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完成間近となった新安全閉じ込め構造物(2016年10月)
新安全閉じ込め構造物(NSC:New Safe Confinement または新シェルターとも呼ばれる)は1986年に発生したチェルノブイリ原子力発電所事故で損傷した原子炉を封じ込めるための構造物である。第一目標は原子炉建屋からの放射性物質の漏洩を防ぐこと、第二目標は将来的に旧閉じ込め構造物(石棺)の部分解体を可能にすることである。
チェルノブイリシェルター基金(英語版)が資金拠出するシェルター構築計画(SIP:Shelter Implementation Plan)において、NSCは事故後に除染作業員たちによって突貫工事で建設された石棺に代わって4号機に残された放射性物質を向こう100年に渡って封じ込めるように設計されている。
NSCの第一目標は固体放射性廃棄物を外部環境から隔離することであるため、「閉じ込め("confinement")」という言葉が使われている。これは、「封じ込め("containment")」という言葉が原子炉格納容器(reactor containment building)など放射性気体を隔離する意味で用いられており、これと明確に区別するためである。
NSCの設計および建設はフランスの建設会社であるヴァンシとブイグが折半出資して設立したコンソーシアム、ノヴァルカが請け負い[1]、2017年に完工予定である。建設資金はチェルノブイリ廃炉基金の幹事を務める欧州復興開発銀行(EBRD)が集めたが、完工までには1億ユーロ不足するという指摘もあった。
新安全閉じ込め構造物は、旧閉じ込め構造物および損壊した原子炉の残骸を安全かつ環境に影響を与えないよう隔離すべく設計されている。シェルター構築計画には2017年末の完工までに総額21億5千万ユーロ(30億9千万ドル)が必要とみられており、NSCだけで15億ユーロ(21億5千万ドル)に上る[2]。 従来の安全閉じ込め構造物は公式には「オブジェクト・シェルター("Object Shelter")」という名称であるが、一般には「石棺("the sarcophagus")と呼ばれている。これは1986年5月から11月にかけて、チェルノブイリ原子力発電所(ChNPP)4号機に残された放射性物質を封じ込めるために緊急に設置されたものである。建設は極めて高線量の環境において極めて厳しい時間制約のもと進められた。石棺によって放射能汚染の封じ込めに概ね成功し、損壊した原子炉のモニタリングが行えるようになった。 石棺は一部損壊した4号機原子炉建屋を支えにして建てられているが、原子炉建屋自体が事故時の爆発により構造的に不健全な状態になっていることが懸念されていた。石棺の屋根は主に3つの構造部材で支えられている。東西に走る2本の梁(B-1およびB-2と呼ばれる)が天井パネルと桟木を支持しており、さらに東西方向の最長部に架けられた「マンモス・ビーム」と呼ばれる強度の高い梁が天井パネルと桟木の支持を補助している。石棺の屋根は南北方向に水平に並べた直径1mの鋼管と、そこにアングルを介して取り付けられた鋼板で作られている。 石棺の南側の壁面は屋根から延びる鋼板で、垂直から約15度の傾斜がつけられている。東側は原子炉建屋そのもので、北側は原子炉建屋とコンクリートセグメントが組み合わされている。西側は補強のため控え壁を設けたコンクリート壁になっている。西側の壁は構造が複雑なため放射線量の高い現地では組み立てられず、別の場所で組み立てたものを遠隔操作のタワー型クレーンで取り付ける方式で建設された。石棺の写真として紹介されるものの多くは、控え壁のある西側を写したものである。 よく勘違いされることであるが、石棺は恒久的な閉じ込め構造物として設けられたものではない。雨水による腐食や内部の放射性物質からの放射線により劣化が進んでおり、放射性物質が環境中に漏れ出す危険性が高まりつつある。2007年以前から屋根や屋根へのアクセス通路、集塵装置や長期モニタリングシステムなどが設置されてきたものの、4号機に残された放射性物質を将来に渡って閉じ込め続けるためには、石棺の大規模な修繕あるいは交換が必要な状態になってきた。4号機の建屋内部には、事故当時に内部にあった放射性物質のうち95%が残っていると見積もられている[要出典]。 1992年にウクライナ政府は石棺の代替案について国際コンペティションを開催した[3]。 1992年秋に英国原子力公社
石棺
設計・建設
国際コンペティション
これに対して、DGPのデビッド・ハズレッド(David Haslewood)は以下の理由から別の場所で構築したアーチ型構造物を石棺の上にスライドさせて被せることを提案した。
別の場所で構築することにより、建設作業員の被曝を最小限に留めることができる。
アーチ構造は損傷した原子炉建屋の形状に対してうまくフィットする(ただし煙突を除く)。
アーチ構造は箱形構造よりもスライドさせるのが容易である。
394件の応募のうち、アーチ型構造物をスライドさせる提案はイギリスのものだけであった[4]。