この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。
日本国憲法 第36条(にほんこく〈にっぽんこく〉けんぽうだい36じょう)は、日本国憲法の第3章にある条文で、公務員による拷問、残虐刑の禁止について規定している。 日本国憲法 条文上は、公務員による拷問についてのみ禁じているが、通常の拷問の定義からすれば、刑法との関係で私人による拷問が認められることとはならない。 条文上、「絶対に」という言葉が用いられることは異例のものと言え、あえて客観的に言うならば、本条が守るべき価値に対して、立憲者の明確で強い意思を示すものと言える(ただし、日本国憲法には改正を不可とする「堅固に保護された条項」は存在しないため、改正は可能である)。 大日本帝国憲法に同様の規定はない。同憲法下でも拷問や残虐刑は認められてはいなかったが、実際には小林多喜二の死など容疑者に施された事例も散見された。特に特別高等警察による拷問、自白の強要をふまえて明文化されたものである。 日本における死刑(特に現行の絞首刑)については、それが残虐刑に当たるものかどうか意見が分かれているが、1948年(昭和23年)に最高裁判所の「死刑制度合憲判決事件」の判決では、「絞首刑は残虐刑に該当しない」と判断している(ただし、この判決は連合軍の占領下において占領軍が東条英機らを絞首刑にしようとしている直前に出されたものである)。 なし 「GHQ草案」 「憲法改正草案要綱」 「憲法改正草案」
条文
第三十六条
公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。
解説
沿革
大日本帝国憲法
GHQ草案
日本語
第三十四条
公務員ニ依ル拷問ハ絶対ニ之ヲ禁ス
第三十五条
過大ナル保釈金ヲ要求スべカラス又残虐若ハ異常ナル刑罰ヲ科スべカラス
英語
Article XXXIV.
The infliction of torture by any public officer is absolutely forbidden.
Article XXXV.
Excessive bail shall not be required, nor cruel or unusual punishments inflicted.
憲法改正草案要綱
第三十二
公務員ニ依ル拷問及残虐ナル刑罰ハ絶対ニ之ヲ禁ズベキコト
憲法改正草案
第三十三条
公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。
関連訴訟・判例詳細は「死刑制度合憲判決事件」を参照
死刑はまさに究極の刑罰であり、また冷厳ではあるが、刑罰としての死刑そのものが直ちに同条における、いわゆる残虐な刑罰に該当するとは考えられない。ただ、死刑といえども他の刑罰の場合におけるのと同様に、その執行の方法などがその時代と環境とにおいて、人道上の見地から一般に残虐性を有するものと認められる場合には、もちろん残虐な刑罰といわねばならぬから、将来、もし死刑について火あぶり、はりつけ、さらし首、釜ゆでの如き残虐な執行方法を定める法律が制定されたとするならば、その法律こそまさに日本国憲法第36条に違反するものというべきである(最高裁大法廷判決昭和23年3月12日)[1]。
関連条文
日本国憲法第31条(罪刑法定主義)
日本国憲法第38条(不利益な供述の強要禁止、自白の証拠能力)
脚注[脚注の使い方]
出典^ “大法廷判決
関連項目
死刑
拷問
日本の刑法(明治40年4月24日法律第45号)
死刑制度合憲判決事件
拷問等禁止条約
歴