教科用図書(きょうかようとしょ)は、日本の学校教育法に基づいて、初等教育・中等教育・高等教育において主たる教材として使用される図書のことである。「教科書」とも呼ばれるが、「教科書」には「教科書に準ずるもの」として「地図」が含まれること(この場合の「地図」は、「教科書」として法令上みなされている)、また、一部に「教科書以外の教科用図書」(この場合の図書は「教科書」とはされていない)が使用されていることに留意を要する。 教科用図書については、元々、学校で教科を教えるために用いられたことから、教科書とも呼ばれることが多い。 初等教育・中等教育の学校では、文部科学省(旧文部省)が公示する「教科用図書検定基準」に合致した教科用図書を使用しなければならない。なお、教科用図書検定基準においては、学習指導要領に準拠することが示唆されている。教科用図書には、文部科学省の教科用図書検定に合格した「文部科学省検定済教科書」(いわゆる検定済教科書)や「文部科学省著作教科書」、あるいはそのどちらにも属さない「教科書以外の教育用図書」(いわゆる附則第9条図書)がある。 ただし、授業における副教材や児童・生徒の自己学習においては、文部科学省が発行に全く関与していない検定外教科書も用いられることもある。 高等教育(大学・短期大学・高等専門学校など)や専修学校、各種学校(朝鮮学校など)の授業で主たる教材については、文部科学省による検定はない。これらについては教科書の項目を参照のこと。 教科用図書の定義としては、「教科用図書検定規則」平成元年文部省令第20号[1]の第2条に、『「教科用図書」とは、小学校、中学校、中等教育学校、高等学校並びに特別支援学校の小学部、中学部及び高等部の児童又は生徒が用いるため、教科用として編修された図書をいう』と定められている。 また、教科用図書のうち、特に文部科学大臣の検定を経たもの、または文部科学省が著作の名義を有するものは、教育法令でいう「教科書」とされ、教科書の発行に関する臨時措置法(昭和23年法律第132号)の第2条第1項には、『「教科書」とは、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及びこれらに準ずる学校において、教科課程の構成に応じて組織排列された教科の主たる教材として、教授の用に供せられる児童又は生徒用図書であつて、文部科学大臣の検定を経たもの又は文部科学省が著作の名義をするものをいう』 と定められている。 小学校、中学校、中等教育学校、高等学校並びに特別支援学校の小学部、中学部及び高等部の課程では、原則として、文部科学大臣の検定(教科用図書検定)を経たもの(文部科学省検定済教科書)、または文部科学省が著作の名義を有するもの(文部科学省著作教科書)を使用しなければならない(学校教育法第21条・第40条・第51条・第51条の9・第76条)。 ただし、高等学校、中等教育学校の後期課程、特別支援学校並びに特別支援学級においては、当分の間、文部科学省検定済教科書および文部科学省著作教科書が存在しないときに、これらの教科書以外の教育用図書を使用することができる(学校教育法附則第9条(旧学校教育法第107条)など)。いわゆる「附則第9条図書」(旧「第107条図書」)などである。 文部科学省検定済教科書は、普通は民間の出版社などが制作・検定合格を経た後、発行・販売を行う。文部科学省著作教科書も同様で、同省が競争入札を行い、入札した出版社が制作・発行・販売を行う。 これらの教科用図書は、普通は発行・販売する出版社から、各都道府県の教科書特約供給所 義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律および義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律の規定により、義務教育諸学校((学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する公立小学校と中学校並びに特別支援学校の小学部及び中学部)で使用される教科用図書については、無償で給与されることになっている。ただし紛失・破損時には、各都道府県の教科書特約供給所や、教科書供給業者において所定の料金[注釈 1]を払うことによって再び入手することが可能となっている。 教科用図書の採択については、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律の規定に基づき、都道府県教育委員会が設定した採択地区ごとに採択することとなっている。 日本国籍を持ち、一年以上海外に滞在するが日本へ帰国する予定があることを条件に、海外に住む小中学生にも無償で教科書が配布される。永住者や日系人には配布されない。ただし、日本人学校や補習授業校に通う子どもには、通常、国籍・居住ステイタスを問わず管轄の大使館や領事館から学校を通して配布される。 海外に配布される教科書は全世界共通で一種類しかない[2]。日本国内で同じ教科書を使っている場合は、海外赴任時には新しく配布されないので持参しなければならない。 主な入手方法は、以下のとおり。 一般社団法人教科書協会正会員事業者(2017年9月現在)
概要
「教科用図書」の定義
教科用図書使用の原則と例外
教科用図書の発行・流通
無償配布
教科用図書の採択
在外邦人への無償配布
出国前に海外子女教育振興財団(JOES)から受け取る。[2]
現地の日本人学校・補習授業校の生徒は、入学・編入学・進級時に学校から受け取る。
上記以外で配布条件を満たす者は、在留届と申込み書を提出して現地の大使館・領事館から受け取る。
配布条件を満たさない場合は、OCS(Overseas Courier Service。海外新聞普及株式会社)などから実費で購入する。
教科用図書(教科書)の企業・業界団体
主な教科書発行者
2 東京書籍(TOPPANホールディングス系、教科書出版の最大手。業界ガリバー)
4 大日本図書(小・中学校用理科教科書ではトップシェア)
6 教育図書
7 実教出版(高等学校用教科書専業、実業高校向け、情報系に強み)
9 開隆堂出版(美術、図画工作、技術・家庭、英語を発行)
11 学校図書(数研出版系)
15 三省堂(小学校用(国語・書写)、中学校用(国語・英語)、高等学校用(国語・地歴・公民・理科・英語)を発行。)
17 教育出版(大日本印刷系、採択は北海道が大半。発行教科数は多いがシェア低い)
26 信州教育出版社
27 教育芸術社(音楽教科書専業で、かつトップシェア。執筆陣に作曲家が多い)
35 清水書院(高等学校用主体、公民系に強み)
38 光村図書出版(光村印刷系、小・中学校用国語教科書ではトップシェア)
46 帝国書院(地図および高等学校地理教科書でトップシェア)
50 大修館書店
61 新興出版社啓林館(小学校・中学校・高校の教科書を発行。理数系に強み)
81 山川出版社(高等学校用地歴科・公民科のみ発行。歴史系に強み)
89 音楽之友社
104 数研出版(中学校用(数学)、高等学校用(数学・理科・英語・公民・国語・情報)教科書を発行。理数系に強み)
109 文英堂(高等学校用外国語科教科書が主体)
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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