年)の会計検査院決算検査報告において、暫定2車線で供用していることによる経済的損失について検査を行った旨を公表している[7]

類似の例として、6車線で計画された区間で片側を暫定4車線として供用する場合があり、神戸淡路鳴門自動車道大鳴門橋両端にある伊昆高架橋・門崎高架橋(兵庫側)および亀浦高架橋(徳島側)で採用されている。伊昆高架橋・門崎高架橋および亀浦高架橋は3車線分の空間に4車線を設けているため車線幅が狭く、この高架橋がある淡路島南IC - 鳴門北IC間は高速道路ながら70 km/h制限となっている。淡路IC - 津名一宮ICも6車線で計画され、暫定4車線で供用しているが、こちらは両側暫定方式(6車線化の際に追越車線となる部分および中央分離帯盛土または暫定緑化)である。このほか、新東名高速道路新名神高速道路でも暫定4車線区間が存在する。

なお、将来の交通量が少ない場合には、完成2車線(かんせいにしゃせん)という形態がある。これは、4車線への拡幅を前提としない方式であることを強調するために使われる用語であり、「暫定2車線」の概念とは異なるものである(後述)。

この他、メンテナンスや事故復旧などの工事のために、工事期間中に限り暫定2車線供用とする場合もある。
形態
片側暫定方式ポストコーン(参考)

通常の暫定2車線はこの形式である。片側(下り線または上り線)のみを建設して、完成後は2車線対面通行として供用する。4車線へ拡幅する場合は、改めて片側(上り線または下り線)を建設する。

トンネル高架橋をあらかじめ4車線分作っておく必要がなく、4車線分が用地取得できなくても2車線分が用地取得できれば着工可能なため、はじめから4車線で供用する場合に比べて工期や工費の削減効果が期待できる。また、将来的に4車線にする場合でも既存区間の大規模な改修工事を余儀なくされることは少ない[注釈 4]。そのため、地方における高速道路の大半で用いられている。

4車線移行の過渡期には、一期線・二期線それぞれを片側ずつ供用しながら一期線の改修を実施するが、拡幅対象区間の一部または全線で二期線での対面通行を実施した区間も存在する[注釈 5]
高速自動車国道のセンターポール

高規格の高速自動車国道は追い越し距離が過大となるため、中央線にセンターポール(ガイドポスト)を設置し、運転者の意図による追い越しを物理的に困難にしている。中央自動車道八王子 - 河口湖の開通当初(1970年頃)においては追い越しが禁止されておらず、センターポールも未設置だったため、追い越しのため対向車線へ移ったものの、対向車両と正面衝突する交通事故が多発した[8]

その後、暫定2車線区間では追い越し禁止とし、センターポールも設置されたが[8]、ハンドル操作の誤りや高速道路催眠現象やスリップで、対向車相互の正面衝突事故が発生する危険性が高く、死亡事故も多発しているため、後述のワイヤーロープなどへの切り替えや4車線化が進められている。
ワイヤロープ

2017年春より全国の暫定2車線区間約1,000 kmのうち、約100 kmの中央分離帯にワイヤロープを試行設置すると発表した。これは、命を守る緊急性に鑑み、緊急対策として、センターポールに代えてワイヤロープを設置することによる安全対策の検証を行うというもの。暫定2車線の高速道路での正面衝突事故が多い状況を受け、安全性向上が図られるとし、検証結果を踏まえ本格設置するとしている[9]NEXCO3社は、2017年3月1日に具体的な試行設置区間を発表した[10][11][12]。同年4月から順次設置を開始している。

以下に、試行設置区間を道路ごとに起点に近い方から列挙する。

道路箇所延長出典
道央自動車道落部IC - 八雲IC8.0 km[10]
八雲IC - 国縫IC6.4 km
黒松内JCT - 豊浦IC6.6 km
道東自動車道夕張IC - むかわ穂別IC3.0 km
むかわ穂別IC - 占冠IC2.0 km
秋田自動車道北上西IC - 湯田IC2.2 km


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