斗組
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紫宸殿の組み物醍醐寺五重塔の三手先大徳寺山門の三手先

組物(くみもの、繁体字: 斗拱)、または組み物とは、中国由来の伝統的な木造建築において屋根を支えるために頭に設ける部材の一群である[1]。前後または左右に腕のように渡した横木で上からの荷重を支える肘木(ひじき・?とも)と、や肘木を受ける方形の斗 (ます・枡形(ますがた)とも)とで構成され、斗組(ますぐみ/とぐみ)とも、斗と?から成る事から斗?(ときょう、zh:斗?/en)ともいう。 また、三手先などでは尾垂木(おだるき)も用いられることがある。

斗には大きく、柱の直上に置かれる大斗(だいと)と、肘木の上に置かれる小型の巻斗(まきと)とがあり、肘木には単純な形式の舟肘木(ふなひじき)や装飾化した花肘木(はなひじき)がある。
概要

主に寺院建築において用いられるが、流造などの神社建築でも見られる。また、住宅建築でも簡易な舟肘木などを見ることができる。

組物には以下の役割があると考えられる[2]
屋根などの荷重をスムーズに柱に伝える。 - 瓦屋根により重くなった屋根を支えるための工夫。

深い軒をつくる。 - 軒先を支えるために、丸桁(がぎょう・最も軒先に近い桁のこと)を送り出す工夫が三手先などである。

横架材(水平に伸びる梁や桁などの材料)の継手(ジョイント)を補強する。 - 奈良時代になり建物の規模が大きくなると、横架材を一本の部材で作るには長さが足りず継ぎ足す必要が出てきた。継手部分は構造的に弱いため、肘木で補強するようになる。

建物の格付けを示す意匠。 - 手先の多い組物の方が格が高いとされ、金堂層塔などの重要な建物には最上級とされる三手先が用いられることが多い。

また、組物の形状や意匠などにより、寺院建築の様式(和様大仏様禅宗様)の分類や建築年代の推定の目安にもなる。
基本的分類

組物の発展は、大規模建築の発展に必要不可欠なものであった。垂木を支える水平材を桁(けた)といい、桁のうちもっとも外側(軒先寄り)に位置するものを丸桁(がぎょう)という。丸桁は奈良時代には文字通り断面円形のものが多かったが、後世にはすべて断面方形のものとなる(ただし、断面形状にかかわらず、上記の位置にある水平材を「丸桁」と呼ぶ)。丸桁をより先に出し建築の軒を深くするため、組物は複雑化していった[3]

最も単純な柱の上に舟形の肘木を置くのみの舟肘木(ふなひじき)から、柱上に大斗を置いて肘木を受ける大斗肘木(だいとひじき)の形式、大斗の上の肘木にさらに3箇の巻斗を載せる平三斗(ひらみつと)、大斗上の肘木を十字に組み、壁面から直角に挺出した肘木の先端に斗を載せた出三斗(でみつと)と複雑化していき、さらに発展させたものが出組(でぐみ)となる。出組は出三斗の壁面から挺出した肘木の先端に組物を組んで丸桁を受ける形式である。出三斗の場合、丸桁は前方に持ち出されず、柱や壁と同じ面にあるが、出組の場合は肘木を前方(壁と直角の方向)に持ち出し、その上に斗と肘木を組み、その上に丸桁が乗るため、丸桁は柱や壁から離れている[4]

出組からさらに1段外へ挺出したものを二手先(ふたてさき。二手先組ともいう。以下同)、二手先から更に1段外へ挺出したものを三手先(みてさき)という。この意味では、前述の出組は「一手先」ということになるが、通常は一手先ではなく出組という[5]

東大寺南大門のように六手先に至るまで組むものもあるが、通常建築で用いられるのは三手先までで、四手先以上は真言宗、天台宗の両密教固有の多宝塔などの建築において例外的に使用される。なお、二手先以上になると多く尾垂木(建物内部から突き出した太い斜材)、支輪、小天井(こてんじょう)を伴う。

石山寺蓮如堂の舟肘木

法隆寺三経院の大斗肘木

法隆寺東大門の平三斗

東大寺転害門の出組

円覚寺三門の二手先

石山寺東大門の三手先 三手先には珍しく尾垂木を用いていない

酒見寺多宝塔の四手先

その他の組物
法隆寺の組物

法隆寺などの聖徳太子に所縁のある寺院のみに見られる組物[注釈 1]で肘木と斗が一体となる優美な曲線が特徴的な雲肘木(くもひじき)や雲斗(くもと)を用いることが特徴。 飛鳥建築の特徴と考えられるが、現存しない飛鳥時代寺院で用いられたことを示す史料や出土品はない。 特異な形状は堂が瑞雲に覆われる様子を表現したと考えられ、関口欣也高句麗百済様式の影響としている[6]。 隅の組物は隅行方向(45度方向のこと)にしか伸ばさないことも特徴の一つだが、これは一般的な組物と異なり力肘木と壁付通肘木の高さを互い違いにするゆえの納まり上の理由とされる[7]

法隆寺中門の雲肘木

法隆寺金堂の隅行雲肘木 龍をあしらった柱は後世の補強

大仏様の組物

東大寺大仏殿などに用いられる組物は、柱頭ではなく柱に開けられた穴に挿し込まれた挿肘木によって伸ばされることが特徴[8]。ゆえに大斗は無く、秤肘木は丸桁を受ける箇所のみであるため直線的な形状となる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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