料理漫画
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マニエル・オラージ作「サラ・ベルナール」1895年頃

料理漫画(りょうりまんが)あるいはグルメ漫画(グルメまんが)は、料理、料理人、食材など食に関することを主題にした漫画を指す。
定義

食の定義は本能に根ざしてるとして[注 1]、様々な角度から漫画に反映させられているが、一般に料理漫画には対決や(飲食店の)経営、(食事をつくる相手への)愛、(食材についての知識をもとにした)謎などのテーマが描写される[2]。グルメ漫画には三大欲求の食欲と並ぶ性欲と関連付けられた作品も多く、女性が食べたときの蕩けるような表情が描かれる作品も2010年代には増え、「美味しいものを食べたときのとても幸せな様が、そう表現されるのは食欲を性欲の代わりとして見立ている」との解釈もある[3]

タイトルに料理の名前を冠した作品も多いが、漫画研究者の斎藤宣彦は、それらを料理漫画には含めず、重視しているのは次の3点である[4]

作品中で「料理(スイーツやお酒など飲み物も含める)をつくる」ことが描かれる

つくる"過程"が大事。作り方や手順に触れられている

"味"も大事。おいしさに関する表現がなされている

杉村啓は斎藤による定義を踏まえながらも、2010年代になると多様性があり、それだけでは収まらないとして、

舞台が飲食店である

主人公が「飲食」にまつわる職業や趣味(食べ歩きも含む)を持っている

「飲食」にまつわることが重要なテーマとなっている

を付け加え、それらが複数当てはまり、特に3つ目を重要視して料理や食事をせず食べた思い出を語る話術でおかずをかけて争う『極道めし』や、食事をせず食に関するトリヴィアを語る『めしばな刑事タチバナ』も含め、『トリコ』のように食材や調理方法までファンタジー世界な作品も該当するため、「料理・グルメ漫画は広く存在するゆえ『食漫画』『飲食漫画』と呼ぶのが正確かもしれない」との見解ながらも「『グルメ漫画』として広く通用している」として、自著でもそれを使っている[5]

南信長は厳密な定義はないが料理を作る人が主人公なら料理漫画、食べる人が主人公ならグルメ漫画、両方とも当てはまらない多様な作品がある時代となってからはまとめて食漫画と言えるのではないかとしている[6]
歴史
起源

石ノ森章太郎1959年(昭和34年)に『トンカツちゃん』(週刊少年サンデー)というギャグ漫画を描き、「初の食欲増進マンガ」と自称していた[7]が、斎藤宣彦はこの作品を「料理漫画かは微妙」としつつも先駆の1つに挙げている[7]

斎藤によれば、料理漫画は望月三起也の『突撃ラーメン』(週刊少年ジャンプ)と、一ノ木アヤ原作で萩尾望都が画を担当した『ケーキ ケーキ ケーキ』(なかよし)が嚆矢で[注 2]、どちらも1970年(昭和45年)に連載が始まり、少年漫画少女漫画とで同時期に料理をサブジャンルとしてもつ作品が誕生したとのこと[4][注 3]。このテーマで漫画を書くことになった望月は、当時『週刊少年ジャンプ』の編集長だった長野規から子供の好物を題材にすればウけると思うとアドバイスされたことを述懐している[10]。で、そのラーメンマンガにトライしたのですが、それまでの私は活劇モノなら得意、タテひざ30分で一本のアイデアが出るというタイプでしたが、さァ困った。メン好きの私ですが、それまでに少年マンガで“食モノ”なんてない。参考にもしようがない。(…)ま、それでも“食モノ”マンガを初めて描いたってところは、自慢していいんでしょうか。長野さんのアイデアマンぶり、いまでも色々アドバイスされた事、お世話になってます[10]

『突撃ラーメン』は戦争アクションであり、『ケーキ ケーキ ケーキ』はミュージカルを題にとって身体の動きを演出にとりいれていた。料理漫画はアクションものとして創作された[11]。また『突撃ラーメン』はラーメンが大きな主題ではあるが、メインは主人公の波乱万丈な人生、親子の物語、復讐で、料理の味が詳しく語られるわけではなく、父の仇である竜玉師の経営する店の前に出店して客を奪おうとするも竜玉師の予想通りに知名度先行で肝心のラーメンの味に落胆したことで1か月で閑古鳥が鳴く事態となるが、具体的にラーメンの何が問題だったのか、どういうメニューだったのかなどは触れられず、ヒューマンドラマがメインだった[12]。杉村啓は亀井三恵子の『台所剣法』を1970年から2015年まで『しんぶん赤旗』で45年間連載された世界で最古かつ最長のグルメ漫画だとする[13]

同じ年に3作品が登場したのは高度経済成長期で、国民に余裕ができるようになり、1968年に元禄寿司一号店、吉野家のチェーン店展開が始まり、1970年に初のファミリーレストランすかいらーく開店、1971年にマクドナルド日本一号店が開店したように外食産業が発展していった時代だった[14]。そして、「家庭では電気炊飯器の普及したことで重荷が減り、料理が労働より楽しむこともできるようになったから」と杉村啓はみている[15]
味とリアクション

紙というメディアでは、料理の見た目というごく一部の側面しか描写できない[16]。望月によって料理漫画(彼によれば「食モノ」「味モノ」)が初めて意識的に描かれると同時に、その困難さも意識された[10]。今でこそ味モノは色々ありますが、何事も最初、開拓者は苦労があるもの。悩みましたよ。ミソ、ショーユ、塩バター、どういう味にするか、出来上ったのが自分の得意技の活劇味だったわけです。だから、最初の回はドイツ軍仕立て、ユンカースをナルトがわりに並べたわけ。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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