日産自動車事件
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日産自動車事件(にっさんじどうしゃじけん)とは、
1981年(昭和56年)3月24日最高裁判所判決。
企業における男女別定年の適法性が争われた裁判。日産自動車女子若年定年制事件ともいう。

1985年(昭和60年)4月23日最高裁判所判決。同一企業内に複数の労働組合が存在する場合の取り扱いについて争われた裁判。日産自動車残業差別事件ともいう。

1987年(昭和62年)5月8日最高裁判所判決。労働組合に対する便宜供与について争われた裁判。日産自動車便宜供与事件ともいう。

2018年(平成30年)11月19日にあった役員報酬に係る不正などの発覚事件。

その他

本記事においては、1.および2.について述べる。

3.については労働組合#便宜供与[1]を、4.についてはカルロス・ゴーン事件を、5.については日産自動車#事件・不祥事を参照。
1981年の裁判の概説

最高裁判所判例
事件名雇傭関係存続確認等請求上告事件
事件番号昭和54年(オ)第750号
1981年(昭和56年)3月24日
判例集民集35巻2号300頁
裁判要旨
男女別定年制を定めた就業規則は専ら女子であることのみを理由として差別したことに帰着するものであり、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法90条の規定により無効である。
第三小法廷
裁判長寺田治郎
陪席裁判官環昌一 横井大三 伊藤正己
意見
多数意見全員一致
意見なし
反対意見なし
参照法条
民法90条、憲法14条1項
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原告女性の勤務先会社(プリンス自動車工業)は1966年に被告会社(日産自動車)に吸収合併された。合併前の会社は男女とも55歳定年だったが、新しい勤務先となった会社は就業規則で定年を男性55歳、女性50歳と定めていた。そして、満50歳となった原告は1969年1月末で退職を命じられた。これに対し、女性は従業員である地位の確認を求める仮処分申請を起こしたが、一審・二審とも請求を棄却したため女性が本訴に及んだ。しかし本訴では一審・二審とも男女別定年制が違法であると認めたため、会社側が日本国憲法第14条、民法90条の解釈誤りを主張して上告。女子の定年を男子よりも5歳若く定めた男女別定年制が違法であるかどうかが問われた裁判である。
判決内容

最高裁判所は、会社側の上告を棄却した(昭和56年3月24日第三小法廷判決)。判決で、上告会社における女子従業員の担当職種、男女従業員の勤続年数、高齢女子労働者の労働能力、定年制の一般的現状等諸般の事情を検討したうえ、女子従業員各個人の能力等の評価を離れて、その全体を上告会社に対する貢献度の上がらない従業員と断定する根拠はなく、男女別定年制は性別のみによる不合理な差別を定めたものとして、民法90条の公序良俗違反により無効であるとした。
影響

すでに
三菱樹脂事件昭和女子大事件で憲法の私人間効力については間接適用説が判例・通説となっていたが、本判決もこの流れに沿うものである。

男女雇用機会均等法第6条が男女別定年制の禁止を定めたことで、男女別定年制についての憲法解釈論の問題は生じなくなった。

また、厚生年金保険については当時、支給開始年齢が男女で差があり、これは被告企業の主張の一つでもあったのだが、最高裁判決ではこれについての正当性の判断は示されなかった。

1985年の裁判の概説

最高裁判所判例
事件名不当労働行為救済命令取消
事件番号昭和53年(行ツ)第40号
1985年(昭和60年)4月23日
判例集民集39巻3号730頁
裁判要旨
使用者がその企業内に併存する甲乙二つの労働組合のうち少数派の乙組合員に対して一切の残業を命じていない場合において、それが乙組合との団体交渉において製造部門につき既に甲組合との合意の下に実施している昼夜二交替制勤務及び計画残業からなる勤務体制に乙組合も服することが残業の条件であるとの使用者の主張を乙組合が拒否したため残業に関する合意が成立していないことを理由とするものであつても、使用者において右勤務体制を実施するに際し、乙組合に対してなんらの提案も行うことなく一方的に乙組合員を昼間勤務にのみ配置して残業に組み入れないこととし、また、右勤務体制を実施しない事務・技術部門においても乙組合員に対しては一切の残業を命じないこととする措置をとり、その後乙組合からの要求により右残業に関する使用者の措置が団体交渉事項となつたのちも誠実な団体交渉を行わず、右の措置を維持継続してこれを既成事実としたものであるなど判示のような事実関係があるときは、乙組合員に対し残業を命じていない使用者の行為は、同組合員を長期間経済的に不利益を伴う状態に置くことにより組織の動揺や弱体化を生ぜしめんとの意図に基づくものとして、労働組合法7条3号の不当労働行為に当たる。
第三小法廷
裁判長木戸口久治
陪席裁判官伊藤正己 安岡満彦 長島敦
意見
多数意見全員一致
意見なし
反対意見不当労働行為の成否について、木戸口久治の反対意見あり


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