数学的宇宙仮説 (すうがくてきうちゅうかせつ、mathematical universe hypothesis, MUH) とは、マックス・テグマークによって提唱された、物理学および宇宙論における思弁的な万物の理論 (TOE)である[1]。究極集合 (Ultimate Ensemble) とも呼ばれる。 テグマークの唯一の仮定は、数学的に存在する全ての構造は物理的にもまた存在するというものである。すなわち、「自己認識する下部構造(人間のような知的生命体)を含むだけ複雑なこれらの[宇宙]においては、[彼ら]は自身を物理的に'現実の'世界に存在するものとして主観的に知覚する」ことを意味する[2][3]。その仮説は、異なる初期条件、物理定数、または全く異なる方程式に対応する世界もまた現実であるとみなされるべきであることを示唆する。 テグマークは、その仮説は自由パラメータ
記述
その仮説は人間原理およびテグマークによる多元宇宙理論のカテゴリー化(レベルT?W)に関連している[4]。
インペリアル・カレッジ・ロンドンのAndreas Albrechtは、この仮説を物理学が直面する中心的問題の一つに対する挑発的な (provocative) 解決策と呼んでいる。彼は、それを信じていると大胆に言い切ったりはしていないものの、われわれが見ているもののみが存在するという理論を構築するのは事実上極めて難しいと言及している[5]。 Jurgen Schmidhuber
批判と応答
集合の定義
テグマークは、全宇宙に渡る弦風景についての観測は未だ構築されていないため、これは致命的欠陥 (show-stopper) とみなされるべきではないと回答する[2] (sec. V.E)。 MUHはゲーデルの不完全性定理と矛盾していることについても指摘されている。テグマークおよび同僚の物理学者ピート・ハットと Mark Alford
ゲーデルの理論との整合性
テグマークの回答は、次の新しい仮説を提出することであった[8] (sec VI.A.1)。完全に決定可能でゲーデル完全 (Godel-complete) な数学的構造のみが物理的実体を持つ。これは 本質的に複雑性の上限を定めることで全面的にレベル IV 多元宇宙の定義範囲を縮小させ、われわれの宇宙の相対的な単純さを説明するという魅力的な効能を持つ。そして、テグマークは次のように続ける。従来の物理学の理論はゲーデル決定不能 (Godel-undecidable) であるが、われわれの世界を記述する実在の数学的構造は依然としてゲーデル完全であり、ゲーデル不完全な数学について考える能力のある観測者を原理的に含むであろう。ちょうど有限状態デジタルコンピュータがペアノの算術のようなゲーデル不完全な形式体系についての特定の定理を証明することができるように。さらに、彼はより詳細な回答を示し、MUHに代わるより制限された計算可能な宇宙 (Computable Universe Hypothesis, CUH) を提案した[2] (sec. VII)。CUHでは、この宇宙はゲーデルの定理がそれらにどんな決定不能/計算不能な定理を含むことも要求しないだけ単純な数学的構造のみを含む。テグマークは、このアプローチは"重大な困難"に直面していることを認める。すなわち、(a) この宇宙は多くの数学的景観 (mathematical landscape) を含む;(b) 許容されている理論の空間上での測度はそれ自身計算不能である;そして(c) "実質的に全ての歴史的に成功している物理理論はCUHに違反しているなどの問題を含んでいる。