明智小五郎
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明智 小五郎
初登場『
D坂の殺人事件』(1924年)
作者江戸川乱歩
詳細情報
性別男性
職業私立探偵
配偶者明智文代(妻)
国籍 日本
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明智 小五郎(あけち こごろう)は、江戸川乱歩小説に登場する架空の私立探偵[1]
人物

D坂の殺人事件』で初登場。この際の姿は、タバコ屋の二階に間借りしており、喫茶店で冷しコーヒーを嗜む、定職を持たない貧窮書生であった。服装には無頓着で、木綿の着物によれよれの兵児帯、髪はモジャモジャ。にこにこといつも笑顔を絶やさず、痩せ型で、変に肩を振る歩き方をし、興奮するとモジャモジャの髪を掻き回す癖がある(この人物像は、のちに横溝正史が自作の探偵とした金田一耕助によく似ている)。この『D坂の殺人事件』では、着ていた浴衣の派手な縞柄による錯覚から、友人の「私」から犯人と疑われることとなっている。

探偵小説好きで、四畳半しか無い下宿先の自室は、四方を寝る場所もないほどの本の山に埋められている。愛煙家で、歳はこの時点で「二十五を越してはいまい」と劇中察せられている。乱歩は明智の起用をこの『D坂の殺人事件』一作だけにするつもりでいたが、評判が良かったため、『心理試験』で再登場して以後、乱歩の代表的探偵キャラクターとなった[2]

次に登場した『心理試験』は「『D坂の殺人事件』から数年後」と設定され、すでにしばしば困難な犯罪事件に関わり、その珍しい才能を現して、専門家はもちろん一般の世間から立派に認められた名探偵となっており、前作のような書生ではなくなっていた。

次作の『黒手組』では、再び明智はタバコ屋の二階に下宿する書生として登場しているが、次々作の『屋根裏の散歩者』では洋服を着た姿が見られる。これらの作品はすべて大正14年に発表されたものである。この時期の明智は「天才型探偵」として現れ、「僕の興味はただ『真実』を知る点にある」と語り、警察とそれほど連携もしていない。
『一寸法師』以降の明智探偵

明智のこの姿は、翌年大正15年発表の『一寸法師』以後、より一層洗練されたものとなる。ここでは明智は御茶ノ水にある「開化アパート」(架空の建物。モデルは大正14年竣工の「御茶ノ水文化アパート」だとされている)2階の表3室を事務所とし、上海で事件を解決してきたあと暇を持て余す有名な素人探偵として登場。派手な浴衣や木綿の着物姿から、上海で誂えた黒の支那服や、背広を着こなして、貧窮下宿時代からの友人小林紋三から「いくぶん、見栄坊になった」と称される洋装の紳士となっている。

こちらの明智も「モジャモジャの頭」、「にこにことした朗らかな笑顔」、「伯龍そっくりの顔」、「飄々とした行動」、「本に埋もれた生活」は変わらないが、葉巻タバコの「フィガロ」を好み、コーヒーを「カフィー」と呼んで飲むなど、西洋通またはキザなキャラクターとなり、その卓越した推理力から、警察関係者からは「奇人」と呼ばれる存在となっている。

蜘蛛男』での明智は「『一寸法師』事件から3年ぶりの帰国」となっており、インド帰りで登場したその姿は「鼻の高い日に焼けた顔」、「白い詰襟の上下にヘルメット帽」と、「まるで植民地の英国紳士か、欧州の印度紳士」と形容されるものとなっている。続く『魔術師』では、明智の年齢は「30代後半」となっている。

黄金仮面』では、明智は「『蜘蛛男』事件の際はホテル住まいをしていたが、このあと御茶ノ水の開化アパートの2階2室を借り、それぞれ事務所と寝室に使っている」と説明されている。この寝室には、明智の変装用の小道具が収納されている。

この『黄金仮面』など、連載当時の挿絵では、明智は口髭を生やした姿で描かれたものがあった。また、文中では「モジャモジャ頭」と記述されているにもかかわらず、なぜかどの挿絵でも、これに反して整髪した頭で描かれていた。

明智の探偵方法は、証拠の科学的な検証は「好きでない」として専門家に任せ、論理的演繹によって犯行や犯人をあぶり出すという手法である。乱歩は時代時代に明智像を合わせていったため、やがて明智探偵は部下や自動車を使って悪漢を追ったり、「石礫で遠方の標的を正確に打ち飛ばす」、「犯人が気づかないうちにピストルから弾丸を抜いてしまう」といった手品まがいの芸当も見せるなど、現実感希薄な天才・英雄タイプの「行動型探偵」に変身していった。また、探偵手法として「変装」を得意とするようにもなり、この変装は友人の波越警部らにも見破れない本格的なものである。

謎と見ると放っておかれず、仕事抜きで事件に関わっていくことも多い。また国家的事件の解決のために、朝鮮やインドなど海外に出張することも多い。「人間豹」などのおよそ人間とかけ離れた半人半獣とも戦った。この明智探偵は子供向けの「少年探偵団シリーズ」と並行して、戦後も引き続き乱歩の探偵小説で活躍している。
『少年探偵団シリーズ』での明智探偵

1936年(昭和11年)に『少年倶楽部』で「少年探偵団シリーズ」が企画された際、小林少年らの後見人として、明智の名が挙がり、江戸川乱歩もこれに応じてその第一作『怪人二十面相』から明智が登場するようになった。

活動拠点も千代田区采女町(架空の地域。采女町は現在の中央区銀座の旧町名。また麹町区と神田区が合同して「千代田区」が出来たのは1947年)の開化アパート2階に変わり、ここで「明智小五郎探偵事務所」を構えている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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