日影丈吉
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日影丈吉

日影 丈吉(ひかげ じょうきち、1908年6月12日 - 1991年9月22日)は、日本小説家推理作家翻訳家東京都出身。本名は片岡十一。幻想的な作風で、代表作として長篇小説「真赤な子犬」「内部の真実」「応家の人々」、短篇小説「猫の泉」「吸血鬼」、探偵右京慎策の活躍するハイカラ右京シリーズなど。
経歴
生い立ち

1908年(明治41年)に東京府東京市深川区深川木場町(現在の東京都江東区木場一丁目)で、魚問屋の父と魚小売商の母の間に第三子として生まれる[1]。4歳の時に父が亡くなり、その魚問屋のあった日本橋に移る。1917年に深川に戻り、神田の明治中学に入学、中学時代は金剛社の探偵小説の叢書を愛読し、『童話』誌に投稿して入選したこともあった。関東大震災で家と学校が被災し、一時叔母のいた千葉の谷津海岸に身を寄せた。学校の復旧が遅れたために14歳から語学教室『アテネ・フランセ』に通って外国語を修得し、その一方で『川端画学校』にて西洋画も学ぶ。『アテネ・フランセ』での同期生には今日泊亜蘭がおり、坂口安吾らの同人誌『言葉』にも参加。十代の頃には麻布の霞町天主公教会に通い、ラテン語ギリシャ語古典語の手ほどきを受けた。

卒業後フランスに留学し、帰国後にフランス料理の研究、指導に携わり、また料理文化アカデミー仏語部でレストランやホテルのコックにフランス語を教えるようになる。また『アテネ・フランセ』在学中からフランス文学に親しみ、ネルヴァルなどの影響を受けた。太平洋戦争中は千葉に疎開したが、1943年昭和18年)に応召し、近衛捜索連隊として台湾に駐屯、そのまま終戦を迎える。実家は空襲で焼失し、復員後しばらくは九十九里浜に暮らすが、東陽町に家を見つけて移り、兄の清太とともに教育映画の仕事などを手がける。
作家活動

1949年(昭和24年)、宝石社刊行探偵小説専門雑誌宝石』の「百万円懸賞探偵小説コンクールC級(短篇部門)」へ10年前に書いていた「かむなぎうた」を投稿し、江戸川乱歩に高く認められて二席入選となる。この「かむなぎうた」は『 ⇒別冊宝石』の第2巻3号(通巻6号)に掲載された。しかしアメリカ軍のホテル接収が解除され、事業再開のための従業員の語学教育に駆り出され、『宝石』に短篇を年に1、2作だけ書く時期が続く。1954年に『探偵倶楽部』誌などから依頼が来るようになって、作家活動が本格的になる。『探偵倶楽部』ではハイカラ右京シリーズ、『宝石』では「月はバンジョオ」など杉警部ものを執筆。

1955年(昭和30年)に『宝石』に発表した「狐の鶏(きつねのとり)」が、翌1956年(昭和31年)に第9回日本探偵作家クラブ賞(現日本推理作家協会賞)を受賞。1955年に日本探偵作家クラブの書記長、57年に幹事長、60年に副会長を務め、63年に日本推理作家協会となった後も70年まで理事を務めた。1965年以後は小説の執筆は減り、1972年からは『ミステリマガジン』にエッセイ「ミステリ食事学」などを連載。1974年の『暗黒回帰』で第3回泉鏡花賞にノミネートされるが、これは旧作集であったため受賞は見送られた。

連作小説として、明治時代を舞台に探偵右京慎策の活躍する作品がある。右京は元国際スパイとの噂もある外務省嘱託の紳士で、山高帽子に口髭をたくわえ、細身のステッキを手に登場し、一連の作品はハイカラ右京シリーズと呼ばれる。他に探偵シリーズとして春日検事の事件簿もある。

また翻訳として、ボアロー&ナルスジャックの『ちゃっかり女』を始め、ジョルジュ・シムノンのメグレ警視シリーズ『メグレと老婦人』、ガストン・ルルーのルウルタビイユシリーズ『黄色い部屋の秘密』『黒衣夫人の香り』や『オペラ座の怪人』などがある。

晩年の1989年(平成元年)に白水社から出版した短篇小説集『泥汽車』が、翌1990年(平成2年)に第18回泉鏡花文学賞を受賞。

1991年(平成3年)9月22日東京都町田市原町田の自宅で心不全のため死去。

ペンネームの由来は、『宝石』投稿の頃に家に来ていた富山の薬売りの名を1字変えたもの。俳句は少年時代からの趣味で、中学生の時に『日本少年』誌に入選したこともある。また『童話』誌で短篇小説が入選した。町田市民文学館ことばらんどで、町田ゆかりの作家として資料が展示されている。
年譜

1908年(明治41年)6月12日 - 東京市深川区で生誕。

1949年(昭和24年) - 「かむなぎうた」が『宝石』の「百万円懸賞」二席に入選、『別冊宝石』に掲載し作家デビュー。

1952年(昭和27年) - NHKラジオ第2放送『灰色の部屋』で「かむなぎうた」(「巫歌」)がドラマ化。

1953年(昭和28年)『宝石』10月号で「日影丈吉特集」が組まれる。

1956年(昭和31年) - 「狐の鶏」が第9回日本探偵作家クラブ賞を受賞。


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