日本のTPP交渉及び諸議論
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日本のTPP交渉及び諸議論(にほんのTPPこうしょうおよびしょぎろん)では、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の交渉における日本政府等の動向と、同協定に関する日本国内の諸議論について記述する。
日本の動向
概要

TPPは、一般の多数国間条約と同様の手続を経て締結される。まず、日本政府(内閣)が協定交渉への参加を表明し、関係国との間で交渉・協議を行い、協定の内容について合意が得られたときに採択・署名が行われる。次に、日本国内の手続として、内閣から国会に協定が提出されて承認が求められ(日本国憲法73条3号)、国会の承認が行われる。この後に、批准書の交換がされる場合は天皇が批准書を認証する(同7条8号)が、受諾や公文の交換のような簡略された手続きの場合は、天皇の認証を行わない[1]。TPPは、国内法上手続きの完了を通知する文書の供託となっているため批准書は作成されない見込みである。その後、協定の定めによる条件を満たした上で協定の効力が発生する。TPPについては、2010年3月にP4協定(環太平洋パートナーシップ協定)参加の4ヶ国(シンガポールニュージーランドチリ及びブルネイ)に加えて、アメリカ合衆国オーストラリアペルーベトナムの8ヶ国で交渉が開始された。その後、マレーシアメキシコカナダ及び日本が交渉に参加した。
日本の交渉経緯
2010年(平成22年)

2010年(平成22年)10月1日菅直人内閣総理大臣は、衆議院本会議所信表明演説でTPPへの参加検討を表明し、10月8日TPP交渉への参加を検討し、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の構築を視野に入れ、APEC首脳会議までに、経済連携の基本方針を決定する旨指示した[2]

11月8日経団連米倉弘昌会長は記者会見で「日本に忠誠を誓う外国からの移住者をどんどん奨励すべきだ」と述べ、TPPへの参加とそれに伴う海外からの労働者の積極受け入れを支持する発言をしている[3]

11月9日政府は関係国との間での経済連携強化に向け、農業分野、人の移動分野および規制制度改革分野において、適切な国内改革を先行的に推進する旨閣議決定を行った。農業分野は関係大臣からなる「農業構造改革推進本部」を設置し、2011年(平成23年)6月をめどに基本方針を決定するとした。

11月13日、菅首相は2010年日本APECにおいて、交渉参加に向けて関係国との協議に着手することを正式に表明した[4]

11月30日、政府は「食と農林漁業の再生推進本部」を発足させ、首相、関係閣僚と民間有識者11人からなる「食と農林漁業の再生実現会議」を設置した[5][6]1月21日、同会議は農地集約による生産性向上などを提案している[7]

12月3日、第4回の拡大交渉会合に、日本はオブザーバー参加を打診していたものの、結局この参加は断られた。大畠章宏経済産業大臣は記者会見において、交渉会合の参加国はTPPに関する交渉で忙しく、個別接触も難しかったとしている[8][9]

12月9日経済産業省は「農業産業化支援ワーキンググループ」を立ち上げ、経団連日本商工会議所全国商工会連合会等をメンバーとして農林水産省とは違った立場から農業の産業化を支援する作業部会を始めた[10]
2011年(平成23年)

2011年2月23日、菅首相は、衆議院予算委員会で当時は野党公明党西博義議員から原協定を読んでいるかただされ「手に取って幾つかのページはめくった。概略についての説明を担当部署から受けた」と答弁した[11]

2月26日、政府は公開討論会「開国フォーラム」をさいたま市で開き、玄葉光一郎国家戦略担当大臣アジアの活力を取り込む必要性を訴えた。一般参加者からは農業分野以外の情報を求める声が上がったが、平野達男内閣府副大臣は情報を集めている段階だとして十分な説明ができなかった[12]。3月5日に金沢市で開かれた開国フォーラムで海江田万里経済産業大臣は、TPPは例外なき関税の撤廃が原則としつつ、交渉次第で1-5%の例外品目が設けられる可能性を示唆した[13]

3月11日、東日本大震災東北地方太平洋沖地震)が発生。12日以降に6都市で開催が予定されていた開国フォーラムは中止となった[14]。5月17日、政府は東日本大震災後の経済政策方針をまとめた「政策推進指針」を閣議決定し、TPP交渉参加の判断時期を当初の6月から先送りした[15][16]

10月11日、経団連米倉弘昌会長はTPP交渉への早期参加を求めた[17]。一方、10月24日、全国農業協同組合中央会(JA全中)は、1100万を超すTPP反対署名を政府に提出した[18]。JA全中によるTPP交渉参加反対に関する国会請願の紹介議員は10月25日現在で355人と全国会議員の半数近くにのぼる[19]。11月9日、経団連の米倉会長とJA全中の萬歳章会長が会談したが、主張は対立したまま平行線に終わった[20]地方自治体においては、2010年10月から2011年9月末までの1年間に、42の道県議会でTPP参加に「参加すべきでない」「慎重に検討すべき」「農業の国内対策が必要」などの意見書が採択されている[21]

10月29日仙谷由人民主党政調会長代行は、前原グループの勉強会で「TPP反対でわめいて走っている」と反対者を批判し、関係者やその支援を受ける議員への積極的な切り崩し工作、中立化工作をかける旨を強調した[22]

11月9日、民主党の経済連携プロジェクトチームは、過去数10回の会合を踏まえ、TPPへの参加に関し「時期尚早・表明すべきではない」と「表明すべき」の両論があったが、前者の立場に立つ発言が多かったとし、政府には以上のことを十分に踏まえた上で、慎重に判断することを提言するとした[23]。この提言を受け、野田佳彦内閣総理大臣は予定していた翌10日の記者会見を先送りし、11日両院は予算委員会のTPP集中審議が行われた。同日午後8時、反対意見も未だ根強く議会も二つに割れる中[24]、野田首相は記者会見において、翌12日から参加するホノルルAPEC首脳会合において、TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る旨を表明した[25]

11月11日、野田首相は「交渉参加に向けて関係国との協議に入る」と表明した[25]


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