新型出生前診断
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新型出生前診断(しんがたしゅっしょうぜんしんだん)とは、無侵襲的出生前遺伝学的検査(英語: non-invasive prenatal genetic testing; NIPT)、母体血細胞フリー胎児遺伝子検査(英語: maternal blood cell-free fetal nucleic acid (cffNA) test)、母体血胎児染色体検査[1]、セルフリーDNA検査などとも呼ばれる、妊婦から採血しその血液中の遺伝子を解析することにより、胎児の染色体や遺伝子を調べる非侵襲的検査である[2]。出生前親子鑑定として父親の判定にも使用される[3]

母体中の血液には、母親のDNAの他に胎児由来のDNAも10%ほど含まれる[3]。胎児由来のDNAは、血漿中セルフリーDNA(cell-free DNA:cfDNA)(en)という分類に含まれ、胎児由来遺伝子をMPSという方法で解析することで[4]、胎児性別診断、RhD陰性妊婦での胎児のRhD血液型診断、胎児の単一遺伝子病や染色体異常の診断、さらには妊娠高血圧症候群の発症予知・胎盤機能評価の評価、父親の確認などを目的に検査を行う。妊娠8-10週目から検出可能となる[3]。結果が出るまでは数日から2週間程度かかる[3]
歴史

香港中文大学の化学病理学教授である盧U明がNIPTを発明した[5][6]。先に胎児性別診断とRhD血液診断のみが実用化されていたが、2011年にアメリカ合衆国のシーケノム社が開発したMaterniT21により、胎児の染色体異常が診断可能になった。まず、21トリソミーの診断が可能になり、その後さらに18トリソミーおよび13トリソミーが対照に加えられた。2012年3月からはアメリカ・ヴェリナタ(Verinata)社も検査受託を開始している[7]

日本国内では2013年4月より、日本医学会の認定・登録委員会により認定された施設での検査が始まった[8]。2013年12月現在、日本国内では検査解析が実施できず、採取した血液は全てアメリカに空輸されて検査されている[9]

2016年夏、シーケノム社は「マタニティ・ゲノム」(Materni-quenom)という新しい検査手法を開発した。この検査では胎児の全染色体の検査が可能となり[10]、羊水検査でも診断できない遺伝子異常も検出可能になった[10]
費用と普及

2014年度には日本国内47施設で1万人の妊婦が検査を受けた[11]。「高齢出産」を理由にする妊婦が多いとされる[7]。アメリカではカリフォルニア州だけで、2009-2012年に130万人の妊婦が検査を受けた[2]。費用は健康保険の適用がなく自費扱いとなり、日本国内では20万円程度の負担となる[12]。2014年、中国企業の関連会社「BGIヘルスジャパン」が相場の半値の10万円で検査を受諾して香港の検査会社で解析を行っていたが[9]、日本産科婦人科学会の指針を守らず遺伝カウンセリング体制が整っていない未認定の施設でも検査を受注していたことが問題となり、検査受諾を一時中止する事態となった[13][14]。2016年4月には、国内で検査を受けた妊婦がのべ3万人となった[10]
結果の解釈

日本におけるNIPTは、13番、 18番、21番の3つの染色体の数的異常を検出する非確定的検査である[15]。その他の染色体数的異常や数的異常以外の染色体異常(均衡型転座、微細欠失など)、単一遺伝子疾患の有無は分からない。

検査が陰性の場合、対象とする染色体数的異常のみられる可能性は極めて低いが、0ではなく、偽陰性となることがありうる。したがって、対象とする染色体数的異常がないことを確定させることにはならない。

検査が陽性の場合、対象とする染色体数的異常のみられる可能性は高くなるが、偽陽性がありうる。陽性適中率事前確率により異なる。確定診断をするには、侵襲を伴う検査(絨毛検査または羊水検査)が必要になる。
検査精度

検査される妊婦群の平均年齢が高いほど、ダウン症胎児が多く含まれるために検出精度が高くなる。逆に妊婦群の平均年齢が低いほど、的確に診断できる確率は統計学的な理由により低下する[16]。トリソミー21のローリスク群を900人にひとり程度の頻度と考えて計算すると陽性的中率は30%程度にしかならない。日本国内では2013年11月22日にNIPTコンソーシアムが検査結果を集計したところ、新型出生前診断を受けたのは約3,500人であり、そのうち67人が陽性と判定され、56人が異常ありと診断された[17]。2014年度の国内実績では、検査で陽性になった295人中、羊水検査で胎児の異常が確定したのは78%の230人であった[11]

対象となる染色体数的異常があるのにNIPT陰性となる「見逃し」も17%程度あることが知られている[2]


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