施行
施行(せこう、しこう) - 成立した法令を発効させること。詳細は後述。
施行(せぎょう) - 仏教において布施行を行うこと。
施行(しぎょう) - 中世日本において命令や判決を実行させること。遵行とほぼ同義である。→施行状
施行(せこう、しこう[注 1])とは、成立した法令の効力を発生させることをいう。また、施行(が予定)される日のことを施行日(施行期日)という。 日本では様々な形式の法令が施行されており、施行に関しての原則を決められている法令は時代によっていくつかにわけられる。 日本の法令の施行日は、原則として以下のとおりである。ただし、現行の実務において法律や条例等の附則において施行期日が直接又は間接的に定められており、下記の規定により施行日が決まることはない。公布の日から施行することもできる(#法令の施行方法を参照)。 法令の施行方法について、いくつかに分類することができる(以下、各行末の例文には法律を用いる)。 上記1.の場合はそれぞれその指定された日に施行され、2.の場合は#施行に関する法令の中の該当する法令の規定に基づき施行される。明治期の法令には2.の施行方法が使われた例があるが、それ以降はほぼ1.の施行方法であり、2.の方法はほとんど用いられていない。また、公式令が廃止された後の政令や省令の場合、施行日に関する法令がないため、1.の方法でなければならない。 公布日より施行する(すなわち即日施行の)場合、公布がなされた日の午前0時からではなく、公布と同時に(すなわち公布がなされた時点において)施行されるものと解されている(最大判決昭和33年10月15日刑集12巻14号3313頁)[2]。 また、施行日に関しては次のような場合もある。 法令は、その制定後は、施行前であっても改廃が可能である。したがって、ある法令の公布日から施行日までの間に、社会情勢の変化や他の改正による影響などで、その法令が施行されないまま他の法令により改正され、または廃止されることがある。
日本の法令の施行
現在制定されている法令の施行
法律
公布の日から起算して20日を経過した日(法の適用に関する通則法第2条)
行政機関の命令(政令、内閣官房令、内閣府令、省令、外局の規則など)
施行日に関する一般的規定を定めた法令が存在しないため、各々の附則で定められる。ただし、法律の施行期日を定めるためだけに制定される政令については、その政令自体の施行日に関する規定は付されない(即日施行するものと解されているため)。
最高裁判所規則
公布の日から起算して20日を経過した日(裁判所公文方式規則
普通地方公共団体・特別区の条例・規則等
公布の日から起算して10日を経過した日(地方自治法第16条第3項、第5項
法令の施行方法
施行日に関する事項が法令に明記されている場合。
施行日が明確に規定されている場合。
公布の日から施行する場合。(例:この法律は、公布の日から施行する。)
公布後一定の期間を経過した日から施行する場合。(例:この法律は、公布の日から起算して○○○[注 2]を経過した日から施行する。)
年月日が記述されている場合。(例:この法律は、令和○○年○○月○○日から施行する。)
他の法令の施行日に施行する場合(例:この法律は、○○法の施行の日から施行する。)
上記に類似するが、条約実施に関する国内法の場合、条約の効力発生の日とするものがある(例:この法律は、○○条約の効力発生の日から施行する。)
施行日については他の法令に規定する場合。
「この法律は、公布の日から起算して○○○[注 2]を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。」(政令で指定。施行日に範囲を設定することがほとんど)
「この法律は、別に法律で定める日から施行する。」(稀にある例。都市計画法(昭和43年6月15日法律100号)附則第1項など)
「この法律の施行期日は、別に法律で定める。」(特許法(昭和34年4月13日法律121号)附則など))
施行日に関する事項が法令に明記されていない場合。
条項別に異なる施行期日を設定する場合がある。(例:この法律は、○○○から施行する。ただし、第○○○条の規定は、○○○から施行する。)施行日を制令で委任する場合、特に条項別に施行日を定めることを委任することもある。(例:この法律の施行期日は、各規定につき政令で定める)
施行は公布を前提としているので、施行日を過去(つまり公布日よりも前の日)に設定することは本来認められない。ただし、国税通則法(昭和37年法律第66号)は、その附則1条で施行期日を昭和37年4月1日とされたものの、公布日である官報掲載日が昭和37年4月2日になったため、公布よりも前に施行という変則的な事態となった。なお、国民その他その法令の対象者にとって不利益にならない規定(金銭を過去にさかのぼって支給する等)に限り、公布日より前の事象にその法令を遡及適用することが認められているが、これは法の適用範囲の問題であり、施行日の問題ではない。不利益となる場合(公布前の犯罪に改正後の重罰を適用する、税金を過去にさかのぼって増税する等)の遡及適用は認められない。(例:この法律は、平成十八年十月一日から施行し、第○章の規定は、同年四月一日から適用する。)
施行前の廃止・改正
施行に関する法令
公文式(1886年(明治19年)2月26日 - 1907年(明治40年)1月31日)は、法令全般の施行方法を規定した勅令である。「第二 布告」の章で第10條に「官報各府縣廳到達日數ノ後七日以テ施行ノ期限トナス」と記されている。この頃はまだ全国一律に施行されていたわけではなく、官報が府県の諸官庁に到達してから7日後となっている。また天災により官報到達日数内に官報が到達しなかった場合、及び北海道や沖縄、島部については官報が到達した翌日より起算するとされている。
公式令(1907年(明治40年)2月1日 - 1947年(昭和22年)5月2日)は、皇室令、勅令、閣令および省令の施行方法を規定した勅令である。第11条に「公布ノ日ヨリ起算シ滿二十日ヲ經テ之ヲ施行ス」とあるとおり、公布の日から起算して満20日を経過した日を施行日としている。(例:公布日が4月1日であれば施行日は4月21日)
軍令ニ関スル件
法例(1898年(明治31年)7月16日 - 2005年(平成17年)12月31日)は、法律の施行方法を制定した法律である。第1条に「法律ハ公布ノ日ヨリ起算シ滿二十日ヲ經テ之ヲ施行ス」とあるとおり、公布日から起算して満20日を経過した日を施行日と規定している。(具体例は上の公式令と同じ。)
台湾総督府行政司法ニ関スル命令公布式(1896年(明治29年)7月6日 - 1898年(明治31年)5月1日、明治29年台湾総督府令第18号)は、台湾総督が発する命令(律令、台湾総督府令)の施行方法を規定した台湾総督府令である。台湾総督の発する行政及び司法に関する命令は、当分の間、台湾新報に掲載することをもって公布式とする旨が規定されている。台湾総督府行政司法ニ関スル命令公布式は、明治30年台湾総督府令第34号(同年7月13日公布)によって改正され、台湾日報
台湾総督ノ発スル行政司法ニ関スル命令公布式(1898年(明治31年)5月1日 - 実効性喪失、明治31年台湾総督府令第21号、同年5月1日公布)は、台湾総督が発する命令の施行方法を規定した台湾総督府令である。台湾総督が発する行政及び司法に関する命令は、台湾総督府報として台湾日日新報に掲載させることをもって公布式とする旨が規定されている。
台湾総督ノ命令公布式(1900年(明治33年)10月1日 - 1901年(明治34年)11月30日、明治33年台湾総督府令第70号、同年9月14日公布)は、台湾総督が発する命令の施行方法を規定した台湾総督府令である。台湾総督が発する命令は、台湾総督府報に掲載することをもって公布式とする旨が規定されている。台湾総督ノ命令公布式は、台湾総督ノ発スル命令公布式の制定によって廃止された。
台湾総督ノ発スル命令公布式(1901年(明治34年)12月1日 - 1933年(昭和8年)1月12日、明治34年台湾総督府令第103号、同年11月20日公布)は、台湾総督が発する命令の施行方法を規定した台湾総督府令である。台湾総督が発する命令は、台湾日日新報附録府報に掲載することをもって公布式とする旨が規定されている。台湾総督ノ発スル命令公布式は、台湾総督命令公布式によって廃止された。
台湾総督命令公布式(1933年(昭和8年)1月12日 - 実効性喪失、昭和8年台湾総督府令第2号、同年1月12日公布)は、台湾総督が発する命令の施行方法を規定した台湾総督府令である。台湾総督府令であって、台湾ニ施行スヘキ法令ニ関スル法律(大正10年法律第3号)2条の規定によるものは律令、その他は府令であることの区別が設けられ、いずれも台湾日日新報附録府報をもって公布する旨が規定されている。台湾総督命令公布式は、昭和17年台湾総督府令第44号(同年3月19日公布)によって改正され、台湾総督が発する命令は、台湾総督府官報をもって公布することが規定された(同年4月1日施行)。
庁令公布式