摩擦速度
[Wikipedia|▼Menu]

摩擦速度(まさつそくど、: shear velocity、: friction velocity)[1]せん断応力速度の単位を用いて書き直された速度である。流体力学において流体の真の速度と流体層間の速度の比較によく用いられる。剪断速度(せんだんそくど)やシアー速度とも表現される。
概要

摩擦速度は流体におけるシアーに伴う運動を記述するために用いられる。以下のような現象の記述に使用される。

流体中の粒子トレーサー汚染物質などの拡散と分散

流れの境界付近における速度分布(壁法則も参照のこと)

水路における土砂の移動

摩擦速度は流体中のシアーや分散の速度分布を考える上でも有効である。摩擦速度は分散と掃流運搬物質の輸送速度によく比例する。一般的に摩擦速度は平均流速の5%から10%の間と定められている。

河川の場合では、摩擦速度はマニング公式を用いて計算される。 u ⋆ = ⟨ u ⟩ n g 1 2 R h − 1 6 {\displaystyle u^{\star }=\langle u\rangle ng^{\frac {1}{2}}R_{h}^{-{\frac {1}{6}}}}

n {\displaystyle n} はGauckler-Manning係数(マニングの粗度係数)。 n {\displaystyle n} の次元は省略されることが多いが、無次元ではなく、次のような時間と長さで表現される次元を持つ。
T L − 1 3 {\displaystyle TL^{-{\frac {1}{3}}}}

R h {\displaystyle R_{h}} は水力半径

特定の河川における n {\displaystyle n} や R h {\displaystyle R_{h}} を探す代わりに、ほとんどの河川では u ⋆ {\displaystyle u^{\star }} は ⟨ u ⟩ {\displaystyle \langle u\rangle } の 5% から 10% の間であることに注意して、とりうる値の範囲を調べることもできる。

一般的な場合では次のように表せる。 u ⋆ = τ ρ {\displaystyle u_{\star }={\sqrt {\frac {\tau }{\rho }}}}

ここで τ {\displaystyle \tau } は流体中の任意の層におけるせん断応力で、 ρ {\displaystyle \rho } は流体の密度である。

土砂の輸送においては典型的に、開水路の下部境界で摩擦速度を考える。 u ⋆ = τ b ρ {\displaystyle u_{\star }={\sqrt {\frac {\tau _{b}}{\rho }}}}

ここで τ b {\displaystyle \tau _{b}} は境界におけるせん断応力である。

摩擦速度は、局所的な速度場とせん断応力場で定義することもできる(上記のような全流路における値とは異なる)。
乱流中の摩擦速度

摩擦速度は、乱流中の速度の変動成分のスケーリングパラメータとしてよく用いられる[2]。摩擦速度を求める方法の1つとして、乱流運動方程式無次元化がある。例えば完全に発達した水路流乱流や乱流境界層では、境界近傍の流線運動量方程式は次のようになる。 0 = ν ∂ 2 u ¯ ∂ y 2 − ∂ ∂ y ( u ′ v ′ ¯ ) {\displaystyle 0={\nu }{\partial ^{2}{\overline {u}} \over \partial y^{2}}-{\frac {\partial }{\partial y}}({\overline {u'v'}})} .

y {\displaystyle y} 方向に一度積分し、未知の速度スケール u ⋆ {\displaystyle u_{\star }}  と粘性長スケール ν u ⋆ {\displaystyle {\frac {\nu }{u_{\star }}}} で無次元化することで、次式のように表せる。 τ w ρ = ν ∂ u ∂ y − u ′ v ′ ¯ {\displaystyle {\frac {\tau _{w}}{\rho }}=\nu {\frac {\partial u}{\partial y}}-{\overline {u'v'}}}


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:16 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef