新モーツァルト全集
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『新モーツァルト全集』(しんモーツァルトぜんしゅう、: Neue Mozart-Ausgabe)は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの音楽作品全集である。頭文字をとってNMAと略され、正式名称はWolfgang Amadeus Mozart, Neue Ausgabe samtlicher Werke[1]国際モーツァルテウム財団が編纂し、1956年から2007年にかけてベーレンライター社によって出版された[注 1][注 2]
概要

NMAは現存するモーツァルトの作品をすべて収載している学術的批判校訂版(原典版)全集であり、全132巻約25,000ページの楽譜、それらの各巻に対応した約8,000ページの校訂報告書、約2,300ページの序文と約1,800ページの記録文書からなる[1]

NMAでは、収載作品に各種の文書や索引を加えたすべてのコンテンツを35の「作品群」[注 3]と呼ばれるグループに分け、さらに上位のカテゴリとして全体を10個の大グループにまとめた。その分類を以下に示す[注 4]
第I篇 宗教的声楽作品
第1作品群 ミサ曲レクイエム(全8巻)第2作品群 リタニアヴェスペレ(全2巻)第3作品群 教会用小品(全1巻)第4作品群 オラトリオ、宗教的ジングシュピールカンタータ(全4巻)
第II篇 劇音楽作品
第5作品群 オペラ、ジングシュピール(全21巻)第6作品群 演劇パントマイムバレエのための音楽(全2巻)第7作品群 オーケストラを伴うアリア、シェーナ、声楽アンサンブル曲、合唱曲(全4巻)
第III篇 歌曲、多声歌曲、カノン
第8作品群 歌曲(全1巻)第9作品群 多声歌曲(全1巻)第10作品群 カノン(全1巻)
第IV篇 オーケストラのための作品
第11作品群 交響曲(全10巻)第12作品群 オーケストラのためのカッサシオンセレナーデディヴェルティメント(全6巻)第13作品群 舞曲行進曲(全3巻)
第V篇 協奏曲
第14作品群 1つまたは複数の弦楽器とオーケストラのための協奏曲(全6巻)第15作品群 1つまたは複数のクラヴィーアとオーケストラのための協奏曲、カデンツァ(全8巻)
第VI篇 教会ソナタ
第16作品群 オルガンとオーケストラのためのソナタ(全1巻)
第VII篇 大規模な独奏楽器群のためのアンサンブル音楽
第17作品群 管楽のためのディヴェルティメント、セレナーデ(全2巻)第18作品群 5つから7つの管弦楽器のためのディヴェルティメント(全1巻)
第VIII篇 室内楽のための作品
第19作品群 弦楽五重奏曲、管楽器を含む五重奏曲(全2巻)第20作品群 弦楽四重奏曲、管楽器を含む四重奏曲(全4巻)第21作品群 管弦楽器のための二重奏曲、三重奏曲(第1巻)第22作品群 クラヴィーアまたはアルモニカを含む三重奏曲、四重奏曲、五重奏曲(全2巻)第23作品群 クラヴィーアとヴァイオリンのためのソナタ、変奏曲(全2巻)
第IX篇 クラヴィーアのための作品
第24作品群 2つのクラヴィーアまたは4手連弾のための作品(全3巻)第25作品群 クラヴィーアのためのソナタ(全2巻)第26作品群 クラヴィーアのための変奏曲(全1巻)第27作品群 クラヴィーアのための小品(全2巻)
第X篇 補遺
第28作品群 他者の作品の編曲、補筆、転用(全9巻)第29作品群 真正性に疑義のある作品(全3巻)第30作品群 学習、スケッチ、草稿、断片、異稿(全4巻)第31作品群 補遺(全4巻)第32作品群 同時代の絵画にみるモーツァルトと彼の世界(全1巻)第33作品群 自筆譜の伝承に関する記録(全2巻)第34作品群 モーツァルトの生涯に関する記録(全1巻)第35作品群 索引(全2巻)

NMAや関連文献では、NMAの巻号を指定する際にこの分類を用いた略記を用いる。実例を以下に示すとともに、本稿でも必要に応じてこの表記を用いる。

歌劇『フィガロの結婚』K.492 序曲はNMA II/5/16/1[第II篇(劇音楽)・第5作品群(オペラ、ジングシュピール)・第16巻(フィガロの結婚)・第1分冊(第1幕・第2幕)]に収載

ハイドン・セット」として知られる弦楽四重奏曲群はNMA VIII/20/Abt. 1/2[第VIII篇(室内楽のための作品)・第20作品群(弦楽四重奏曲、管楽器を含む四重奏曲)・第1部(弦楽四重奏曲)・第2巻]に収載

位置づけと評価

NMAは、1877年から1883年(補遺は1910年)にかけてブライトコプフ・ウント・ヘルテル社によって出版された旧モーツァルト全集の改良版といえるエディションである[3]。編集委員のヴォルフガング・レーム(英語版)によれば、「NMAは歴史的批評学に基づくエディションとして、モーツァルト作品の(特に演奏における)実践的な知識のみにととまらず、音楽文献学の手法による最新の知見を提供することを目的としている」[4]

また、NMAはモーツァルトの真の意図を追求する者にとって欠かすことのできない資料として、演奏家や音楽学者から高い評価を得て頻繁に利用されている。いわゆる「後期三大交響曲」が収められているNMA IV/11/9「交響曲 第9巻」の校訂を担当したH.C.ロビンス・ランドンはNMAを「モーツァルトを正しく演奏するためには絶対に必要なもの」と評しており[5]、またある時にはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団による交響曲の一連の録音において、正確性に欠ける旧全集ではなく、NMAに基づく楽譜を使用していることを主張しなければならなかったとしている[6]

ただし、『コジ・ファン・トゥッテ』K.588の登場人物の表記や、『ピアノ協奏曲第23番』K.488第2楽章の弦楽器のピッツィカートの指定など、自筆譜には無い事象を演奏家が広く演奏している事態に基づいて追認したとみられる部分もあり、野口秀夫は批判している[7]
参照できなかった資料

スタンリー・セイディはNMAの編纂活動について、「第二次世界大戦のために資料が疎開されていたことに加え、(訳注:当時東ドイツの管轄下にあった)ベルリン国立図書館が所蔵する莫大な自筆譜コレクションのほとんどが1980年まで参照できなかったことにより阻まれていた」と述べており[8]、校訂者たちはこの困難な状況に対処しながら研究を続けることを余儀なくされていたことがわかる。一例を挙げると、1973年に楽譜巻が出版された歌劇『フィガロの結婚』の校訂において、ルートヴィヒ・フィンシャー(英語版)は全4幕のうち第2幕までの自筆譜しか参照できていない[9]。『クラヴィーア協奏曲第27番』K.595では、1960年の楽譜巻出版当時は自筆譜の原本を参照できなかったため、レームはピアニストのルドルフ・ゼルキンが所有する自筆譜の写真複製を手がかりに校訂せざるを得なかった[10]。この状況は楽譜だけでなく校訂報告書の出版にも大いに影響し、楽譜巻が出版されてからも長らく校訂報告書が出版されなかった例も多く存在する。前述の『フィガロの結婚』の場合、楽譜巻の出版が1973年であるのに対して校訂報告書の出版が2007年と、実に34年もの隔たりがある。


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