日本産業標準調査会
[Wikipedia|▼Menu]

日本産業標準調査会(にほんさんぎょうひょうじゅんちょうさかい、: Japanese Industrial Standards Committee、略称:JISC)は、産業標準化法(昭和24年6月1日法律第185号)第3条第1項の規定により経済産業省に設置される審議会

2019年(令和元年)7月1日の法改正以前の名称は日本工業標準調査会(にほんこうぎょうひょうじゅんちょうさかい)であった。
概要
業務
産業標準化法によりその権限に属させられた事項を調査審議するほか、産業標準化及び国際標準化の促進に関し、関係各
大臣の諮問に応じて答申し、又は関係各大臣に対し建議することができる(産業標準化法第3条第2項)。
委員
調査会の委員は、30人以内で組織され、学識経験のある者のうちから、関係各大臣の推薦により、経済産業大臣が任命する。委員の任期は、2年である。会長は委員の互選により選出され、調査会の事務を総理する(産業標準化法第4条、第5条)
臨時委員
特別の事項を調査審議するため必要があるときは、臨時委員を置くことができ、学識経験のある者のうちから、関係各大臣の推薦により、経済産業大臣が任命する。臨時委員は、当該特別の事項の調査審議が終了したときに退任する。(産業標準化法第6条)
専門委員
調査会には、専門委員を置くことができ、会長の命を受け、専門の事項を調査する。専門委員は、会長の申出により、経済産業大臣が任命し、当該専門の事項の調査が終了したときは、退任する。(産業標準化法第7条)
委員の手当および旅費
調査会の委員、臨時委員及び専門委員は、予算に定める金額の範囲内において、手当及び旅費が支給される(産業標準化法第8条)。
国際標準化機関の加盟団体
国際標準化機構 (ISO) に昭和27年(1952年)[1]、国際電気標準会議 (IEC) に昭和28年(1953年)[2]に加入。平成21年度に、調査会が加盟するISOに148百万円を[3]IECに81百万円を[4]、それぞれ分担金として政府の一般会計から支出した。
事務局
経済産業省産業技術環境局基準認証ユニット(基準認証政策課・工業標準調査室・基準認証振興室・基準認証広報室・産業基盤標準化推進室・環境生活標準化推進室・情報電子標準化推進室・認証課・管理システム標準化推進室・相互認証推進室・製品認証業務室・知的基盤課・計量行政室)[5]
平成13年中央省庁再編前後の動向

調査会は平成13年中央省庁再編前には、旧通商産業省工業技術院の付属機関で、事務局は同院標準部標準課が行っていた[6]。平成13年の中央省庁再編の際には、工業技術院の独立行政法人化(産業技術総合研究所)と併せて、行政組織の減量・効率化の観点から同院標準部各課及び調査会の位置づけが問題になった。この点、中央省庁等改革大綱で「通商産業省の工業技術院標準実施部門について、一部民間で対応できない規格作成等を除き、民間移譲」することとし[7]、中央省庁等改革の推進に関する方針で「通商産業省の工業技術院標準実施部門(標準部材料機械規格課、消費生活規格課、情報電気規格課)について、民間等では規格作成ができない等の理由から国が行わざるを得ない業務を除き規格作成業務の民間移譲を進める 」とされた。結局、規格制定部門については国営を維持することとし、併せて平成11年当時は特別の機関である工業技術院に置かれる合議制の機関であった調査会が、府省再編に伴い、審議会と位置づけられることとなった[8]

その後調査会は ⇒『21世紀に向けた標準化課題検討特別委員会報告書』(平成12年5月29日)44頁で、民間主導のJISの原案作成の更なる推進を提言した上で、「我が国では、規格原案作成を専業として行っている民間団体はなく、規格作成・普及だけで独立に採算を立てられる状況にはほとんどないものと考えられる」ことから「今後規格作成における民間の役割を更に強化するためには、引き続き民間における規格原案作成を支援していく一方、民間提案((注:工業標準化法)12条提案)に係る規格原案作成者に著作権を残す等、規格作成に係るインセンティブを高める方策を探る」とした。
調査会の民営化に関する議論

上記の省庁再編以降、日本の標準化行政における調査会の位置づけ、役割、存廃、民営化の可否などについて議論がしばしば行われるようになった。調査会の民営化推進論と国営維持論の主な内容は、次の表のとおりである。民営化推進論者にはメーカー等の出身者が、国営維持論者には経済産業省(旧通商産業省出身者を含む)の関係者が多い傾向にある。

表:調査会の組織に関する議論の概要

会議名・資料名民営化推進論国営維持論
21世紀に向けた標準化課題検討特別委員会

(2000年)

野村堯雄三菱化学株式会社技術部長(当時)
「先進国の中で大臣が規格を制定しているのは日本だけであると聞いている。工業標準化法制定当初は国がイニシアティブを取ることによりかなりの成果をあげたのであろうが、現在はそのような時代ではない。今後は、国が引っ張るより民間の活力を引き出す仕組みを作るべきであろう」「時代が変わっているのだから、いつまでも国が引っ張るのではなく、民間が引っ張って行くようにするべきではないか。」[9]

増田優通商産業省工業技術院標準部長(当時、現:お茶の水女子大学教授)
「『民間にできる』といっても、能力面・品質面・時間面という様々な評価軸があり、その上で受益者である企業が負担すべきであるという考え方ができるのではないか。」「そうした場合にJISCに何が残るかということが問題となるが、まずは国家規格として承認するという役割が残っている。」[10]

齋藤紘一財団法人日本規格協会理事(当時、元:通商産業省工業技術院総務部研究開発官、独立行政法人製品評価技術基盤機構理事長)
「『民間中心の標準化』という方向性は結構である。一方で、民間には500近い標準化団体があるが、資金的・人材的・ノウハウ的には皆ご苦労されていると思うので、引き続き政府の支援も期待したい。民間で作れということになると、これまで工業技術院に蓄積されてきた標準化のノウハウも拡散してしまうのではないか?国際的な標準化委員会に対応するための国が持っていたノウハウなども、継続的に蓄積していくことが重要であろう。」「規格は作成するのみならず、社会に浸透していくということが重要というのもそのとおり。著作権の問題にも関係するが、規格はJISのみならず、ISOASMEASTMなどといった国際規格も実際に使われているということを踏まえるとなると、ある場所でそうした規格を一括して管理し、常に提供可能な体制を整えることが必要となるのではないか?」[11]
『21世紀に向けた標準化課題検討特別委員会報告書案』パブリックコメント

(2000年)

吉木健日本プラスチック工業連盟規格部ISO/TC61国内審議委員会事務局及びISO/TC61/SC11/プラスチック/製品 国際幹事(当時)
今後の標準化システムの完全な民営移管

「今後の日本の標準化システムは、主要規格先進国のシステムである『国家標準化機関が政府機関でない国』(注:下記『主要国の政府と国家標準化機関の状況』の米国、英国、ドイツ、フランス等参照)の形態をとるべきであるとの考えにいたっている。(注:工業標準化)法第12条による民間の自主的な規格が、いまだに担当する大臣の名において制定されているのは、もはや時代にかなった方式ではない。」[12]

日本工業標準調査会21世紀に向けた標準化課題検討特別委員会事務局
「我が国の場合、欧米において存在するような中立性及び財政的自立性をもった標準化団体(SDO)が我が国に存在しない代わりに、民間団体が作成した原案に対し、幅広く民間の有識者を集めたJISCの議決を得た上で、利害関係者のバランスや非差別性の有無に関し主務大臣が最終チェックを行う体制をとっています。これにより実質的に相当程度民間の意見を採り入れつつ、規格の中立性や非差別性を国が最終的に認証するバランスのとれた策定方式といえるというのが当委員会の評価であります。一方、民間団体に著作権を残す等、民間による規格作成インセンティブを一層高めるような政策が(注:『21世紀に向けた標準化課題検討特別委員会報告書案』)第4章第2節(1)において提言されています。」[13]
情報処理学会情報規格調査会 NEWSLETTER

(1998/2010年)

高橋茂東京工科大学長(当時、故人)
標準化は政府の仕事なのか? 国家規格とは?」

「『国家規格』とは 本来 "International Standard" に対応する "National Standard" であって、少なくとも欧米先進諸国では "National Standard" は政府制定の規格ではない。米国のANSIを始め先進国の多くの標準化団体は経費を企業メンバーの会費、規格文書の売り上げなどによって賄っており、政府からは助成金さえもらっていない。…政府が制定していること自体が間違っていて、是正が必要だというのが筆者の考えである。 」「我が国が経済大国になってからも、発展途上国と同様に官庁が加盟していることは許されないのではないか。行財政改革や規制緩和が叫ばれているときに、なぜこれを産業界に戻そうとしないのか。それは官僚が一度手にした権限を自ら放棄することは絶対にないからである。…一方産業界の方も通産省が嫌がることは言い出したがらないし、近視眼的にはISOIECの国際分担金を政府が税金から払ってくれるならその方が得だと考えるに相違ない。 」「政府が標準化に口を出すことを止めてもらい、委託金のようなものも徐々に当てにしないようにして、その間に本当にボランタリーな標準化団体を確立すべきであろう。」[14]

山中豊経済産業省産業技術環境局情報電子標準化推進室課長補佐
「現在有効な法令約7,400件の中で、JIS規格を引用した法令は約360件(5%)もあります。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:39 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef