新源氏物語_(田辺聖子)
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『新源氏物語』(しんげんじものがたり)は、田辺聖子による『源氏物語』の現代語訳または『源氏物語』の翻案とされる作品。『田辺源氏』とも呼ばれる。本項目では田辺聖子と『源氏物語』とのかかわり全般についても述べる。
目次

1 概要

2 田辺聖子の源氏物語観

3 出版の経緯

4 特色

4.1 時代背景


5 各巻の名称

6 田辺源氏の影響

7 舞台化作品

8 書誌情報

9 参考文献

10 脚注

10.1 注釈

10.2 出典


11 外部リンク

概要

与謝野源氏」と呼ばれる与謝野晶子によるもの、「谷崎源氏」と呼ばれる谷崎潤一郎によるもの、「円地源氏」と呼ばれる円地文子によるもの、「瀬戸内源氏」と呼ばれる瀬戸内寂聴によるものなどと並んで代表的な「作家による『源氏物語』の現代語訳の一つ」とされる。

「新源氏物語」と称されるものには、「狭義の新源氏物語」と「広義の新源氏物語」とが存在する。「狭義の新源氏物語」とされるのは、『源氏物語』冒頭部分から「幻」巻部分までが現代語訳『新源氏物語』として1978年(昭和53年)から1979年(昭和54年)にかけて全5巻で新潮社から刊行され、1984年(昭和59年)5月に新潮文庫に収録されたものである。「広義の新源氏物語」としては、上記の「狭義の田辺源氏」に加えて『新源氏物語 霧ふかき宇治の恋の物語』として1990年(平成2年)5月に新潮社から「新源氏物語 霧ふかき宇治の恋」として上下2巻で出版され、1993年(平成5年)11月に、上下2巻で新潮文庫に収録された「宇治十帖」部分の現代語訳を含む。1993年(平成5年)8月に新潮社から刊行された全1冊本『新源氏物語』および2004年(平成16年)に集英社から出版された『田辺聖子全集 全24巻』の第7巻および第8巻の2巻に収められた『新源氏物語』では、この「霧ふかき宇治の恋」を含めた『源氏物語』全体の現代語訳を「新源氏物語」としている。

またより広義には、狭義の『新源氏物語』と「霧ふかき宇治の恋」との間に執筆・出版された『源氏物語』の外伝的・パロディ的作品である「私本・源氏物語」シリーズや、1997年から1999年まで36回にわたって行われた田辺の『源氏物語』についての連続講演「田辺聖子の『源氏物語』をご一緒に」を書籍化したもの[1]も含められることがある[2]
田辺聖子の源氏物語観

田辺聖子は、この『新源氏物語』以外にも、『源氏物語』やそれを含む日本の古典文学に関して多くの現代語訳やエッセイなどの諸作があり、「当代随一の古典の読み手である」とされる[3]。その他に日本の古典文学に関して講演録や対談も数多く存在しており、それらを通して田辺の『源氏物語』観を知ることが出来る。田辺は年を経るに従って『源氏物語』の見方が変化したことを述べており、若い頃は『源氏物語』を読み通すことも出来ず[4]、その頃の『源氏物語』観は「ところどころのシーンこそ、目にとまるものの、やたらに冗長で膨大な古物語としか思えなかった。」というものであったとしている。30を過ぎて「口語訳を読み返したことと、原典の文語文法や文体のクセに慣れたことにより、楽しめるようになってきた。それにより、源氏物語とはさまざまな人間や恋愛の形を描いたカタログであり、面白い、楽しい物語であると感じられるようになった。」と述べており、40代になると、光源氏を初め紫上、薫、匂宮とそれぞれに不幸であり、あきたりぬ人生を送っている。「源氏物語とは哀しい小説ではないか」と思うようになった。さらに50代になると、「源氏物語とは哀しみが描かれている」という点についてはそのとおりであるとしても、その地点にとどまるのではなく「哀しい話から昇華した喜び」が描かれていると感じるようになったと述べた上で、「これからの私はどのように源氏物語を読むことになるのだろうか」との言葉で締めくくっている[5]。このような田辺の『源氏物語』観の変遷と新源氏物語の内容とを対照させてみると、『新源氏物語』は30代の田辺の『源氏物語』観が生かされ、さらに40代の田辺の『源氏物語』観の影響の下に成立しているとされている[6]
出版の経緯

『源氏物語』冒頭部分から「幻」巻までの部分は、『新源氏物語』として雑誌『週刊朝日』において1974年(昭和49年)11月発行の第79巻第49号から1978年(昭和53年)1月発行の第83巻第4号にかけて169回にわたって連載された後、1978年(昭和53年)から1979年(昭和54年)にかけて全5巻で新潮社から単行本として刊行され、1984年(昭和59年)5月に新潮文庫に収録された。

上記に含まれない『源氏物語』第三部(匂宮三帖及び宇治十帖)についても当初から含める予定であったが[7]、上記の『新源氏物語』とは別に『新源氏物語 霧ふかき宇治の恋の物語』として雑誌『DAME』において1985年(昭和60年)10月発行の第2巻第10号から1987年(昭和62年)7月発行の第4巻第7号まで22回にわたって連載されたが、同号をもって同誌が休刊したために「宿木」巻の途中までで中断することとなった。その後、残りの部分は書き下ろしで執筆されて1990年(平成2年)5月に新潮社から「新源氏物語 霧ふかき宇治の恋」として上下2巻で単行本として出版され、1993年(平成5年)11月に、上下2巻で新潮文庫に収録された。

1993年(平成5年)8月に新潮社から刊行された全1冊本『新源氏物語』および2004年(平成16年)に集英社から出版された『田辺聖子全集 全24巻』の第7巻および第8巻の2巻に収められた『新源氏物語』では、この「霧ふかき宇治の恋」を含めた『源氏物語』全体の現代語訳を「新源氏物語」としている。
特色

田辺自身は「注釈を見ないでも読めるおもしろい読み物」を目指したとしており[8]、近代人の感覚では「ここがもう少し読みたい」と思うところが『源氏物語』の原典ではさらりと流されていることがあり、そのような点を非才を顧みず書き埋める作業を行った結果が「新源氏物語」であるとしている[9]


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