断食
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断食(だんじき, 英語: Fasting)とは、自主的に飲食行為を断つこと。一定の期間、すべての食物あるいは特定の食物の摂取を絶つ宗教的行為[1]。現代では絶食療法(一般にいう断食療法)として、医療行為ないし民間医療ともされている。固形物の食べ物を口にするのを止める行為であり、水すらも一切飲まない断食もある。「絶食」ともいう。

後述のラマダーンなど特定の意味を示す言葉として「断食」という言葉を使う場合もある[注 1]
概要

断食は世界の諸宗教に広く見られ[3]、食料を摂らないことを「絶食」「不食」という表現が使われることもある。食事は断つものの、「なら飲んでも構わない」とする断食もある。

断食は宗教上の行事としても行われているが、治療面での効果があることから世界各地で続けられてきたセルフケアでもある。現代日本国内の西洋医療においては、膠原病や内臓器の各検査及び手術による経口摂取制限という理由のみが推奨される。胃腸が不調の際の断食は、不規則な食事となり、極端な空腹が続くと胃酸が中和されず、胃粘膜を傷つけるため、推奨されないとする考え方もある[4]

漢方医学では「吸収は排泄を阻害する」といわれる。断食によって消化・吸収が停止するため、体のエネルギーを排泄に費やせる[5]
健康への影響「オートファジー」も参照詳細は「断食療法」を参照その他の摂取制限については「食事療法」を参照
医療において

手術などの全身麻酔を必要とする手技においては、胃の内容物が肺に混入するリスク(誤嚥性肺炎などは生命にかかわる事故となる)を防ぐために絶食が常に行われる[6][7][8]。さらにコレステロール検査(脂質状態 -)や血糖測定など、特定の医療検査では、ベースラインを確立できるように数時間の断食が必要とされる。
精神保健

あるレビューでは、断食は脳内にケトン体を増加させ、覚醒状態、気分、および主観的ウェルビーイングを改善し、おそらく抑うつの全体的な症状を改善したとされる[9]

断食に体が慣れると、リラックス時に出る脳波であるα波が増加し、瞑想時に近い精神状態に近づくことで高ぶった脳や神経を鎮静化させる[5]
体重減少

断食により排泄作用が高まり、体内の余分な水分が排出されて体重が落ちる。また、「食べなくても意外に大丈夫」と気づくことにより、菓子類など習慣的な無駄食いを減少させる効果もある[5]

24時間未満の断食(断続的断食)は、肥満した健康な成人における、体重減少とボディマス指数の維持に効果的であることが示されている[10][11][12]
デトックス効果

空腹になると、胃腸をきれいにする効果があるモチリンが分泌され、老廃物の排出を促す[5]。「断食は多くの現代病にも効果がある」という。その論拠として、「人間の体は、消化吸収することがない状態に入ると、自然に体にたまった毒素を排泄する作用、デトックス効果がある」とのこと。カネミ油症事件における油症患者の体内ではダイオキシン類の排泄量が増え、症状が軽減することが観察されている[13]
政治的意思表示

自身の思想を世界に訴えることを目的として(ピースフード
)。

抗議手段として(=ハンガー・ストライキ

宗教

一定の期間、すべての食物あるいは特定の食物の摂取を絶つ宗教的行為である[1][3]。 一定の食物を(期間を定めず)恒常的に禁忌することは除かれる[1][注 2]

断食の起源や動機については宗教によって説明が異なり、またひとつの宗教の中でも、時代・個人によって意義が異なる場合もある[3]。原始社会で行われている断食では、その歴史的起源、本来の意義すら不明であることもあり、習俗的に行われていることも見られる。

断食における目的をすべて一般化して述べることは困難であるが、以下のような分類がある。人生のサイクルの中で繰り返し現れる危機的状況(妊娠・出産・死亡など)において、その難を避けるために行われる断食がある[1][3]。出産の前後に、妊婦やその夫に断食が課される未開部族も多い[3]。家族が死んだ場合、遺族がすべての食物を断ったり、一定の食物を断ったりする部族も多い(日本では、死者の命日に遺族は生もの〈なまもの〉を絶つ風習がある)[3]。このタイプの断食についての説明はいくつも試みられているが、そのどれも定説とはなっていない[3]

紀元前のころから、人間の習慣として存在する。『新約聖書』『旧約聖書』『マハーバーラタ』『ウパニシャッド』『クルアーン』でも言及されている。

祈願(祈り)を行う場合、その効果をより高めるために行う断食[1][3]

イスラーム教においては断食は非常に功徳があるとされており[3]、「断食中になされる祈願は必ず聞き入れられる」とされている[3]


精神を鍛える修行の一形態としての断食[1]

古より多くの宗教で行われている。

イスラームにおいては、ラマダーンの月に行われる断食(日の出から日没までの半日は一切の飲食をしない)がある[15]ユダヤ教キリスト教にも、定期的な断食がある。仏教では、煩悩を克服・滅却するために断食を行う場合がある。
『旧約聖書』(『タナハ』)における断食の記述

モーセは神の山にいる40日間断食をした」(「出エジプト記」34章28)

ダビデは家臣ウリヤの妻バト・シェバとの間にできた息子が、姦通とウリヤを殺害した罰として神によって病気にされたとき、断食をした。それにも拘らず、息子が死ぬと断食をやめた」(「サムエル記」12章15-25)

ユダヤ教

食べ物と水を完全に断つ。食べ物の匂いをかぐことや薬を飲むことのほか、歯を磨くことさえも禁止されている。年に6回(ヨム・キプルティシュアー・ベ=アーブ、ゲダリヤの断食、テベトの10日、タンムズの17日、エステルの断食)の断食を行う。

聖書(旧約聖書)による定めで、ヨム・キプル以外の安息日に断食を行うことは禁止されている。

ヨム・キプルはトーラーで明確に決まっている。唯一の断食の日である。ヨム・キプルは1年で最も大事な日とされている。バル・ミツワーになった男性あるいはバト・ミツワーになった女性は断食を義務として行うが、ラビから許された命にかかわる重い病や出産直後の女性だけは断食を免除される。ヨム・キプルは安息日と同じように仕事を行ってはいけないという制限があり、家の外に物を運ぶ、電気を使う、料理をする、車に乗る、電話を使う、書き物をすることは禁じられている。

さらにティシュアー・ベ=アーブにも断食が行われる。ヨム・キプルとティシュアー・ベ=アーブでは男女ともに日没から次の日没まで丸一日断食が行われており、それ以外の4回の断食では日の出から日没まで断食が行われ、男性は必ず断食する。女性の場合、病気療養中であったり、断食が困難であるほど身体が弱っていたりする際には、ラビが免除することもある。
キリスト教


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