数値流体力学(すうちりゅうたいりきがく、英: computational fluid dynamics、略称:CFD)とは、偏微分方程式の数値解法等を駆使して流体の運動に関する方程式(オイラー方程式、ナビエ-ストークス方程式、またはその派生式)をコンピュータで解くことによって流れを観察する数値解析・シミュレーション手法。計算流体力学とも。コンピュータの性能向上とともに飛躍的に発展し、航空機・自動車・鉄道車両・船舶・血流等の流体中を移動する機械および建築物の設計をするにあたって風洞実験に並ぶ重要な存在となっている。 数値流体力学では与えられた幾何形状をコンピュータで扱えるように離散化する必要がある。離散化には次のような手法がある[1]。 流体力学ではよく行われるように、数値流体力学でも支配方程式やその解を無次元化することが便利である。しかし、流れが複雑な場合、流体の物性値が一定でなかったり、境界条件が非定常であったりすることで流れを記述するのに必要なパラメータが多数できてしまい、無次元形式にしても有用でなくなる場合がある[30]。 一般には次のような手順で解析が行われる。
原理
離散化法
有限差分法 (FDM)[2][3]
有限体積法 (FVM)[4]
有限要素法 (FEM)[5][6][7][8][9][10][11]
スペクトル法[12][13][14]
境界要素法 (BEM)[15][16][17][18][19]
格子オートマトン法
格子ボルツマン法[20][21][22][23][24]
格子気体法[25][26][27]
適合格子細分化法
個別要素法 (DEM)[28]
粒子法[29]
無次元化
手順
前処理(プリプロセス、pre-process)
モデルデータ作成対象物体の形状を再現した3Dまたは2Dモデルを作成する。設計にCADを使用し、そのデータを用いることが多い。
格子生成数値流体力学では空間を離散的に扱うため、物体形状および周りの空間を離散化する必要があり、一般には計算格子(グリッドあるいはメッシュとも)で表現する(一方、メッシュフリー法、粒子法などの格子を用いない手法も存在する)。格子生成には四面体を用いた非構造格子
解析コンピュータによる反復計算を用いて格子毎の流れ方程式の近似解を求める。計算の結果として、各格子ごとの圧力・流速・密度などが求まる。格子点数やスキーム、コンピュータの性能にもよるが、長い時間を必要とすることが多く、スーパーコンピュータが用いられることもある。
後処理(ポストプロセス、post-process)
数値的な出力計測器などの制約から実際には測定ができないような箇所でも、数値解析では計算領域内ならどこでも物理量を得ることができる。またそれを数値積分することで、物体にかかる力などを求めることもできる。
可視化多くの場合、流れ場の把握などのために、解析結果の可視化を行なう。具体的には、物体表面および周辺流れの圧力分布を色(等圧線、コンター図)で表現したり、流線を曲線で表したり、渦度を等値面で表したりといった具合である。画像からアニメーションを作成することも多い。
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この節の加筆が望まれています。 CFDの性能や効用について風洞実験と比較される場面がある。 数値シミュレーションは、風洞のような寸法成約や壁面の影響および外乱がなく、理想的な状況を設定できる。また、風洞装置の設置に比べ初期投資を抑えられ、さらに風洞内のセンサ類の設置と管理といった手間もいらずそれでいて多量のデータを取得できる。風洞と比較できるような計算にはスパコンの利用が不可欠であるが、それでも風洞の初期費用やランニングコストとは桁違いである。一方で、現在の計算機能力では流れを十分に再現できない場面があり、また計算手法の扱い次第では実現象と全く異なる結果が現れることも容易に起きる。CFDを利用する場合には風洞などの実験を併用することが望まれ、風洞実験に取って代わる存在には至っていない。 流れの中では多くの物理過程が起こり得、それらが流れと相互作用を及ぼしあうことで多様な現象が現れる可能性がある。重要な応用分野ではこのような物理過程が起きており、CFDの適用が研究、応用されている[31]。
風洞実験との比較
特殊な数値流体力学
乱流[32][33]工業分野で現れる流れの多くは乱流であり、乱流モデルを用いた特別な扱いが必要となる。
希薄流体クヌーセン数が0.01以下の流れ場では、流体分子同士が頻繁に衝突しその運動が平均化されるため、流体は連続体とみなせ、流体力学を適用できる。