放蕩一代記
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この項目では、ウィリアム・ホガースの絵画について説明しています。この絵画に影響を受けてストラヴィンスキーが作曲したオペラについては「放蕩児の遍歴」をご覧ください。
放蕩一代記

『放蕩一代記』(ほうとういちだいき、:A Rake's Progress)は18世紀のイングランド人画家ウィリアム・ホガースが描いた8点の油彩画、ならびにそれらをもとに制作された銅版画の総称。日本では『放蕩一代記[1][2]』の他に『放蕩者一代記[3]』、『放蕩息子一代記[2]』、『放蕩者のなりゆき』などさまざまな名称で呼ばれる。ホガースが自ら「現代の道徳的主題[4]」と呼んだシリーズの第2作である。本作品は主に、1735年に制作された銅版画版で広く世に知られることになった。1732年から1733年にかけて制作された原画(油彩画)は現在、ロンドンサー・ジョン・ソーンズ美術館が所蔵している。
目次

1 概要

2 来歴

3 8点の作品

3.1 1.遺産相続

3.2 2.新当主の会見式

3.3 3.放蕩三昧

3.4 4.借金が嵩んで逮捕されるトム

3.5 5.カネを目当ての結婚

3.6 6.賭博場

3.7 7.牢獄

3.8 8.精神病院


4 後世の『放蕩一代記』

5 出典、脚注

6 外部リンク

概要

架空の人物トム・レイクウェル (en:Rake (character)) の半生を物語形式に描いた連作で、ホガースによる油彩画が1732年から翌年にかけて、ついで版画が1735年に制作された。作品に描かれている物語は、商人の息子であるトムはロンドンで莫大な親の遺産を相続したが、放埓な生活、商売女、ギャンブルで財産を全て失ってしまう。そして借金を抱えたトムはフリート債務者監獄に収監され、最後には精神病院であるベドラムに送られ、自ら身を破滅させる[5]というものである。主人公レイクウェルの「レイク」とは英語で、賭博場で賭け金を掻き集める棒を意味し、転じて放蕩者を指す[6]

本作品は、鑑賞(見ること)と読解(読むこと)の楽しみを併せ持った絵画である。人間の愚かさ、貪欲さを批判し、道徳的教訓を導く絵画であるが、過去の教訓的風俗画と比べてホガースの作品は、連作仕立てである点と、比喩や暗示・象徴を意味するモチィーフが数多く描き込まれた点に、新しさがある。このような物語的な作品が成功を収めたことは、当時イギリス社会で「小説」が興隆しだしたこととも深い関連があると考えられる[4]。さらに、イギリスの映画監督・脚本家のアラン・パーカーは、『放蕩一代記』を絵コンテの先駆であると評している[7]



来歴 原画を所蔵するサー・ジョン・ソーンズ美術館 ウィリアム・ホガース自画像(1745年), テート・ブリテン所蔵

本作品は18世紀イギリスがようやく生み出した、イギリス的な個性を持った画家ホガースの代表作とされる。当時、海外の絵画作品ばかりがもてはやされていたイギリスにあって、ホガースは「イギリス的」な絵画の必要性を訴えた。彼は最初、イギリス国内で歴史画を制作することを目指したが、歴史画の需要は生まれず、その代わりにホガースは家族団欒の集合肖像画「カンヴァセーション・ピース」を手がけるようになった。この集合肖像画の流行を見て、絵画を購入する新興ブルジョア層の隆盛を実感したホガースは、同時代の社会風俗を描いた連作絵画の制作に取り組んだ[4]

元々、彫版師としての修行を積んだホガースは高価な油彩画を描くと同時に、それを原画として、労働者の1日分の給与で買うことのできる銅版画を多く制作した。これら、当時のイギリスの世相を反映し、諧謔精神と風刺に満ちたホガースの作品は、民衆から強い支持を受けた。ホガースは新聞に広告を出し、アトリエに油彩画を展示し、銅版画の予約を取るという販売方法を編みだし、1730年に発表した『遊女一代記』6点の大量販売に成功した。これをきっかけにホガースはさらなる連作の制作に取り組み、1732年から1733年にかけて本作品『放蕩一代記』8点を完成させた[6]。その後、1734年11月、ホガースは新聞広告を出し、レスター・フィールズにあった彼のアトリエで、『放蕩一代記』の原画を公開する旨を告知し、銅版画の予約購入者を募った。

油彩画はその後、作家で美術品蒐集家のウィリアム・トマス・ベックフォードが所有していたが、1802年クリスティーズにてオークションにかけられることになった。それを知った新古典主義の建築家であり、自らの邸宅を美術館とするために美術品を収集していたジョン・ソーンは、代理人として夫人をオークションに送り込み、570ギニーで落札した。


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