放送休止
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放送休止(ほうそうきゅうし)とは、放送局がその放送を休止することである。
概要

一般的には送信機(放送機)からの放送電波の送出を計画的・人為的に止めることを示す。通常業務のうちに定期的な放送休止時間帯を設ける場合と、業務の停止等のために長期にわたって放送休止期間を設ける場合がある。前者の例では、放送番組でない何らかの音声・映像が受信機に流れる場合も以下に示す。

放送事故によって放送が途切れた状態は区別して呼ばれる。不慮の電波の送信停止は停波#放送局における停波、予定された音声・映像が受信機で復調されず、搬送波(キャリア)のみが放送される状態は無変調を参照。

番組内容の変更により予定していた内容の放送を取りやめることを放送休止と呼ぶことがあるが、これはあくまでも番組ないしコーナーの休止であり、この項では扱わない。

今日の番組編成において日ごとの放送休止体制を敷く場合、一般的にその休止時間は、任意の24時間のうち、深夜から早朝に1タームである。なお、午前中の放送開始から深夜の放送終了まで放送休止の時間帯を設けない全日放送体制をブランケット・カバレッジ(Blanket coverage)という[1]。アメリカや日本など先進国の放送局ではブランケット・カバレッジが確立されている。

かつての日本を例に取れば、NHK中波放送(AM放送)は毎日、深夜になると一斉に放送を休止していた。また、テレビの放送黎明期や、1980年代までの独立局などにおいては、放送開始から放送終了までのあいだの、任意の時間帯(例:正午頃から夕方頃まで、夕方頃から夜まで[2]など)に、複数ターム休止する番組編成が散見された。全体の放送開始時間が午前9時前後の時代もあった。
放送休止と遠距離受信

自国内の放送局が放送休止する時間帯は、とりわけ中波ラジオ放送において、海外の放送局を遠距離受信する趣味=BCLに格好のコンディションである。

中波は夜間、電離層反射によって遠距離まで伝搬する性質がある。日本を例に取れば、中波放送用電波帯域の多くを占めるNHKの親局および中継局の休止時間中は帯域が大きく空き、原理的には日本を起点に太平洋全域、また特に冬季は北欧や北極圏にある海外中波放送局の放送まで受信できるが、日本では1990年以降、「ラジオ深夜便」が原則毎日終夜放送されるようになり、放送休止時間帯を利用したBCLは困難になった。
日本
法制

基幹放送局は、総務省令電波法施行規則第40条第1項第2号(5)に基づき、「運用許容時間中において任意に放送を休止した時間」を無線業務日誌へ記録することが義務付けられている。このうち地上基幹放送局地上一般放送局は、放送を休止する場合、総務省令無線局運用規則第138条第1項に基づき、休止時と再開時に、定められた内容の局名告知を放送の中で行わなければならない。

認定基幹放送事業者において1か月以上にわたる放送休止が行われる、あるいはその期間が変更される場合は、放送法第95条2項に基づき、休止期間を総務大臣(手続き上は各地方の総合通信局)に届け出なければならない。ただし、日本放送協会(NHK)の基幹放送局は、放送法第86条により、総務大臣の認可ないし総務省令を受けるか、不可抗力によらない限り、原則として放送を12時間以上(協会国際衛星放送は、24時間以上)休止することができない。
放送休止時間帯に送出される内容

放送休止の時間帯において、停波をともなわなければ、多くは機器調整のための試験電波が発射される。このとき放送上では、無変調の状態となる[3]か、何らかの内容をともなう音声や映像が、断続的に、または絶えず送出される。

内容をともなう試験電波では、試験電波を発射しているという旨のアナウンスないし字幕テストトーンテストパターン、音楽、環境映像お天気カメラからの中継映像などが送出される(2000年代の在京キー局における例として、テレビ朝日は外の音が入ったお天気カメラの映像、TBSは全画面の気象情報と音楽)。

内容のある場合、実質として番組の体裁を取っていることがある。これを、番組のない時間を埋めているという意味で、フィラーあるいはフィラー番組と呼ぶ[4]。フィラー番組は実態として各局の番組表に表記される場合(1990年代 - 2000年代の在京キー局における例として、日本テレビの『SOUND STORM』、フジテレビの『JOCX-TVフィラー』など)と、されない場合とがあり、前者の場合法的には放送を休止していないことになる。

テレビの放送休止時間帯におけるフィラーの事例に以下のものがある。

気象情報

ライブカメラ

NHKの『映像散歩』および『インターミッション』、BS松竹東急の『真夜中散歩』→『ぷらっとニッポン』。

一部の各地方局におけるテレビ文字ニュース

民放キー局が運営するニュース専門放送局サイマル放送 - NNN系列局における日テレNEWS24JNN系列局におけるTBS NEWSなど。

インターネットラジオradikoらじるらじるにおいては、停波(電波送出を停止した状態)の時は無音(無変調)となる場合[5]と、1KHZ信号音をそのまま流す場合、フィラー音楽を流す場合とがある。
放送休止の事例
予定全番組の終了による定期的な休止

ある期日に編成されている放送番組をすべて完了(放送終了)してから、次の放送開始までの放送休止。一旦電波を止め、放送再開の数十分前から再び電波を送信するケースと、ずっと電波を流し続けるケースがある。後者の場合、番組表の上では休止がされないように編成し、当該時間帯に前述のフィラー素材を流す例がある。

多くの放送局は原則毎日、深夜番組編成による終夜放送を実施しており、放送休止を毎日および週6日行っている例は地方ラジオ局の一部にとどまる。以下、実例を示す(2023年2月1日現在)。
放送休止を毎日行っているラジオ局


岐阜放送ラジオ(ぎふチャン) - 全曜日 0:00 - 6:00(24:00 - 30:00)

エフエム富士(FM FUJI) - 火曜 - 水曜 1:30 - 5:00(月曜 - 火曜 25:30 - 29:00)、木曜 - 土曜 2:00 - 5:00(水曜 - 金曜 26:00 - 29:00)、日曜 2:30 - 5:00(土曜 26:30 - 29:00)、月曜 0:35 - 5:00(日曜 24:35 - 29:00)であるが、月・水曜を除き、4:00まで試験電波の音楽番組が実質的なフィラーとして放送されており、番組表のPDF(郵送取り寄せも可)にも番組扱いとして記載がある。このため実質的には月曜0:35、水曜1:30、他は4:00-5:00のみが休止となっている。

エフエム京都(α-STATION) - 火曜 - 日曜 2:00 - 5:00(月曜 - 土曜 26:00 - 29:00)、奇数月日曜 23:00[6] - 月曜 5:00(日曜 29:00)、偶数月月曜 0:00 - 5:00(日曜 24:00 - 29:00)

日経ラジオ社(ラジオNIKKEI) - 第1放送 - 火曜 - 金曜 0:00(月曜 - 木曜 24:00)[7] - 7:15[8]、金曜 23:30[9] - 土曜 8:45、土曜 18:30[10] - 日曜 8:45、日曜 19:30 - 月曜 7:15[8]、第2放送 - 月曜 - 木曜 19:00 - 翌日 8:00、金曜 19:00 - 土曜 9:00、土曜 17:00 - 日曜 9:00、日曜 17:00 - 月曜 8:00

週6日で放送休止を行っているラジオ局


エフエム愛媛 - 火曜 - 金曜 2:00 - 6:00(月曜 - 木曜 26:00 - 30:00)、日曜 2:55 - 5:00(土曜 26:55 - 29:00)、月曜 1:30 - 6:00(日曜 25:30 - 30:00)、土曜未明(金曜深夜)のみ24時間放送を行っている。

なお上記のうち、FM愛媛以外は過去にも24時間放送、またはそれに準じる終夜放送[11]を行っていた時期があった。
放送設備保守のための休止

放送機器の保守点検・整備の必要から、週に1回程度の放送休止期間を設定する放送局は多い。この場合、全局レベルで放送休止するか、あるいは任意の地域ごと、あるいは送信所ごとに限定した放送休止(当該地域以外は放送)を行う。

休止時間帯には、災害、大事故などの非常事態で報道特別番組が必要な時を除き、番組の予定は組まれず、試験電波が発射される。


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