旅客車
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この項目では、旅客用鉄道車両について説明しています。

乗合自動車については「バス (交通機関)」をご覧ください。

営業用乗用車については「タクシー」をご覧ください。

同じく営業用乗用車については「ハイヤー」をご覧ください。

旅客車の例・側面にある扉から旅客が乗降する

旅客車(りょかくしゃ)とは、旅客の輸送(客扱い)を目的とする車両のことである。

道路交通においても旅客車は存在するが(バスタクシーハイヤーを参照)、当項目では鉄道における旅客車を主題として解説している。

原則として運賃の発生する営業運輸が基本だが、一部には鉄道事業者訓練等に使われる事業用車両天皇などの皇族が利用する皇族用車両なども含まれる。

旅客車には以下のような種類がある。

電車(EC)

新幹線(TEC)


気動車(DC)

客車(PC)

磁気浮上式鉄道(LMC)

旅客車の設備分類

旅客車は、どのような接客設備を備えているかによって分類されている。
座席車詳細は「座席車」を参照

座席車は最も基本的な旅客車で、車内に座席を備えているものである。乗客に着席しての旅行を提供するが、通勤用の車両のように定員の過半数が立席の車両であっても座席車の区分に含まれる。

国や鉄道事業者にもよるが、一等車二等車のように車内の設備によって等級が付けられていることがある。等級の段階数もまた国と鉄道事業者によって様々である。等級に特別な名前が付けられていることもある。等級が上のものから例として示すと、日本のJRにおいては、グリーン車[注 1]普通車韓国韓国鉄道公社においては特室と一般室、中国の鉄道においては軟座車と硬座車、スペインの鉄道においてはクラブ (CLUB)、プレフェレンテ (PREFERENTE)、ツーリスタ (TURISTA) となっている。さらに等級により列車そのものが異なっていることがあり、例えばペルー・レイルマチュ・ピチュへ向かう観光列車は、等級が上のものからハイラム・ビンガム号 (Hiram Bingham)、ビスタドーム号 (Vistadome)、バックパッカー号 (Backpacker) となっている[1]

ヨーロッパでは、一等車が地方の閑散路線や、時には都市の通勤路線にまで連結されていることがある。通勤路線の一等車は二等車と設備的に差がないことがあるが、それでも一等車が設定され利用者があるのは、ヨーロッパの階級社会の伝統に根ざしているとされる[2]。運賃制度上、基本運賃に一等車料金を足すのではなく、二等運賃と一等運賃が別立てになっている場合には、一等の運賃を収受したからには一等車を運行しなければならないという理由もある。さらに、上位の等級に乗車するような階級の人間の居住地・勤務地や官公庁の所在地などを考慮して連結されることもある[3]

乗降用のドアトイレ洗面所などがデッキにあり、壁と扉で客室と区切られている形式と、区切られていない形式がある。前者は特急急行用などの優等列車を中心に用いられる。

また客室内において、座席同士が特に区切られずに並べられている形式を開放座席車(オープンサルーン)といい、数人用の部屋に区切られている形式をコンパートメントという。オープンサルーンにおいては、中央に通路が設けられて両側に座席が設置される形態が多く、一方コンパートメントにおいては片側に通路が設けられている形態が多い。ただし中央通路で両側にそれぞれコンパートメントが並ぶ形態もある。屋根付き馬車の車体構造に由来する、各コンパートメントに直接外と繋がるドアが取り付けられている車両があり、現在でもイギリス保存鉄道などで見られる。こうしたドアをスラムドアという。

オープンサルーンでは、さらに座席の配置の仕方に様々な形態がある。詳細は鉄道車両の座席を参照。

座席車には、座席以外に荷物置き場、トイレ、洗面所乗務員の業務用スペース、身障者スペースなども設置されることがある。
寝台車詳細は「寝台車 (鉄道)」を参照

寝台車は、客室内に寝台(ベッド)を設置してあり、乗客が寝たまま旅行できるようにされている車両である。主に夜行や、行程が数日にわたる長距離列車に連結されている。

座席車と同様に、寝台車も国や鉄道事業者により等級で分かれている。例えば等級が上のものから、日本のJRではロイヤル又はスイートA寝台車B寝台車、中国の鉄道では軟臥車、硬臥車、ヨーロッパシティナイトラインではデラックス、コンフォート、エコノミー、クシェット、スペインのタルゴではグランクラッセ、プレファレンテ、ツーリストである。

寝台車においても、開放形式と個室形式がある。開放形式では、寝台はカーテンにより外部の空間と仕切られるだけであるが、個室形式においては、部屋を施錠することができる部屋になっている。ただし中国の硬臥車ではカーテンも付いていないものがある。アメリカにおいては開放形式が、ヨーロッパにおいては個室形式が主流であったが、後にアメリカも個室形式に移行している。

開放形式の寝台の配置パターンには大きく分けると2つあり、1つは車両の中央に前後方向の通路が通り、その両側に線路と平行に寝台が並んでいるもの、もう1つは車両の片側に通路が通り、線路と直角に寝台が並んでいるものである。なお、スペインのタルゴ客車には斜めの寝台も存在している。前者のうち、昼間には寝台を畳んでボックスシートとするものを、この形式の寝台車を多数所有していたアメリカの会社の名前からプルマン式と呼ぶ。一方、昼間でも寝台をそのままにロングシートのように座る形式を、アメリカでの寝台車の販売呼称からツーリスト式と呼ぶ。収容できる定員数の確保のため、特に等級の高い寝台車でない限り、二段寝台や三段寝台になっているのが普通である。

個室形式の寝台では、等級にもよるが、個室内にシャワー室、トイレ、洗面台などが備わっていることがある。シャワー室については、開放形式の寝台に乗車している旅客も使用することができる共用のものが設置されている列車もある。

寝台車運行の全盛期には、アメリカではプルマン社、ヨーロッパでは国際寝台車会社(ワゴン・リー社)が、鉄道会社とは別個に設立されて寝台車を所有し、鉄道会社と契約を結んで寝台列車を走らせていた。こんにちでは航空機や高速鉄道の発達により、かつてほど夜行列車は重要ではなくなったが、今なお多くの列車が運行されている。さらに観光目的で、列車に乗ること自体を目的とした旅行を提供する豪華列車にも寝台車がよく連結されている。
食堂車詳細は「食堂車」を参照

食堂車は、車内に供食設備を備えた車両である。簡単な厨房設備と食事のためのスペースを備えている。

車内においてきちんと材料から調理して食事を提供する場合と、地上で準備した食事を車内では温めて提供するだけ(飛行機機内食と同様)の場合がある。現代においては後者のケースが増えている。またメニューにある料理から選択するのではなく、カフェテリア形式になっていて、自分の好みの食品を選択して食べるものもある。カフェテリア形式の場合、自分の座席に持ち帰ることができることもある。立席で軽食の提供を前提とした車両の場合はビュフェと呼ばれる。

食事を直接提供する以外に、売店としての営業や車内販売の準備スペースとしての機能を持っていることがある。

世界的に鉄道の高速化や長距離旅客の航空機への転移などにより、食堂車の連結が廃止されたり営業が簡素化されたりしている。日本では既にごく一部の寝台列車で営業するのみである。ヨーロッパでも高速鉄道ではビュフェ程度のものが多いが、在来線を長時間走行する列車では本格的な食堂車もまだ営業している。中国においては、今でも長距離を走行する列車が食堂車を連結するのは一般的である。中国の食堂車は、食事を直接提供する拠点であるばかりでなく、車内販売で販売される弁当の調理を行うという機能を持っている。

列車によっては、運賃料金に食事代が含まれており、航空機の機内食のように各座席に食事が運ばれてくるものがある。この場合でも食事を準備するためのスペースが列車内のどこかに用意されている。豪華列車の中には同じく食事代が込みになっていても、指定された予約時間に旅客が食堂車に足を運ぶようになっているものもある。
郵便車・荷物車詳細は「郵便車」および「荷物車」を参照


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