労働
労働運動
新組合主義
日本における労働組合(にほん における ろうどうくみあい)は、労働組合法を根拠としており厚生労働省が所管する。組合加入率は16.3%(2023年)であった[1][2]。団体交渉は、主に地方または会社レベルで行わており[2]、春闘として独自の形式を持つ[3]。
労働組合は、職業別労働組合から出発し、一般組合を経て産業別労働組合へと発展していくのが、多くの先進工業国でみられた展開過程であったが、日本においては、職能別労働組合から企業別労働組合へという過程が特徴的である。
国会や地方議会の委員会の公聴会や中央官公庁や地方自治体が設置する審議会や懇話会などにも利害関係者としてメンバーを派遣して意見を述べさせることもある(公聴人・専門委員など)[4]。 企業別労働組合を主とし[注 1]、産業、地域、職種等によって組織される欧州諸国の労働組合とは異なる特色を有している。そのうえで、企業別組合では対応できない課題に取り組むため、これらが産業別に集まって連合体(単産)を結成し、通常各産業の主力企業の組合が単産の主導権を握っている。おもな単産として自治労、自動車総連、電機連合、UAゼンセンなどがある。さらに単産が集まって全国的組織を形成している。 日本の全国的連合組織(ナショナルセンター)は、大きく3つに分けられる。 一方、大手銀行や商社などの企業別組合はこうした上部組織のいずれにも加盟せず、企業内の組合にとどまっているものが多い。 所属企業や職種・産業の枠にこだわらず、個人単位でも加入できる労働組合(合同労働組合。このような労働組合は「ユニオン」「一般労働組合」と呼ばれることもある)もあり、企業別組合のない企業に勤務する労働者(大阪地域合同労働組合など)、企業別組合に加入できない非正規雇用の者(首都圏青年ユニオンやフリーター全般労働組合など)、管理職[5]などを主な対象としている。企業別組合が地域を異にしても従業員を同組合に組織しているのに対し、合同労組は、活動の限界を考えて組織範囲を特定地域に限定することが一般的で、近年その紛争解決力の高さで存在をアピールしている。 労働組合推定組織率年組織率 正社員以外の労働者の組合加入資格、組合員の有無(2021年, 割合%)[6]組合加入 現行法は日本国憲法第28条で「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」として定められて、これを受けて労働組合法などの法律が労働組合に関する権利や手続き等を定めている。詳細は「労働組合法」を参照 使用者は労働組合を組織することや加入すること、労働組合を通じて労働運動をすることを理由に不当な待遇をしたり、解雇するなどをすると不当労働行為となる(第7条)。ストライキなどの争議行動は、本来刑事上では騒乱罪(刑法第106条)や威力業務妨害罪(刑法第234条)、民事上では債務不履行(民法第415条)や不法行為(民法第709条)などに相当するが、日本国憲法上で保障される労働運動の権利を守る観点から、正当な争議行為に対しては刑法第35条(「法令又は正当な業務による行為は、罰しない。」)が適用され(第1条第2項、但し、いかなる場合においても暴力の行使は労働組合の正当な行為と解釈されてはならない)、またストライキその他の争議行為によって発生した損害について労働組合又はその組合員に対し賠償を請求することができない(民事免責、第8条)。 組合員の脱退について、規約に定めがない場合であっても組合員は自由に脱退しうるし[7]、脱退には組合の承認を要する旨の規約条項は無効とされる[8]。組合員がその意思に反してその資格を喪失する(除名の制裁)ことは、規約所定の事由及び手続きによらなければならない[9]。 労働組合は、組合員に対する統制権の保持を法律上認められ、組合員はこれに服し、組合の決定した活動に加わり、組合費を納付するなどの義務を免れない立場に置かれるものであるが、それは組合からの脱退の自由を前提として初めて容認されることである。したがって組合から脱退する権利をおよそ行使しないことを組合員に義務付けて脱退の効力そのものを生じさせないとすることは、脱退の自由という重要な権利を奪い、組合の統制への永続的な服従を強いるものであるから、公序良俗に反して無効となる(民法第90条)[10]。したがって組合の内部抗争において執行部派が解雇をちらつかせて反執行部派を抑え込むことは、事実上できなくなっている。 労働組合の大会決議において組合の推薦する特定候補以外の立候補者を支持する組合員の政治活動(選挙運動)を一般的・包括的に制限禁止し、これに違反する行動を行なった組合員は、統制違反として処分されるべき旨を決議することは、組合の統制権の限界を超えるものとして無効と解される[11]。 労働組合はそのリーダーシップにより、組合員らの委任を受け、使用者又はその団体と労働協約その他労働条件等様々な事項について交渉を行う(第6条、日本国憲法第28条)。使用者は労働組合の正当な団体交渉(略して団交と表記する場合もある)には必ず応じなければならず、これに反すると不当労働行為となる(第7条)。一の事業場に複数の労働組合がある場合や、事業場の外部を拠点とする労働組合であっても、使用者はその全てと団体交渉に応じなければならない。弁護士や労働委員会立ち会いによる立会い団交なども存在する。 組合による団体交渉や労使協議により労使双方が労働条件その他に関する事項について書面で合意した場合、この合意には就業規則や個々の労働契約に優越する効力が認められる(第14条~第18条)。
産業セクター
日本労働組合総連合会(連合)
全国労働組合総連合(全労連)
全国労働組合連絡協議会(全労協)
加入率OECD各国の労働組合加入率(従業員に占める割合%)
昭和44年35.2%
昭和49年33.9%
昭和54年31.6%
昭和59年29.1%
平成元年25.9%
平成6年24.1%
平成11年22.2%
平成16年19.2%
平成21年18.5%
平成26年17.5%
令和元年16.7%
令和5年16.3%
資格ありうち、
組合員がいるうち、
組合員はいない組合加入
資格なし
パートタイム労働者37.330.06.862.2
有期契約労働者41.532.97.857.9
嘱託労働者39.629.98.760.0
派遣労働者6.62.24.393.2
法制度
本項で労働組合法について以下では条数のみを挙げる
団体交渉詳細は「団体交渉」を参照
労働協約