摂食障害
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摂食障害
概要
診療科精神医学, 臨床心理学
分類および外部参照情報
ICD-10F50
ICD-9-CM307.5
MeSHD001068
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摂食障害(せっしょくしょうがい、: eating disorder ; ED)は、食行動の重篤な障害を呈する精神障害の一種である[1]。近年では嚥下障害等の機能的な摂食障害との区別をつけるため、中枢性摂食異常症とも呼ばれる。患者の極端な食事制限や、過度な量の食事の摂取などを伴い、それによって患者の健康に様々な問題が引き起こされる。主に拒食症過食症の総称である。人間関係の問題などの心理的ストレスが原因となる場合が多く、日本国内で医療機関を受診している患者は1年間で延べ22万人にのぼる[2]

摂食障害は大きく拒食症過食症に分類される。拒食と過食は相反するもののように捉えがちだが、拒食症から過食症に移行するケースが約60 - 70%みられたり、「極端なやせ願望」あるいは「肥満恐怖」などが共通し、病気のステージが異なるだけの同一疾患と考えられている[3][4]。よって拒食症過食症を区別する指標は、基本的には正常下限体重を維持しているかどうかのみである。アメリカ合衆国ではBMIによる標準体重の85%以下が拒食症に分類されているが、日本では80%以下とされている[5]

一定時間に渡り、食べ物を口に入れ咀嚼し、飲み込まずにビニール袋などに吐き捨てるという行動を繰り返すチューイング(噛み吐き・噛み砕き)と呼ばれる行為も存在する。一見、拒食とも過食とも取られる行為で、特定不能の摂食障害の一部にまとめられる[6]

また、リストカットなどの自傷行為を行う患者では高確率で拒食・過食などの摂食障害の合併がみられ、摂食障害患者の59 - 76%に自傷行為、アルコールや薬物の乱用、重篤な爪噛み、抜け毛といった行為がみられ、摂食障害、自傷行為、薬物依存は密接な関係があるとされる。これらの行為は、衝動性の高いパーソナリティや、自罰・禁欲嗜好のパーソナリティなど、特定のパーソナリティ傾向にのみ限局しない所見である[7]。なお、摂食障害の患者は強迫的な性格傾向が強いとされる。拒食症・過食症ともに、嘔吐を伴う患者は例外なく強迫性性格である[8][9]。ローゼンバーグは摂食障害を「現代的な強迫神経症」と称している[10]

厚生労働省の難治性疾患(難病)に指定されていたが、2015年7月より対象外となった。認知行動療法などの有効性が実証されており、適切な治療や支援等を通して回復することができる(具体的な治療法については、「摂食障害#治療」を参照)[11]
定義「精神障害#定義」も参照

精神医学的障害の一種である。

精神分析医のヒルデ・ブルックは摂食障害を「これは食欲の病気ではありません。人からどう見られるのかということに関連する自尊心の病理です」と指摘している。摂食障害患者は根源的否定感を抱えており、食行動の異常の背景には茫漠たる自己不信が横たわっていると理解される。その不安を振り払うために強迫的に完全を目指すのである。摂食障害は境界性パーソナリティ障害自己愛性パーソナリティ障害との合併、あるいはそれらパーソナリティ障害の部分症状として顕在化しているケースも多い[12]

日本では伝統的に1960年代から摂食障害を心療内科で治療してきたが、現在では主に精神科心療内科で治療が行われている。経管栄養中心静脈栄養が必要な場合(BMI15.5以下)では精神療法が不可能なため、初期は入院治療が必要である。九州大学病院心療内科では「軽症の摂食障害」、「中核的な摂食障害」、「境界性パーソナリティ障害的な摂食障害」の3つに分類し、境界性パーソナリティ障害的な摂食障害患者に関しては精神科で取り扱っている[13]
症状

症状は、拒食症過食症などのタイプによっても異なり、また同じ拒食症・過食症などでも、患者によって症状は多様である。

拒食症では極端な食物制限が中核となる。食事を食べているところを他人に見られたがらない場合も多い。その他、体重を減らそうとして運動をするなどの過活動がみられることもある。拒食によって体重低下が進んだ結果、異常な低体重となり、女性の場合は月経が停止する事もある。この時期でも本人はいたって元気な様子を見せ、病識が無い場合が多い。摂食障害の存在を周囲に隠したいため、人前では食品を食べてみせ、直後にトイレに行き、食べたものを全て吐くといった行動をとる患者もいる。自分の思う通りにならない自分を、摂食行動において完璧にコントロールし、痩せを維持できることは、万能感・高揚感を与えてくれる体験である。食事をコントロールし、自らの体を過度にコントロールしようとする心性の背後には慢性的な不安が控えており、摂食障害者は一様に強迫的な性格傾向を有する[14]

摂食行動以外にも、抑うつ症状や気分の変動、リストカットなどの自傷行為・アルコール乱用、社交不安障害強迫性障害などの不安障害PTSDパーソナリティ障害による精神症状を合併することも多い。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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