新参者_(小説)
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新参者
著者東野圭吾
発行日2009年9月18日
発行元講談社
ジャンルミステリー推理小説
日本
言語日本語
形態四六判
ページ数354
前作赤い指
次作麒麟の翼
公式サイトbookclub.kodansha.co.jp
コードISBN 978-4-06-215771-1
ISBN 978-4-06-277628-8A6

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『新参者』(しんざんもの)は、東野圭吾推理小説である。『このミステリーがすごい!2010』並びに『週刊文春ミステリーベスト10』において1位を記録している。

2010年4月期にTBS系でテレビドラマ化された。
概要

小説現代』(講談社)2004年8月号にて初出。以後5年にわたって9作の短編が同誌に連載された。単行本は2009年9月18日に講談社から刊行され、2013年8月9日に講談社文庫版が発売された。

加賀恭一郎シリーズの第8作目で、本作から加賀の活躍する舞台を日本橋に移した1作目の作品である。各短編が各一章となり、章ごとに代わっていく主人公となる人物の視点を通じて加賀の捜査の意図が明らかとなり、彼が事件に直接関係ない周辺人物の小さな謎を解いていくうち徐々に本来の事件解決が浮かび上がっていく構成となっている。尚、第一章で第四章での出来事について触れるなど、章ごとの時系列は前後している。
制作の経緯

『小説現代』の担当者から執筆依頼を受け、生活拠点の一部で好きな町であるという人形町を舞台にした作品を書きたいと東野が了承したことが出発点となった[1][2]。そして好きな町について伝えるレポーター役として、そして練馬で一つの家庭の謎を解いてきたが、町という広い場所を相手にしたらどうなるのかという興味から加賀を主人公に抜擢した[2]。作品のイメージは、殺人捜査を同心にあたる捜査一課に任せ、岡っ引きの加賀は小さな謎を追う現代版捕物帳であるという[1]。方針が決まった後の6月の暑い頃に担当者と人形町を散策して見出したアイデアを元に「煎餅屋の娘」を発表、その1年後に「料亭の小僧」、それから約半年後「瀬戸物屋の嫁」と発表した。だが、執筆当時は加賀が本来追っている「小伝馬町女性絞殺事件」の全体像を決めずに書き始めており、第三章の「瀬戸物屋の嫁」以降から担当者と被害者の住む小伝馬町を歩き回りながら被害者の女性像を具体的に組み立てたといい、諸事情の2年余りのブランクを経て「時計屋の犬」を執筆したことで制約が生まれ、「洋菓子店の店員」の時点で小伝馬町の事件の全体像が見えてきたと東野は語っている。その後、すぐに事件解決まで描かず、「翻訳家の友」「清掃屋の社長」「民芸品屋の客」事件関係者の心情を加賀が汲み取る話、最終章となる「日本橋の刑事」と描いていった[1]。尚、東野は毎回書く前には担当者と町中を歩き回り、ネタが無いと思った時でも同じ場所を往復する内に必ず新発見があったという[2]

「煎餅屋の娘」で用いられたトリックは東野が自身の母親に対して行ったものであり、その母親が2004年6月3日に死去し、小説を読まれたら母親にばれるという理由から今まで使われなかったトリックを取り入れ、母親の死後の四十九日頃に「煎餅屋の娘」を発表したという経緯がある。その他、「時計屋の犬」の舞台となる時計屋は、東野の実家の時計屋に基づいて描かれている。そして「日本橋の刑事」は前作『赤い指』を意識して書かれており、東野は「日本橋の新参者である加賀の内側になにがあるのか、読者にぼんやりとでも伝わればいい」と語っている[1]
あらすじ

日本橋小伝馬町で一人暮らしの40代の女性が絞殺された。日本橋署に着任したばかりの加賀恭一郎は、自身にとって未知の土地の日本橋を歩き、事件や被害者と何らかの接点を持った家族や店を訪れる。加賀は事件に残されたいくつかの謎の解明のため、その謎に関わった当事者達の様々な想いを一つずつ解きほぐしていき、そしてそれらの解決を通じ絞殺事件そのものの真相にたどり着いていく。
各章ストーリー
第一章 煎餅屋の娘
初出:『小説現代』2004年8月号
煎餅屋「あまから」を営む上川家の面々に2人の捜査一課刑事と加賀が、保険外交員の田倉が昨日何時頃に訪問したのかを尋ねてくる。田倉は先日発生した小伝馬町の殺人事件の被害者宅を訪ねており、その後「あまから」へ寄り午後6時40分に退社したと犯行当時のアリバイを主張するが、彼が午後6時10分に退社したという証言の存在から、田倉が退社後に犯行が可能な空白の30分が浮上したことで重要容疑者として疑われていた。「あまから」への聞き込みは田倉の正確な退社時刻を調べるためのものだった。懇意にしている田倉の無実を信じる上川家の面々を余所に、加賀はこの暑い時期にサラリーマンが羽織るスーツに着目し、曖昧なアリバイの真相に気付く。

上川菜穂…煎餅屋「あまから」の娘。美容学校に通っている。母が早くに他界し、父と祖母に育てられた。

上川聡子…「あまから」を切り盛りする先代の妻で菜穂の祖母。頑固な性格で口煩い。先日まで動脈瘤の手術前に胆管炎による発熱により一時は生死の境をさまよっていた。

上川文孝…「あまから」現店主で菜穂の父親。30年前、20年間和菓子屋だった店を煎餅屋に鞍替えしたという。

田倉慎一…新都生命保険外交員。江戸っ子気質の約束を守る性格で、菜穂を始めとする上川家に慕われている。

第二章 料亭の小僧
初出:『小説現代』2005年6月号料亭「まつ矢」の見習い・修平は、加賀と刑事2人が3日前に人形焼を買ったことを聞かれる。人形焼は「まつ矢」主人・泰治に極秘に頼まれ購入しており、泰治との秘密を守るため修平は人形焼は自分で食べたと主張する。その後、3日前に小伝馬町の殺人事件で殺された女性宅に人形焼が残っていたことを知った修平は殺された女性が泰治の愛人と思しき女性ではと疑心と不安を抱き、「まつ矢」に一人食事に現れた加賀からの質問に対して頑なに口を閉ざす。だが、加賀の真意は別の所にあり、現場に残された人形焼には意外な特徴があった。

修平…料亭「まつ矢」見習い・給仕役。去年高校を辞めて、父の伝手で「まつ矢」で働き、憧れだった料理人を目指す。

頼子…「まつ矢」女将。気が強くさっぱりとした気性の女性。従業員には厳しく、客に修平が見惚れるほどの笑顔でてきぱきと店を切り盛りする。

泰治…頼子の夫で「まつ矢」主人。頼子とは対照的に放蕩で、小伝馬町に囲っているという噂の愛人への手土産なのか、修平に何度か人形焼を買うように頼んでいる。

克也…修平の2年先輩。修平が「まつ矢」に雇われた今年の春に厨房の手伝いを任された。

アサミ…銀座のクラブで働く女性。子供がいる。

第三章 瀬戸物屋の嫁
初出:『小説現代』2005年10月号瀬戸物屋「柳沢商店」を営む柳沢家では、店主の鈴江とその息子・尚哉の嫁である麻紀との間で嫁姑問題の真っ只中にいた。そんな中、「柳沢商店」にやってきた加賀が、麻紀に小伝馬町の殺人事件の被害者・三井峯子について聞いてくる。麻紀は1週間前に峯子が商品を注文したことを証言するが、尚哉は加賀がなぜ麻紀を事前に知っていたのかを疑問に思う。その後も加賀は峯子が刃物専門店「きさみや」でキッチンバサミを買ったことや、柳沢家でもキッチンバサミを調査する。加賀の不可解な捜査は峯子が自前のものを持っていながらキッチンバサミを購入したことが発端だった。後に相手に頼まれて買ったことが判明するが、その相手が麻紀だった。

柳沢尚哉…大手ゼネコンのサービスマン。六本木のキャバクラで働いていた麻紀に入れ上げ、結婚にまで漕ぎつけた。仲が悪くなった麻紀と鈴江の板挟みで悩む。

柳沢麻紀…尚哉の妻。明るく表情豊かだが、元来気の強い性格。小学生の頃から好きなキティちゃんのタオルを雑巾に使われたことに腹を立て、鈴江と言い争う。

柳沢鈴江…尚哉の母で瀬戸物屋「柳沢商店」店主。麻紀に負けじと気の強い性格。歯が弱く、固い食べ物は避けている。現在、小唄の会の人達との伊勢志摩巡りを楽しみにしている。

第四章 時計屋の犬
初出:『小説現代』2008年1月号「寺田時計店」を訪ねてきた加賀は主人の寺田玄一に6月10日の午後6時頃に峯子と会った時のことを尋ねる。その時間、愛犬・ドン吉の散歩をしていた玄一は峯子と浜町公園で会ったと証言するが、後日加賀は玄一に本当に峯子と浜町公園で会ったのかを再三確認しに現れる。浜町公園に集まる愛犬家たちの中で玄一のことは見かけたものの、峯子を見た者は一人もおらず、峯子がパソコンで誰かの小犬の頭を撫でていたと綴った文面も相まって、証言に食い違いが生じていた。しかし、この不一致の謎を知る鍵を握っていたのはドン吉だった。

寺田玄一…時計屋「寺田時計店」主人。古い時計を修理させたら天下一品といわれる腕を持ち、こだわりも強いが、頑固で喧嘩っ早い性格で周囲と揉め事が絶えない。高校卒業後に自身が反対していた相手と駆け落ちした娘の香苗を許せず、その香苗の話はタブー扱いとなっている。

米岡彰文…本章の視点人物。「寺田時計店」の従業員。子供の頃から機械時計が好きだったことから今の職業を志した。寺田家とは親しい付き合いで、玄一の腕を尊敬している一方で彼からのとばっちりはなるべく避けようとする。

寺田志摩子…玄一の妻。玄一と同じくらいの大柄な体型のため、彰文には心中で玄一と共に巨漢夫婦と呼ばれている。玄一と違い、娘の香苗には他意はなく、結婚も支持している。

第五章 洋菓子屋の店員
初出:『小説現代』2008年8月号絶縁状態の父・直弘から母の峯子が自宅のマンションで殺されたことを知らされた劇団員の清瀬弘毅。突然の母の死に衝撃を受ける弘毅だが、心中には母がなぜ自分の住む浅草橋に近い小伝馬町で暮らしていたのかという疑問が広がっていた。その後、峯子が住み、殺されてしまったマンションに赴いた弘毅は現場保全を任された加賀に現場を見せてもらうことに。そこでも峯子が小伝馬町に移住した理由は解らなかったが、加賀の話などから峯子の周囲で妊娠している女性がいるらしいことが推察されていた。


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