整理解雇
[Wikipedia|▼Menu]

整理解雇(せいりかいこ, Employment redundancy)とは、事業を継続するにおいて余剰となった人員整理としての使用者からの労働契約雇用契約)の解除のことを指す。

法律上の位置づけは国により異なる。イギリスにおいてはRedundancy(余剰解雇)と表現され、1996年雇用権利法(英語版)139条に基づく法的用語である。日本では、1.人員整理の必要性、2.解雇回避努力、3.被解雇者選定基準の合理性、4.労働者側に対する説明・協議の4つの要素を基準に判断される解雇で、普通解雇(労働者側に生じた事由による解雇)と区別される[1]。日本では「リストラ」と呼ばれたりもする。
オーストラリア[ソースを編集]

オーストラリアではRedundancyとは、とある労働者の仕事について誰も行う必要がなくなった状況を指す[2]。労使協定、公正労働委員会に登録された労働契約(registered agreement)の要件に従う限り、それは不当解雇とはみなされない[2]。対象が15人以上である場合は集団的解雇となり、定められたフォーマットで行政に通知する必要がある[2]

雇用の終了にあたっては、事前に書面にて退職日を通知する必要がある[3]。法定の最低予告期間は勤務年数によって1-4週間[3]。勤務年数が1年以上の場合にはRedundancy paymentsを受け取ることができ、勤続年数によって以下と定められている[3]

1年以上2年未満 - 4週間の賃金

2年以上3年未満 - 6週間の賃金

3年以上4年未満 - 7週間の賃金

4年以上5年未満 - 8週間の賃金

5年以上6年未満 - 10週間の賃金

6年以上7年未満 - 11週間の賃金

7年以上8年未満 - 13週間の賃金

8年以上9年未満 - 14週間の賃金

9年以上10年未満 - 16週間の賃金

10年以上 - 12週間の賃金(16週間から12週間に短縮されている[3]

イギリス[ソースを編集]「:en:Redundancy in United Kingdom law」も参照

イギリスでは1996年雇用権利法において、 Redundancy が発生する状況を二つ挙げている。.mw-parser-output .templatequote{overflow:hidden;margin:1em 0;padding:0 40px}.mw-parser-output .templatequote .templatequotecite{line-height:1.5em;text-align:left;padding-left:1.6em;margin-top:0}

(a) 雇用主が以下を停止、もしくは停止しようとしている(i) 被雇用者が雇用されていた目的に基づいた事業遂行、または(ii) 従業員が雇用されていた場所における事業遂行

(b) その事業の要件が以下であって、(i) 従業員が特定の種類の仕事を遂行する(ii)従業員が雇用主に雇用されていた場所において、特定の種類の仕事を行うための従業員への要求

これらを停止もしくは削減、または停止もしくは削減する見込みであること。—Employment Rights Act 1996

なお、この対象が20人を超える場合は集団的解雇に該当し、追加の手続きが必要となる。
Redundancyの回避[ソースを編集]

解雇を回避するために、以下などの試みが求められる[4]

希望退職、早期退職を募集する

他部門への配置転換の検討

自営の請負業者、フリーランサーなどを解雇

カジュアルワーカーを使用しない

求人採用の制限

残業の削減・禁止

ビジネスの他の場所の空席を既存の従業員で埋める

短時間労働への切り替え、無給休暇(レイオフ)実施

余剰解雇手当[ソースを編集]

Redundancy payments(余剰解雇手当)は、2年以上勤務する者を余剰理由にて解雇した場合、法的に支払う義務がある[5]。その従業員が勤続していた年齢によって、手当の金額が決まる。

41歳以降の部分: 勤務1年間あたり1.5週間分の賃金

22-41歳以降の部分: 勤務1年間あたり1週間分の賃金

22歳未満の部分: 勤務1年間あたり0.5週間分の賃金

計算の上限は20年である。週給の上限は544ポンドである。手当の最大額は16,320ポンドである。
ニュージーランド[ソースを編集]

ニュージーランドではRedundancyと呼ばれ、これは職場におけるポジションが不要になったために、雇用主が労働力を削減することである[6]。Redundancyは最後の選択肢であり、雇用主はまず配置転換(異動)オプションの手続きを試みる必要がある[6]

Redundancy payments(余剰解雇手当)は、雇用契約書においてその支払いが明記されている場合に、支払いが必要である[6]。雇用契約に条項が無い場合には、支払う必要はない[6]
日本[ソースを編集].mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

この節は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。

労働慣習で狭義の意味での「整理解雇」の目的は、事業の継続が思わしくないことを理由に企業が再建策(リストラ)を行なわれなければならないことである。その中で、企業が人員整理(人員削減、リストラ、解雇)を行うことで、事業の維持継続を図ることである。

日本では第一次オイルショック以降の経済不況で、1970年代後半に大企業で大規模な人員整理が行われ、整理解雇の4要件という判例法理の原型が形成された[1]。その後の判例法理では人員整理の必要性に関する基準の厳格化や、従来の4要件を法律要件ではなく考慮要素として総合的に判断する4要素説にたつ裁判例の登場などがみられる[1]

民法上は、雇用者は労働契約期間の定めがない労働者をいつでも辞めさせられる(辞められてしまう)ことが基本となっている。

しかしこれでは、多くの人が他社に雇われて生計を営むことが一般的となっている雇用社会においては、労働者が使用者の都合でいつでも簡単に仕事を失うことになってしまう。これでは妥当ではないので、法律がそのような使用者側から雇用関係の解消に制限をかけ労働者を守っている。この制限が解雇権濫用法理(労働契約法16条)である。この法理は労働者保護において非常に重要な役割を果たしている。

企業が整理解雇を行うに当たっては、まず一般的な解雇の手続きとして、常時10人以上の労働者を使用する事業場については就業規則に「退職に関する事項(解雇の事由を含む。)」について記載しなければならない(労働基準法第89条)ため、整理解雇に関する事項を就業規則に明記しなければならない。

そのうえで、「整理解雇の四要件」を満たす必要がある。

使用者は、30人以上の雇用変動が生じる場合に、事前に厚生労働大臣に大量離職届を届け出なければならない(実際の届出先は都道府県労働局長)[7]。もっとも大量離職届は雇用促進政策との関係で設けられた公法的義務であり、私法上の解雇を法的に制限するものではない。
整理解雇の四要件[ソースを編集]

整理解雇の要件について東洋酸素事件(東京高昭和54年10月29日)で以下の四要件が示された。
人員整理の必要性余剰人員の整理解雇を行うには、削減をしなければ経営を維持できないという、企業経営上の高度な必要性が認められなければならない。人員整理は基本的に、労働者に特別責められるべき理由がないのに、使用者の都合により一方的になされることから、必要性の判断には慎重を期すべきであるとする。

解雇回避努力義務の履行期間の定めのない労働契約においては、人員整理(解雇)は最終選択手段であることを要求される。例えば、役員報酬の削減、新規採用の抑制、残業制限、希望退職者の募集[注 1][注 2]、配置転換[注 3]出向等により、整理解雇を回避するための経営努力がなされ、人員整理(解雇)に着手することがやむを得ないと判断される必要がある。

被解雇者選定の合理性解雇するための人選基準が合理的で、具体的人選も合理的かつ公正でなければならない。例えば勤務成績を人選基準とする場合、基準の客観性・合理性が問題となる。人件費削減の方法として、人件費の高い労働者を整理解雇するとともに、他方では人件費の安いほぼ同数の労働者を新規に雇用し、これによって人件費を削減することは、原則として許されない(泉州学園事件、大阪高判平成23年7月15日)。正社員に先んじて有期雇用の労働者を人員整理の対象とすることを、判例は肯定するが(日立メディコ事件、最判昭和61年12月4日)、有期雇用であっても解雇法理は適用されるので、これらの者にも四要件に準じた判断は必要である[注 4]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:46 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef