擬史(ぎし)とは歴史的叙述の体裁を採用した文字記録。主としてその内容に主眼が置かれた場合に使用され、文献の史的側面が問題とされる歴史学における偽書や偽史とは別の概念である。
実際の歴史書にも擬史が混入されている場合があり、宮崎市定は『史記』の中に歴史的事実以外に各地に伝わる伝承が混入されている事実を指摘している[1]。また逆に歴史小説である『水滸伝』に反映された史実も史料批判の手法により考証するなど[2]、擬史と史実の密接な関連性は歴史学における考証対象となっている。
日本においても軍記物語のように事実を忠実に記録するのではなく、武勇伝や恋愛などを後世に伝えるための著作などとして数多く存在している。
関連項目
偽書 - 製作者や製作時期の由来が偽られているもの
史料批判 - 文字記録の信頼性を確認するための歴史学における作業
歴史小説 - 史実を時代背景にして創作された文学作品
偽史 - まがいものの歴史
参考文献
今井登志喜『歴史学研究法』(東京大学出版会、1953年4月、ISBN 4130040073。(1935年『岩波講座日本歴史』を改訂)
E・H・カー『歴史とは何か』(岩波書店[岩波新書]、1962年)
注釈^ 宮崎市定『史記を語る』(中公文庫)
^ 宮崎市定『水滸伝 虚構のなかの史実』(中公新書、1972年)
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