敵性語
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「看板から米英色を抹殺しよう」
昭和18年2月3日付『写真週報』第257号

敵性語(てきせいご)は、敵対国や交戦国で一般に使用されている言語を指した語。敵声語と当て字されることもある。

特に大日本帝国では、日中戦争開戦により敵性国となったアメリカイギリスとの対立がより深まる1940年(昭和15年)に入ると[1]英語を「軽佻浮薄」(けいちょうふはく)と位置づけ「敵性」にあたるものだとして排斥が進んだ[2]太平洋戦争突入により米英が完全な敵国(交戦国)となると、英文化排撃、アメリカ文化排撃日本文化賞賛という流れのなかで、より顕著なものとなった[3]

イデオロギーナショナリズムにより敵対国の文化や言語を敵視したり排除する排外主義の傾向はヨーロッパでも見られるが[4][注釈 1]、本項は日本における「敵性語」について主に詳述する[注釈 2]
内容
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敵性語は、日中戦争の長期化や太平洋戦争に向かうなかで高まっていくナショナリズム(国粋主義日本主義)および国民統制の一環として生まれた社会運動検閲である。民間団体や町内会などから自然発生的に生まれた運動と、日本政府(文部省内務省など)が法律によって検閲や指導したものがある[注釈 3]。そのため分野によって敵性語排除の影響や熱意には大きな開きがあり、また徹底されたものでもなかった。古くは幕末明治初期の頃より欧米に範を取り近代化をおこっていた日本において、英語を筆頭とする外来語が日本語に与えていた影響は大きく、戦前中の日本国内でも簡単な英単語・和製英語マスメディア上のみならず、市民の日常はもちろん[7][8][9]軍隊(特に日本海軍)においても盛んに使用されていた。またアルファベットに由来するローマ字の使用は[10]、国策として認められていた(日本式ローマ字、1937年9月の内閣訓令第三号)。

例として、情報局編集・内閣印刷局発行の『写真週報』や、政府や軍部の検閲を受けたニュース映画日本ニュース』や『朝日新聞』といったプロパガンダで用いられたメディアでさえ、太平洋戦争末期に至るまで英単語は使用されている[注釈 4]。そもそも、『日本ニュース』は1945年(昭和20年)7月1日公開の第254号(戦時下最終号)まで、英語である『ニュース』をタイトルに使用し続けており、上掲画像の『写真週報』第257号では米英文化を排斥する特集が巻頭で組まれている一方で、この直後に掲載されている銃後の国民生活を説くコラム「間に合せですませる工夫」では「シャツ」「コンビネーション」「チョッキ」などの英単語や和製英語を使用している。この『写真週報』第257号で問題にされているのは対米英戦下での銃後における「米英媚態の生活態度」(同号3項)で、攻撃されているのは「あまりにアメリカナイズされた看板や商品および文化(ジャズ等の米英音楽)」であり(「米英レコードをたたき出そう」「これが日本人に売る日本商品だらうか」「(内務省と情報局による)廃棄すべき敵性レコード一覧表」など)、英語そのものを排斥の対象としているわけではない。朝日新聞が1943年(昭和18年)1月14日朝刊に掲載した「米英音楽に追放令」という記事では、いまだにカフェで軽佻浮薄扇情的な英米音楽のジャズ・レコードが演奏されているので「低俗な英米文化を排除しなくてはならない(治安警察法第16条による強制回収)。/第二段階として日本で作曲されたものでも米英的低調な歌曲は禁止する。/公的機関によるよい音楽の普及を促進すべきである。」という論調であった[12]

太平洋戦争突入後の1942年(昭和17年)7月にキングレコードより発売された「点数の歌」(林伊佐緒三原純子歌唱。同年2月に政府が実施した衣料切符配給制を題材とする戦時歌謡)の歌詞には、「ハンカチ(ハンケチ)」「エプロン」「ワンピース」「サイレン」といった多数の英単語等が使用されている。

経済の分野でも英単語の入った商品名やブランド名などが変更された事例がある[注釈 5]。その一方で、明治ゴム実業所(現:明治ゴム化成)は「ゴム[14]松下電器は「ナショナル」、早川電機工業は「シャープ」のブランド名を冠した製品を戦時中も発売しているなど、徹底したものではなかった[15]

このように「敵性語」「文化弾圧」は、主に日中戦争から太平洋戦争当時のナショナリズムや、戦意高揚運動のひとつである。行政の指導で排撃したものと[注釈 5]、一般民間人や民間団体やマスメディアによる自己規制によって排斥されたものがある。一例として、太平洋戦争突入直後の1941年(昭和16年)12月24日、朝日新聞は「抹殺せよアメリカ臭」という記事を掲載した[16]早稲田大学教授今和次郎を風俗研究の権威として紹介、今野の「大東亞戰爭と同時に友邦秦國でも英語の看板を街頭から一掃したといふではないか、我々日本人を多年毒してきた浮薄なアメリカニズムを今こそ我々は風俗から生活から追放すべきだ」とのコメントを引用し、銀座での英米文化を批判した[16]

なお第二次世界大戦において、日本は米英だけでなく、中国とも敵対・交戦したが、中国語に由来する漢語については目立った排斥はなく、むしろ英単語の置き換えには大和言葉ではなく漢語式の表記が多く使われた。
教育

1939年から1940年になると、トマス・ハーディの「テス物語」など、「聖戦の意義に反する」として恋愛小説が外国語教科書から排除された[17]

大日本帝国陸軍は従来外国語を重要視していたが、1940年より陸軍士官学校の入学試験から「一切の外国語を抹殺」した[注釈 6]


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