日出処の天子
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日出処の天子
ジャンル
少女漫画歴史漫画
漫画:日出処の天子
作者山岸凉子
出版社白泉社

その他の出版社
角川書店

掲載誌LaLa
レーベル花とゆめコミックス
あすかコミックス・スペシャル
白泉社文庫
発表号1980年4月号 - 1984年6月号
巻数花とゆめコミックス全11巻
あすかコミックス・スペシャル全8巻
白泉社文庫全7巻
完全版コミックス全7巻
漫画:馬屋古女王
作者山岸凉子
出版社角川書店
掲載誌LaLa、月刊ASUKA
レーベルあすかコミックス・スペシャル
発表号LaLa:1984年11月号
ASUKA:1985年8月号 - 1985年9月号
巻数全1巻
テンプレート - ノート
プロジェクト漫画
ポータル漫画

『日出処の天子』(ひいづるところのてんし)は、山岸凉子による日本漫画1980年から1984年にかけて『LaLa』(白泉社)に連載された。1983年度、第7回講談社漫画賞少女部門を受賞。
概要

LaLa』1980年4月号から1984年2月号、1984年4月号から6月号に連載された。単行本は花とゆめコミックスから全11巻、角川書店あすかコミックス・スペシャルから全8巻が、文庫版は白泉社文庫から全7巻が、メディアファクトリーより完全版コミックス全7巻が発行された。

厩戸王子(聖徳太子)と蘇我毛人(蘇我蝦夷)を中心に、主人公である厩戸王子が少年時代を経て、摂政になるまでを描く。聖と俗、男と女という矛盾を抱える厩戸王子の圧倒的な存在感に加え、厩戸王子を天才・超能力者・同性愛者として描く斬新さが特徴。厩戸王子には超能力を持っているとでもしなければ説明できないような逸話が『聖徳太子伝暦』などに残っており、これはこうした伝承・伝説を積極的に採用したものである。

1983年度、第7回講談社漫画賞少女部門受賞。夏目房之介は「戦後マンガ史に残る傑作である」と評価[1]。不安定に変化する厩戸王子の表情に注目して、その変貌を「手塚治虫以来日本のマンガに脈うつ男女変身譚および異人変身譚の最大の収穫のひとつだろう」と語っている[2]。こういった表情は実に細かな描線で描かれており、薄い紙に模写したところで「1ミリの何分の1でも線が狂えば表情は変わってしまう」のだという[3]

1984年1月24日付けの『毎日新聞』全国版夕刊社会面に、「え、これが聖徳太子!?」「法隆寺カンカン」などの見出し[4]で、本作品を法隆寺が遺憾に思っているという記事が掲載された。しかし、後に奈良支局の記者による捏造記事であることがわかり、同年2月4日付け紙面に謝罪文が掲載された(虚偽報道#1984年 「日出処の天子」事件 (毎日新聞))。

1984年テレビ東京の「スーパーTV」で、1時間のテレビアニメ3月26日から5夜連続で放送する企画があったが、計画段階で中止となった[5]

2021年9月4日-10月24日大阪市立美術館で行われた千四百年御聖忌記念特別展「聖徳太子-日出処の天子-」にて原画が出展された[6]

2023年1月31日発売の雑誌「昭和45年女・1970年女」の表紙及び特集記事山岸凉子の金字塔『日出処の天子』は永遠の人生書に掲載される[7]
あらすじ

本作は、飛鳥時代を背景に、政治的策謀をめぐらす厩戸皇子に毛人(馬子の長子として描かれている[注釈 1])をはじめとする蘇我家の人々や、崇峻天皇推古天皇らが翻弄される形で話が進んでいく。

ある春の日、14歳の蘇我毛人は天女と見まごう美しい女童に偶然出会い、ほのかな恋心を抱く。それは実は10歳になる厩戸皇子であった。年若くとも非凡なる教養と才能、政治的手腕、威厳を持つ厩戸は並み居る臣下からも一目置かれる存在となる。しかし厩戸は自らが持つ不思議な力ゆえに、実母の穴穂部間人媛に恐れられ疎まれており、母から愛されない事に苦悩していた。同じく厩戸の不思議を感知した毛人は、時折垣間見る厩戸の孤独に心を痛める。尊敬と畏怖と好意を持って厩戸に接する毛人だが、厩戸にとって毛人は自分の持つ超能力を共有できる唯一の不可欠な存在であった。しかし毛人は無意識下でしか超能力を引き出せず、自分の能力を自覚していない。

厩戸の毛人への思いはやがて愛へと変わってゆき、毛人も自分が厩戸に惹かれていることを感じるが、やがて石上神社の巫女であった布都姫と出会い、恋に落ちてしまう。

厩戸は嫉妬に悩まされ、策謀を巡らして布都姫を殺害しようとするが、毛人に気づかれる。それまでの諸事に厩戸の策略があったことを悟った毛人は、厩戸に「二人が結べば万物を自由に動かす力が実現され、この世を意のままにできるから共に生きよう」と説得されるが、毛人は「二人が共に男として生まれたのは一緒になってはいけない運命だからだ」と答え、苦渋の内に厩戸から離れ、布都姫を選ぶ。

作品は厩戸が孤独の中に残される一方、政治的実権を握り、遣隋使を発案するところで終わる。
登場人物
池辺雙槻宮
厩戸王子(うまやどのおうじ)
本作の主人公。女性と見まごうほど美しい。頭脳明晰、冷静沈着。一部の人は彼を弥勒菩薩の変わりと思わせるほどに幼少の頃から超常的な力を持っており、それを他人に悟らせないように日頃ふるまいもするが、いくら隠しても母と毛人の2人だけは彼の特異性を感知してしまう。『日本書紀』や『上宮聖徳法王帝説』などの史料に描かれた「聖徳太子」像とは全く異なる人物造形を施されている。これについて作者は、文庫版2巻に収録された氷室冴子との対談で、「聖徳太子にまつわるエピソードに子供の頃から違和感を持っており、ある時、居酒屋で矢代まさこを相手にそういう話をしていたら、梅原猛の『隠された十字架』を紹介され、翌日それを買ってきて読んで、その時に全てのイメージが出て来た」と語っている。
穴穂部間人媛(あなほべのはしひとひめ)
厩戸の母。他人には感じられない厩戸の超常的な力を感じ得る人物である。ゆえに我が子への愛情よりも恐怖心が勝ってしまい、怖れ意識的に避けている。
橘豊日大兄(たちばなのとよひのおおえ)
厩戸の父。良き家庭人であり物静かな人物。異母妹である穴穂部間人媛を妃としている。訳語田大王亡き後、橘豊日大王として即位するもに侵され、在位2年足らずで崩御する。
来目王子(くめのおうじ)
厩戸のすぐ下の同母弟。両親に愛されて育ち、心優しく素直な性格である。等しく愛する母と兄の間に物心ついた時より流れる確執を感じ、折につけ心を悩ませている。
殖栗王子(えぐりのおうじ)・茨田王子(まぎたのおうじ)
厩戸の同母弟。
田目王子(ためのおうじ)
穴穂部間人媛の再婚相手であり厩戸の義父。穴穂部間人媛より8歳年下で橘豊日大兄皇子と蘇我石寸名の間に生まれた子であり、厩戸にとって異母兄である。父によく似た風貌を持つ。
佐富女王(さとみのひめみこ)
穴穂部間人媛と田目王子の第一皇女、厩戸の異父妹。
蘇我氏
蘇我毛人(そがのえみし)
本作のもう一人の主人公。大豪族・蘇我本宗家の後継者であるが、父・馬子ほどの政治的野心を持たない誠実で善良な人物として描かれる。穴穂部間人媛と並んで厩戸の不思議な力を感知する人物。臣下の立場を超えて厩戸に惹かれ、間人媛との確執により孤独な厩戸の胸の内を慮って心を痛め、本気で心配するなど、対人関係に異常に神経質な厩戸が唯一、心底気を許せる存在である。総領息子であるため、一族の繁栄のためにいずれは政略結婚することを本人も周囲もごく普通と受け止めてきたが、政敵として滅ぼした物部一族の象徴である石上齋宮・布都姫に、ある日偶然出逢った途端に一目で心を奪われ、以後想いを寄せる。
蘇我馬子(そがのうまこ)
毛人の父。朝廷で絶大な権力を握る有力豪族・蘇我氏の本宗家当主。姓(かばね)は大臣(おおおみ)。豊浦に居を構える朝廷随一の財力の持ち主で「嶋の大臣(しまのおおとど)」とも称される。当初は幼い厩戸に対して、その年齢にそぐわない非凡さに苦手意識を持っていたが、成長するにつけますます際立つ天才の名に恥じぬ聡明さや政治的手腕、その博識具合、額田部女王を始め他の臣下からの評価や人気振りを高く買い、本妻との娘である刀自古郎女を嫁がせる。
刀自古郎女(とじこのいらつめ)
毛人の同母妹。非常に美しい容貌を持つ。物部との戦の際、強制的に帰されていた母の里・伊香郷で、複数の男に見せしめに凌辱された結果望まぬ子を宿し、雪の夜に自ら冷たい川に入り堕胎した挙句、数日間死の淵を彷徨うという凄惨な経験をする。そのため心身ともに深い傷を残し、楽しい幼少期を過ごした兄・毛人以外の男性を愛せなくなっていた。蘇我宗家の娘の常として泊瀬部大王の元へ入内する予定であったが、拒絶する余り入内前夜に入水を試みて未遂に終わり、急遽異母妹の河上娘を代わりに入内させることとなる。その後、布都姫の振りをして毛人を騙して契りを結び、毛人の息子を身ごもる。これを知った厩戸に取引を持ちかけられ、形式のみの厩戸の后となって山背大兄王を生む。後に形ばかりの夫である筈の厩戸に惹かれてゆくが…。
十市郎女(といちのいらつめ)
馬子の正妻であり毛人・刀自古郎女の母。物部出身で守屋の兄・物部大市御狩(みかり)を父に持ち、守屋の姪であるため、物部との戦の折には形式上の離縁をさせられ、刀自古郎女と実家である伊香郷に帰される。蘇我宗家の正妻として馬子を支え、母として絶えず兄妹に心を配り、中でも心に深い傷を持つ刀自古を終始心配している。
河上娘(かわかみのいらつこ)
毛人の異母妹。摩理勢の正妻と姉妹である母を持つ。正妻の娘である異母姉・刀自古に敵対心をむき出しにする。


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