「損失補償」とは異なります。
損害賠償(そんがいばいしょう)とは、他人に損害を与えた者が被害者に対しその損害を填補し、損害がなかったのと同じ状態にすること[1]。 損害賠償は大きく債務不履行に基づく損害賠償と不法行為に基づく損害賠償の二つに分けられる。日本法では債務不履行に基づく損害賠償については民法415条
損害の発生と損害賠償
損害には財産的損害と精神的損害があり、精神的損害に対する賠償は慰謝料(いしゃりょう、慰藉料)とも称される[2]。
事故によって農業や水産業などが受けた風評被害について、政府の審査会で損害賠償の対象について議論に浮上する事例がある[3]。
債務不履行に基づく損害賠償詳細は「債務不履行」を参照
債務不履行とは、債務者が契約などに基づく債務を自ら履行(弁済)しないことをいう。債務不履行の場合には、法律上の効果として、強制履行や契約の解除などの問題とともに損害賠償の問題が生じる。
履行の遅滞によって生じた損害の賠償を遅延賠償という[2]。これに対して本来の給付に代わる損害の賠償を填補賠償という[4]。
債務の不履行が契約その他の債務の発生原因および取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、損害賠償を請求できない(民法415条1項ただし書)。帰責性の要件は従来判例法理により認められていた不文の要件であったが、2017年の改正民法はこれを明文化した(2020年4月1日施行)。ただし、その帰責事由の内容については個別の判断による[5]。なお、金銭債務については419条3項により債務者は帰責事由の不存在を抗弁とすることができない[2](後述)。 損害賠償の範囲は通常損害および特別損害である。
損害賠償の範囲
通常損害と特別損害
通常損害
債務の不履行によって通常生ずべき損害(民法416条
特別損害
当事者がその事情を予見すべきであった特別の事情によって生じた損害(民法416条2項)
2017年の改正民法で特別の事情によって生じた損害について「当事者がその事情を予見し、または予見することができたとき」から「当事者がその事情を予見すべきであったとき」に改められた(2020年4月1日施行)[6]。
「当事者」となっているが判例は債務者と解する(大判昭和12年11月15日判決全集4輯22号14頁)[2]。特別事情の予見可能性の立証責任は債権者が負う[7]。
損害賠償の範囲については相当因果関係理論で説明されてきたものの、特別損害の予見の主体や予見の基準時など解釈問題がある[6]。相当因果関係理論に対しては、ドイツ民法のように因果関係以外に賠償範囲を画する規定がない場合には機能するが、日本の民法416条は制限基準自体を規定しており相当因果関係は格別の意味を持たないとの批判もある[7]。 履行の遅滞によって生じた特別損害の予見可能性の判断の時期は、履行期を基準にする見解(判例)と契約時を基準にする見解がある[7]。なお、金銭債務の場合は特則がある(民法404条・419条)[7]。 本来の給付に代わる填補賠償の場合は目的物の価格が算定の基礎となる[8]。判例は履行不能時の目的物の価格をもとに通常損害を算定し、履行不能時以降の価格変動を一定の範囲で特別損害とする[8]。これにつき遅延賠償の場合と同じく契約時を基準に統一的な基準で解釈を行う見解もある[9]。 損害賠償は、別段の意思表示がない限り、金銭により賠償額が定められる(金銭賠償の原則、417条 債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める(418条
遅延賠償の場合
填補賠償の場合
損害賠償の方法
過失相殺と損益相殺
過失相殺