旅行代理店
[Wikipedia|▼Menu]
旅行会社

旅行会社(りょこうがいしゃ、: Travel agency)とは、交通宿泊などの要素から構成された旅行商品を、企画・実施、あるいは仲介して販売する会社のこと[1]

法令上は旅行業者(りょこうぎょうしゃ)である。他の呼称として、旅行代理店(りょこうだいりてん)、旅行斡旋業者(りょこうあっせんぎょうしゃ)、ツーリストビューロー: Tourist bureau)[注 1]などとも呼ばれる。店舗を持たないオンライン旅行会社や、ビジネストラベルマネジメント対応の旅行会社に関しても、本項で記述する。
旅行会社の業務

後述の日本の標準旅行業約款に定められた旅行会社の業務を大まかに分類すると以下の通りである。
募集型企画旅行契約旅行会社があらかじめ目的地、日程等の旅行内容及び旅行代金を定めた旅行計画を作成し、パンフレット・広告などにより参加者を募集してその旅行を実施すること。一般にはパッケージツアーまたはパック旅行といわれるものがこれにあたる。

受注型企画旅行契約旅行会社が旅行者の依頼により目的地、日程等の旅行内容及び旅行代金を定めた旅行計画を作成し、その旅行を実施すること。一般には学校の修学旅行や企業の慰安旅行などがこれにあたる。旅行会社ではオーガナイザーツアーということもある。

手配旅行契約旅行者のため、または運送機関や宿泊施設等のために、サービスの提供について代理して契約を締結し、媒介をし、または取次ぎをすること。JR券、航空券、宿泊券等の予約・手配・販売がこれにあたる。

渡航手続代行契約上記1?3に付随して旅行者の案内や手続きの代行等旅行者の便宜となるサービスを行うこと。旅券(パスポート)査証(ビザ)の申請手続き等がこれにあたる。

旅行相談契約旅行に関する相談に応じること。

なお、旅行業法第2条では「専ら運送サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送サービスの提供について、代理して契約を締結する行為を行うもの」は旅行業の業務ではないとしている。したがって、鉄道駅バス停留所付近の売店等で専ら鉄道会社やバス会社に代わり乗車券類を販売する行為、航空運送代理店は旅行業の業務とはみなされず、旅行業の登録は必要ない[2]
日本の旅行会社における登録制度

旅行業法上の旅行業等の区分には、観光庁長官[3] の登録が必要な第1種旅行業、本社所在地の都道府県知事の登録が必要な第2種旅行業、第3種旅行業、地域限定旅行業、旅行業者代理業、観光圏内限定旅行業者代理業および旅行サービス手配業がある[4]

区分取扱業務基準資産営業保証金[5][6]
第1種旅行業海外・国内の企画旅行の企画・実施
手配旅行の企画・実施及びパッケージツアーの代売3,000万円以上前事業年度の取扱額が70億円未満の場合は7,000万円
前事業年度の取扱額が70億円以上2兆円未満の場合は取扱額により8,000万円 - 4億5,000万円
前事業年度の取扱額が2兆円以上の場合は1兆円ごとに1億円をさらに加算
前事業年度における海外募集型企画旅行の取扱額が8億円以上2,100億円未満の場合は取扱額により900万円 - 5,000万円をさらに加算
前事業年度における海外募集型企画旅行の取扱額が2,100億円以上の場合は1,000億円ごとに1,100万円をさらに加算
第2種旅行業国内の募集型企画旅行の企画・実施
海外・国内の受注型企画旅行の企画・実施
手配旅行の企画・実施及びパッケージツアーの代売700万円以上前事業年度の取扱額が7億円未満の場合は1,100万円
前事業年度の取扱額が7億円以上2兆円未満の場合は取扱額により1,300万円 - 1億7,000万円
前事業年度の取扱額が2兆円以上の場合は1兆円ごとに3,000万円をさらに加算
第3種旅行業隣接する市町村に限定した国内の募集型企画旅行の企画・実施
国内・海外の受注型企画旅行の企画・実施
手配旅行の企画・実施及びパッケージツアーの代売300万円以上前事業年度の取扱額が2億円未満の場合は300万円
前事業年度の取扱額が2億円以上2兆円未満の場合は取扱額により450万円 - 1億2,000万円
前事業年度の取扱額が2兆円以上の場合は1兆円ごとに2,500万円をさらに加算
地域限定旅行業隣接する市町村に限定した国内の募集型企画旅行の企画・実施
パッケージツアーの代売100万円以上前事業年度の取扱額が400万円未満の場合は15万円
前事業年度の取扱額が400万円以上2兆円未満の場合は取扱額により100万円 - 1億2,000万円
前事業年度の取扱額が2兆円以上の場合は1兆円ごとに2,500万円をさらに加算
旅行業者代理業所属旅行業者より委託された旅行業務の範囲内のみ基準なし供託金なし
観光圏内限定旅行業者代理業所属旅行業者より委託された旅行業務の範囲内かつ観光圏整備法に基づく観光圏内での宿泊者の旅行についてのみ基準なし供託金なし
旅行サービス手配業国内向けランドオペレーターのみ (2018年1月施行)基準なし供託金なし

旅行業法によると、第1種、第2種、第3種、地域限定旅行業を営む事業者は一定額以上の財産的基礎があることが求められており、また供託所にあらかじめ一定額を供託しなければならない。なお、旅行業法第三章の定める旅行業協会日本旅行業協会または全国旅行業協会)に加入した事業者は、弁済業務保証金分担金として5分の1の金額を納付することにより、これに代えることができる[4]

法的には、各営業所に1名以上の「総合旅行業務取扱管理者、国内旅行業務取扱管理者、地域限定旅行業務取扱管理者」の区分による資格を持つ者の選任と、営業時間中の常駐が必要となる。ただし、観光圏内限定旅行業者代理業は研修修了者で旅行業務取扱管理者の選任の代替は可能である。また、旅行サービス手配業は旅行業法上の「旅行業者等」に扱われていないが[7]、各営業所に1名以上の総合または国内旅行業務取扱管理者もしくは「旅行サービス手配業務取扱管理者」を選任することが義務づけられている[8][9]

2017年3月のてるみくらぶの経営破綻を受け、第1種旅行業者は2018年4月から、観光庁に毎年1回、決算申告書・納税証明書・純資産・取引額の書類提出が、5年に1回行われている旅行業の更新の際にも、公認会計士などのチェックを受けた書類を観光庁長官へ提出することがそれぞれ義務付けられた他、前事業年度における海外募集型企画旅行の取扱額が8億円以上の業者は取扱額に応じて、営業保証金が900万円から5000万円(取扱額が2100億円以上の場合は1000億円ごとに1100万円がさらに上乗せされる)、弁済業務保証金分担金が180万円から1000万円(取扱額が2100億円以上の場合は1000億円ごとに220万円がさらに上乗せされる)がそれぞれ追加負担となる[6]。また第1種、第2種、第3種のすべての事業者に対しても、2018年4月以降、純資産に対して取引額が大きい企業や取引額が急激に増大した企業に対し、日本旅行業協会または全国旅行業協会が立入調査を実施する[10][11]。地域限定旅行業は、前事業年度の取扱額が400万円未満の場合における営業保証金が、100万円から15万円に引き下げられた[6]

なお、旅行を申し込む利用者が、これらのいずれにも登録していない無登録業者と契約した場合、トラブル発生時において、旅行業法その他の関係法令に基づく法的保護は受けられない。また、日本語のホームページを開設しているが日本国内に営業所を持たない海外の企業と契約した場合は、同様に法的保護の対象外となる[12]

第1種旅行業者は、観光庁のウェブサイトから確認が可能である[12]。第2種旅行業者・第3種旅行業者等は、東京都大阪府等、各都道府県のウェブサイトで確認可能となっている[13]
従来型の旅行会社

店舗を通じた旅行商品の販売を行う事業者。英語圏では、Traditional Travel Agency (TTA、伝統的旅行会社)と呼ばれる[14][15]

日本の場合、従来型の旅行会社の業務としては、主に以下が挙げられる。

交通機関乗車券乗船券航空券(これらを総称して船車券と呼ばれる)の予約・手配・発売。(ただし、専ら運送サービスだけ代理して契約を締結する場合をのぞく[16]

ホテル旅館など宿泊施設の宿泊券の予約・手配・販売。

ビザESTA等の申請代行。

パスポートの申請代行(申請書類の簡素化で現在はまれである。)

交通機関や宿泊施設・観光施設などを組み合わせたパッケージツアー募集型企画旅行)の企画、販売、実施。

地方自治体等からの受注によるパッケージツアー(受注企画旅行)の企画、催行。

外貨両替トラベラーズチェックの販売(一部)。

旅行券(商品券)の発売。

旅行保険の代理販売。

旅行雑誌出版など、旅行に関する情報の収集・提供。

旅行会社の業務は、旅行商品の企画造成とその販売の2つの面を持つ。大手企業では両業務を共に行う企業が多いが、企画造成に特化して販売を提携企業に委託するホールセラー専業の企業もある[17]。これに対し、ホールセラーから受託された旅行商品を販売する企業はリテーラーと呼ばれる。小さな旅行会社の営業店舗は、リテールを専門としているケースが多い[18]

日本の旅行業法の規定では、従来型の旅行会社が販売する旅行商品は、募集型と受注型の企画旅行、および手配旅行に分類される。インターネットの普及以前は、遠隔地の宿泊施設や交通機関の手配は、旅行会社を通さなければ困難とされた。

しかし、インターネットの普及以降、個人で容易に手配が可能となったことから、旅行者が、旅行会社を経由せず、宿泊施設や航空会社などと直接契約するケースが増加した。この影響から、日本の旅行業者及び旅行業者代理業者数は、1995年から2015年の間に、約4分の3に減少(旅行業者代理業者数は半減)している[19]

他産業と比較して、旅行業の収益性の低さが指摘されており[19]、このため、従来型の旅行会社は、オンライン販売を併せて行う[19] と同時に、サービスの手厚さを求める需要層に向けて、富裕層[20]シニア[21] を対象とした高品質旅行商品の提供や、目的特化型旅行商品の開発[22] など、差別化されたサービスの強化が図られている。また、JTBなど大手企業を中心に、MICE需要の取り込み[23]、ビジネストラベルへの注力や、地方創生事業への取り組み、国境を越えた事業展開も進められている[19]
オンライン旅行会社

旅行サイト全世界訪問数
(2020年6月)サイト名訪問数
ブッキングドットコム2億5,962万
トリップアドバイザー※2億5,059万
Airbnb1億3,121万
スカイスキャナー※4,640万
エクスペディア4,522万
ホテルズドットコム3,012万
トリバゴ※2,729万
KAYAK※2,615万
アゴダ2,488万
携程旅行网2,401万
*シミラーウェブ調べ[注 2]
*PC経由・スマートフォン経由の合計
*「※」はメタサーチ

旅行サイト国内閲覧者数
(2019年1-12月)サイト名閲覧者数
じゃらんnet6,310万
楽天トラベル5,810万
トリップアドバイザー※4,400万
LINEトラベルjp※3,250万
Yahoo!トラベル※3,190万
エイチ・アイ・エス2,810万
JTB2,690万
フォートラベル※2,560万
ブッキングドットコム2,510万
一休.com2,061万
*日本観光振興協会・ヴァリューズ調べ[24]
*PC経由・スマートフォン経由の合計
*「※」はメタサーチ

エクスペディアブッキングドットコムなどのオンライン販売に特化した企業で、英語圏を中心に、Online Travel Agency (OTA)と呼ばれる企業[1][25]。利用者は、オンライン旅行会社の運営するウェブサイトモバイルアプリ内で、旅行商品の手配を行う。

伝統的旅行会社(Traditional Travel Agency,TTA)の淘汰が進んだアメリカ[1][19] をはじめとして、2010年代に旅行産業における主要プレイヤーとなり、日本においても、楽天トラベルを運営する楽天じゃらんnetを運営するリクルートなど、従来型の旅行会社と異なる企業が、旅行業者としての登録を行い[注 3]、旅行産業の中でウェイトを持つようになっている。世界的には、ブッキング・ホールディングスエクスペディア・グループが、この分野の2大企業となっている。また、各企業でオンライン販売される同内容の旅行商品を企業の枠を横断して旅行者に提示するメタサーチ運営企業が存在感を高めており、世界的にはトリップアドバイザーが代表的企業となっている。

なお、外資系のオンライン旅行会社は、日本国内に営業所を持たないため、日本の旅行業法の定める、旅行の安全の確保及び旅行者の利便の増進に関わる法的義務を負っていない[26]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:98 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef