星表(せいひょう、star catalogue )は恒星目録ともいい、恒星の位置や等級、スペクトル型、視差といった値や特性を記載した天体カタログである。現代の天文学では、恒星はいずれかの星表の番号で表される。長年にわたって様々な目的のために多くの星表が編纂されてきたが、以下では代表的なものについて取り上げる。現在使われている星表のほとんどは電子フォーマットで入手可能で、アメリカ航空宇宙局 (NASA) の Astronomical Data Center などからダウンロードできる(外部リンク参照)。
歴史上の星表
ヒッパルコスの星表(紀元前2世紀)
詳細は「ヒッパルコス」を参照著書が現存しないため正確なところは不明だが、46星座を設定したとされる。また、紀元前300年頃に書かれたティモカリスやアリステュロス
バイエルとフラムスティードが星表に収録した恒星は二人合わせても数千個に過ぎなかった。理屈の上では全天星表は空の全ての恒星を網羅しようとするものだが、実際の空には文字通り、星の数ほど恒星が存在し、望遠鏡を使えば数十億個もの星を分解することができるので、全てを載せるのは不可能である。よって一般の全天星表はある決まった等級よりも明るい恒星全てを収録することを目指して作られる。
主な全天星表とその略称は以下の通りである。
ヘンリー・ドレイパーカタログ (HD / HDE)詳細は「ヘンリー・ドレイパーカタログ」を参照
『ヘンリー・ドレイパーカタログ』 (Henry Draper Catalogue) は1918年から1924年にかけて発行された星表である。約9-10等までの全天の恒星をカバーしている。恒星のスペクトル型を大規模にサーベイ観測して収録した初めての試みであった。
この星表はハーバード大学天文台のエドワード・ピッカリングの指示の下で、アニー・ジャンプ・キャノンとその同僚によって編纂された。このプロジェクトはヘンリー・ドレイパーの未亡人から資金の寄付を受けたため、その功績を称えて完成した星表に彼の名前が付けられた。
HD 番号はバイエル符号やフラムスティード番号を持たない恒星の名前として今日でも広く使われている。1 - 225300 までの番号は初版に収録された恒星で、1900.0 年分点での赤経順に番号が付けられている。225301 - 359083 までは1949年の増補版に収録されている恒星である。この増補版の恒星の番号には HDE の符号を付けることがあるが、通常は混同の恐れがないので初版と同様に HD xxxxxx と呼ばれる。
スミソニアン天文台星表 (SAO星表)詳細は「スミソニアン天文台星表」を参照
『スミソニアン天文台星表』は全天の写真星表(全天の写真を撮影し、それに写っているすべての恒星のデータを記録した星表)で、約9等までの恒星を網羅している。略号はSAO。Sky Catalogue 2000.0 は自身のカタログ番号を持たないが、『ヘンリー・ドレイパーカタログ』と『SAO星表』のカタログ番号が併記されている。最新版での元期は J2000.0 である。『SAO星表』は『ヘンリー・ドレイパーカタログ』の情報に加えて、各恒星の固有運動を載せている。最新版には『ヘンリー・ドレイパーカタログ』と BD 星表(後述)との相互参照が付いている。
掃天星表 (DM)詳細は「掃天星表」を参照
『ボン掃天星表』 (Bonner Durchmusterung) およびこの後継の一連の掃天星表は、写真時代以前の星表としては最も完全なものである。
『ボン掃天星表』自体は1852年から1859年にかけて、ドイツで発表され、この星表は320,000個の恒星の1855.0年分点での位置を網羅しており、後に南天掃天星表 Sudliche Durchmusterung を増補、さらにコルドバでの観測を元に『コルドバ掃天星表』(Cordoba Durchmusterung (CD)、580,000星)を増補し、最終的には1896年の『ケープ写真掃天星表』 Cape Photographic Durchmusterung (CPD) も含めて編纂され全天を網羅した。
天文学者は恒星を表す際に、スペクトルの情報が載っている HD での番号を好んで使う傾向があるが、掃天星表は HD よりも多くの恒星をカバーしているため、HD に載っていない恒星の場合にはより古い掃天星表での名前を用いることがある。