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日本全国縦断ロケ(にほんぜんこくじゅうだんロケ)は、テレビドラマ『西部警察 PART-II』から『西部警察 PART-III』にかけて行われた、テレビドラマとしては異例の大規模な地方ロケ。『西部警察』は、全国縦断ロケ以前にもPART-Iで大規模な地方ロケを複数回行っているので、そちらも一部取り上げる。 木暮課長役を演じる石原裕次郎が、解離性大動脈瘤による長期にわたる闘病生活から復帰できた事を記念すると共に、闘病中に自分を応援してくれた全国のファンに対するお礼と、自分の元気な姿を少しでも多くの人に見てもらいたいという気持ちから、この地方ロケがその1つの形となった。 また、爆破やカークラッシュなど視聴者が求めるアクションの過激さを実現するには、東京都内では自由にやりにくくなっているという事情もあった[注 1]。すでにPART-Iの頃から限界が露呈しており、PART-I時代の大規模爆破ロケは、都内では『無防備都市前・後編』『爆発ゾーン』『4号岸壁の殺人』『燃える罠からの脱出』『バスジャック』を数える程度で、その他は山梨や九州、静岡(伊豆、富士山周辺)など地方で行われている。 全国16道府県において全11回にわたるロケを敢行した。ロケ先は北から順に北海道、宮城県、山形県、福島県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、岡山県、香川県、広島県、福岡県、鹿児島県。山形県を除くロケ先は全て当時のテレビ朝日系フルネット局の放送地域となっている[注 2]。 地方ロケにおける車両と建造物の破壊の規模は通常のストーリーの比ではなく、ロケの動員スタッフを含めた人数は100人以上、関係車両数も現地調達の車両を除いても50台以上あった。当時としてはドラマ撮影はもとより、映画撮影以上の規模である。 この地方ロケを石原プロ単独で仕切るには規模が大きすぎるので、ロケ地元の放送局の担当スタッフが候補地の選定、道路使用許可や消防法関係などの事務手続き、エキストラやホテル、食事などの手配、現場の警備などを仕切っていた。また、警備には現職の警察官が動員されることもあった。結果、ロケ地元の放送局にとっては企画立案・ロケ先の選定から実際の撮影・撤収を含め、半年から1年以上を要する一大プロジェクトとなった。地元放送局にとってこの地方ロケの仕切りはメンツの戦いだったようで、第1弾の静岡編で国鉄(当時)静岡駅前にヘリコプターを着陸させたことに対し、他のテレビ朝日系列局が静岡けんみんテレビ(現:静岡朝日テレビ)へ苦情を入れたと言われている。なお、当時の静岡駅は高架化と駅前の再開発事業が行われており、駅前に広大な空き地があることからヘリコプター着陸の許可が下りたとの記述が静岡朝日テレビの社史に記されている。 取り上げるストーリーの題材も、回を重ねるにつれて現実離れしていき、「超合金技術の人材含めた海外流出」(福島ロケ)、「生物兵器強奪」(鹿児島ロケ)、「ミサイル強奪」(山形ロケ酒田)、「ウラン強奪の後核テロ」(宮城ロケ)など、事件のスケールも増していった。犯人側の末路も通常のストーリーではあまり見られなかったクライマックスにおける絶命(大門による射殺、あるいは乗り物や建物とともに爆死)がほとんどで、使用する武器も機関銃や自動小銃(M16)、手榴弾やバズーカ砲(M72 LAWなど)、地雷など、テロ組織や軍隊くらいしか持たない、なおかつ持っている事実が判明しただけでも国家レベルでの事件になるであろうものが頻繁に登場した。警察側の装備は、特に大門が現場へ向かう際のクライマックスシーンにヘリコプターが多用され、鳩村役の舘ひろしはそれを評して「(こっちは朝からずっと撮影なのに向こうは昼過ぎにヘリでパッと来て撃って帰って)スターはいいなあ…」と、2004スペシャルの前宣伝番組において回顧している。 爆破する対象物は、初期は廃屋や遊覧船など地元企業の所有物が多かったが、福島編からは爆破するための建造物をわざわざ造るようになった。大門役の渡哲也は当時の状況を「とにかく船でも何でもぶっ飛ばして、爆破するものがなくなって煙突まで爆破してしまった」と、爆破する対象を探すのに苦労していたことを語っており、それが福島以降の「建造物を作って爆破する」というスタイルになっている。 ロケ先では事前に撮影告知のCMが放送されていたこともあり、各地とも熱狂的な歓迎を受け、観覧客の渋滞に巻き込まれ撮影スタッフが現場にたどり着けなくなるというトラブルも発生した。ドラマ本編にも大勢の観客が映り込んでいるシーンがあり、当時の熱狂ぶりをうかがい知ることができる。 当時のテレビ朝日の土曜日昼の人気番組『独占!女の60分』では、地方ロケ編が放映される前日にアタッカー(リポーター)がロケ現場の舞台裏を取り上げていたほか、ロケ先となる地元局の情報番組でも同様の内容が放送されていた。
全国縦断ロケを企画した背景
概要